icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生78巻3号

2014年03月発行

文献概要

連載 公衆衛生Up-To-Date・14

食品に含まれる放射性物質の調査

著者: 堤智昭1

所属機関: 1国立医薬品食品衛生研究所食品部

ページ範囲:P.208 - P.212

文献購入ページに移動
はじめに

 2011年3月11日の東日本大震災により発生した東京電力福島第一原子力発電所(以下,福島原発)の事故により,大量の放射性物質が周辺の環境に放出された.その結果,食品の放射性物質による汚染が危惧されたため,原子力安全委員会により示された「飲食物摂取制限に関する指標」1)を緊急的な措置として食品衛生法上の暫定規制値とした.しかし,暫定規制値はあくまで事故後の緊急的な措置として定められたものであったため,食品安全委員会によって行われた放射性物質の食品健康影響評価を踏まえて,2012年4月より現行の基準値が施行された(図1).暫定規制値では,食品からうける放射性物質の年間の預託実効線量が5mSvを超えないように食品中の規制値を設定していた.一方,現行の基準値ではより一層の安全と安心を確保する観点から,規制対象となるすべての核種から受ける年間の預託実効線量が1mSvを超えないように食品中の基準値が設定された.現行の基準値では福島原発事故の状況を踏まえて,放射性セシウムの他,放射性ストロンチウム,プルトニウムなどを規制対象核種とし,これらすべての核種からの年間の預託実効線量を合計して1mSvを超えないように,食品中の放射性セシウム(Cs134と137の合計)の基準値が設定された.このような状況の中,筆者らは,新たな基準値に対応した放射性物質の試験法を整備し2,3),さらに食品中の放射性物質の規制の効果や妥当性の検証を目的に,流通食品中の放射性セシウムの検査,並びに食事試料からの放射性セシウムの預託実効線量の推定を実施してきた.本稿ではこれらの調査結果について紹介する.

参考文献

1)原子力安全委員会:原子力施設等の防災対策について(平成22年8月一部改変)
2)厚生労働省医薬食品局食品安全部監視安全課:食品中の放射性セシウムスクリーニング法の一部改正について.事務連絡(平成24年3月1日)
3)厚生労働省医薬食品局食品安全部:食品中の放射性物質の試験法について.食安発0315第4号(平成24年3月15日)
4)埼玉県:狭山茶の安全性の確保について http://www.pref.saitama.lg.jp/site/sayamacya-annzen-kakuho/ocha-tyousa.html
5)堤智昭,他:マーケットバスケット方式による放射性セシウムおよび放射性カリウムの預託実効線量推定.食品衛生学雑誌54(1):7-13, 2013
6)厚生労働省:食品からの放射性物質の摂取量の測定結果について(平成24年2~3月調査分) http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000002wyf2-att/2r9852000002wyjc.pdf
7)厚生労働省:食品から受ける放射線量の調査結果(平成24年9~10月調査分) http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000034z6e-att/2r98520000034zam.pdf
8)厚生労働省:食品から受ける放射線量の調査結果(平成25年2~3月調査分) http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11131500-Shokuhinanzenbu-Kikakujouhouka/0000032136.pdf

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら