icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生78巻3号

2014年03月発行

文献概要

特集 出生前診断

出生前診断をどうとらえるか

著者: 玉井邦夫12

所属機関: 1公益財団法人日本ダウン症協会 2大正大学人間学部臨床心理学科

ページ範囲:P.172 - P.175

文献購入ページに移動
はじめに

 2012年8月に突然にも感じられる形で新聞報道が行われた新型出生前診断(無侵襲的出生前遺伝学的検査non-invasive prenatal testing;NIPT)は,13,18,21トリソミーを検出対象としていたことから,筆者が代表理事を務める公益財団法人日本ダウン症協会(Japan Down Syndrome Society;JDS)は「当事者」として否応なく論議に巻き込まれることになった.出生前診断/検査が,確定診断に至るものの母体と胎児への侵襲性が高い技術から,判定が確率に留まるものの侵襲性の低いものに「進歩」していくという流れはそれまでにも一貫していた技術の変遷動向であり,NIPTもその流れに位置づけられる.

 JDSは,母体血由来で胎児の遺伝学的情報を取得する技術が登場すること自体については,報道の1年以上前から日本産科婦人科学会などの主催するシンポジウムなどでの情報から把握していたが,NIPTをめぐる議論の推移はメディアによる報道のあり方に大きく影響されることで,JDSにとっては「騒動」とでも呼ばざるを得ないような様相を呈した.

 筆者はあくまでもJDSという団体の人間であり,医療従事者でも遺伝学研究者でもない.しかしながら,30年以上にわたって臨床心理士として虐待やDV(domestic violence)といった,ある意味では人間の「生死」に及ぶ事象に取り組んできたという事情もある.本稿では,当事者団体という立場と,生業である臨床心理学という立場から,NIPTをめぐる議論について考えるところを述べさせていただくことにする.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら