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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生78巻2号

2014年02月発行

文献概要

特集 予防接種

子宮頸がん予防ワクチン

著者: 戸澤晃子1 鈴木直1

所属機関: 1聖マリアンナ医科大学産婦人科学

ページ範囲:P.97 - P.102

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はじめに

 子宮は,子宮下部の管状の部分を子宮頸部,子宮上部の袋状の部分を子宮体部と呼び,それぞれの部位に生じるがんは子宮頸がん,子宮体がんに分類される(図1).子宮頸がんは子宮がんのうち約7割程度を占めており,以前は発症のピークが40~50歳代であったが,近年は20~30歳代の発症が増加し,30歳代後半がピークとなっている1).妊娠出産の高齢化に伴い,妊孕性温存の必要がある年齢に発症頻度が高いことが社会的にも問題になっている.

 子宮頸がんは,ほとんどの発生原因がヒトパピローマウイルス(human papillomavirus;HPV)の持続感染であり,100種以上存在するHPVのうち発がん高リスクのhigh-risk HPV(16,18,31,33,35,39,45,51,52,56,58,59,68,73,82型;日本では,HPV16,18,31,33,35,52,58型の7タイプが特に高リスク)感染であることが明らかになった(図2)2)

 このウイルスは女性の約80%において一過性の感染であり,high-risk HPVに感染しても2年以内に90%は自然消退することが報告されている.10%は感染が長期間持続し,前がん病変である異型細胞が増殖する.この感染が持続し,自然に治癒しない場合は,子宮頸部上皮内腫瘍(cervical intraepithelial neoplasia;CIN:CIN 1, CIN 2, CIN 3)となり,さらに進行すると子宮頸がんとなる.つまりhigh-risk HPV感染のうち最終的に子宮頸がんに至るのは0.06%であり,頻度は低い3).しかし,子宮頸がんの原因がhigh-risk HPV感染であることから,発がん予防として感染そのものを予防するワクチン開発がなされ,接種されるようになった.

 子宮頸がんワクチンにはhigh-risk HPVの16型,18型を予防する効果がある.これまでの子宮頸がん予防は,細胞診などの検診により早期発見する方法しか存在しなかったが,一次予防が現実のものとなっている4,5).わが国でもHPV 16/18型に対する2価ワクチン(サーバリツクス®と尖圭コンジローマの原因であるHPV 6/11型の予防も含まれた6/11/16/18型に対する4価ワクチン(ガーダシル®)が市販され,いずれもわが国で接種が行われている.

参考文献

1)国立感染症研究所:ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンに関するファクトシート(平成22年7月7日版),2010
2)Onuki M, et al. Human papillomavirus infections among Japanese woman:age-related prevalence and type-specific risk for cervical cancer. Cancer Sci 100(7):1312-1316, 2009
3)笹川寿之:ヒトパピローマウイルスの現状.臨床と微生物 36(1):55-62, 2009
4)FUTURE Ⅱ Study Group:Quadrivalent vaccine against human papillomavirus to prevent high-grade cervical lesions. N Engl J Med 2007:356(19):1915-1927,2007
5)Paavonen J, et al:Efficacy of a prophylactic adjuvanted bivalent L1 virus-like-particle vaccine against infection with human papillomavirus types 16 and 18 in young women:an interim analysis of a phase Ⅲ double-blind, randomised controlled trial. Lancet 369(9580):2161-2170, 2007
6)Human papillomavirus vaccines. WHO position paper. Wkly Epidemiol Rec 84(15):118-131, 2009
7)Cervical cancer, human papillomavirus(HPV), and HPV vaccines-key points for policy-makers and health professionals. WHO/RHR/08.14 Geneva, Switzerland:WHO Press, 2007
8)厚生労働省:予防接種情報(子宮頸がん予防ワクチン,ヒブワクチン,小児用肺炎球菌ワクチン) http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/
9)厚生労働省:子宮頸がん予防ワクチンQ&A http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/qa_shikyukeigan_vaccine.html
10)厚生労働省:子宮頸がん予防ワクチン(サーバリックス)の副反応報告状況について http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000034g8f-att/2r98520000034hr8_1.pdf
11)厚生労働省:子宮頸がん予防ワクチン(ガーダシル)の副反応報告状況について http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000034g8f-att/2r98520000034hrr_1.pdf
12)厚生労働省慢性の痛み対策研究事業牛田班:子宮頸がん予防ワクチン(HPVワクチン)接種後の痛みの診療について,2013 http://www.city.matsuyama.ehime.jp/kurashi/iryo/yobo/sikyuusasihikae.files/20130926itaminoshinryou.pdf
13)今野良,他:産婦人科治療(0558-471X)97(5):530-542, 2008
14)GACVS:Safety up date on HPV Vaccines Geneva, 13 June 2013 http://www.who.int/vaccine_safety/committee/topics/hpv/130619HPV_VaccineGACVSstatement.pdf
15)Safety of HPV vaccination:A FIGO statement, 2013 http://www.figo.org/files/figo-corp/Statement%20on%20Safety%20of%20HPV%20vaccination%20-%20FINAL%20-%20AUGUST%202013.pdf
16)厚生労働省:国民生活基礎調査(平成19年),http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa07/toukei.html
17)NCCN腫瘍学臨床診察ガイドライン―子宮頸癌スクリーニング,2012 http://www.tri-kobe.org/nccn/guideline/gynecological/japanese/cervical_screening.pdf
18)岩成治,他:婦人科がんの予防戦略と早期診断―子宮頸がん,HPV DNA検査・細胞診併用検診による子宮頸がん検診―高精度・効率化・若年受診率向上により浸潤がん激減.臨婦産67(8):771-779,2013
19)国立がん研究センターがん対策情報センター:地域癌登録全国推計によるがん罹患データ(1975年~2005年)
20)国立がん研究センターがん対策情報センター:人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2007年)

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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