文献詳細
特集 出生前診断
文献概要
出生前診断と中絶
2013年4月から始まったいわゆる「新型出生前診断」の臨床研究に参加した妊婦約3,500人のうち,胎児の染色体異常が確定した54人中53人が中絶を選択したことが大きく報道された1).しかしこれは,はっきり言ってしまえば予想通りの結果である.新型であれ従来型であれ,出生前診断の意義について,「胎児の状態を事前に知ることで,異常のある胎児に対して出生後すみやかなケアが行える点にある」という意見もあるが,こうした診断のクライアントとなる一般の人々にとってみれば,出生前診断は「異常があった場合に中絶するため」という感覚が根強いであろう.
ちなみに,イギリスやカリフォルニア州では出生前診断の費用は「社会的予防システム」として公費負担されている.これは,先天異常のスクリーニングのコストを負担するほうが,障害児が出生した場合のコスト負担よりもメリットがあると判断されたためだという2).そして実際,大多数の妊婦が出生前診断を受け,異常が確定した場合には多くが中絶を選択する.
2013年4月から始まったいわゆる「新型出生前診断」の臨床研究に参加した妊婦約3,500人のうち,胎児の染色体異常が確定した54人中53人が中絶を選択したことが大きく報道された1).しかしこれは,はっきり言ってしまえば予想通りの結果である.新型であれ従来型であれ,出生前診断の意義について,「胎児の状態を事前に知ることで,異常のある胎児に対して出生後すみやかなケアが行える点にある」という意見もあるが,こうした診断のクライアントとなる一般の人々にとってみれば,出生前診断は「異常があった場合に中絶するため」という感覚が根強いであろう.
ちなみに,イギリスやカリフォルニア州では出生前診断の費用は「社会的予防システム」として公費負担されている.これは,先天異常のスクリーニングのコストを負担するほうが,障害児が出生した場合のコスト負担よりもメリットがあると判断されたためだという2).そして実際,大多数の妊婦が出生前診断を受け,異常が確定した場合には多くが中絶を選択する.
参考文献
1)毎日新聞:2013年11月22日東京朝刊
2)石村久美子:医療現場における女性の自己決定権.法哲学年報2001.pp.64-72, 2002
3)米本昌平,他:優生学と人間社会,講談社,2000
4)市野川容孝:福祉国家の優生学―スウェーデンの強制不妊手術と日本.世界(1999年5月号):167-176, 1999
5)谷喬夫:ヒムラーとヒトラー―氷のユートピア.講談社,2000
6)プロクター:健康帝国ナチス.草思社,2003
7)木村資生:生物進化を考える.岩波書店,1988
8)横塚晃一:母よ! 殺すな.生活書院,2007
9)立岩真也:弱くある自由へ.青土社,2000
10)上田昌文,他:エンハンスメント論争.社会評論社,2008
11)金森修:遺伝子改造.勁草書房,2005
12)Beauchamp TL, et al:Principles of Biomedical Ethics(6th edition). Oxford, 2012
13)レオン・カス編:治療を超えて―バイオテクノロジーと幸福の追求.青木書店,2005
掲載誌情報