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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生78巻4号

2014年04月発行

雑誌目次

特集 自殺・自死対策

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ページ範囲:P.229 - P.229

 わが国では1998年に自殺者数が急増して以来,年間自殺者数は連続して3万人を超えていました.2012年は15年ぶりに3万人を下回ったとはいえ,自殺(自死)遺族の方々や自殺に傾く人々(自殺念慮者,自殺未遂者)を含めると,相談支援などの対象者は非常に多く,自殺・自死対策は公衆衛生の重要課題といえます.

 1998年からの自殺の急増には,経済のマイナス成長,企業倒産の急増に伴う失業者の増加,中小事業者などの債務問題の深刻化などが影響したといわれております.いわゆるヤミ金融に手を出し,その過酷な取り立てを苦にした自殺も多かったことから,2004年にヤミ金融対策法が施行,2006年には自殺対策基本法が施行されました.2007年には同法第8条に基づく「自殺総合対策大綱」が閣議決定され,自殺の予防はもちろん,遺された人の苦痛の和らげることなどを含めた9項目の重点施策や自殺死亡率の減少目標などが示されました.さらに,2009年には国からの交付金により都道府県に「地域自殺対策緊急強化基金」が造成され,同基金を活用して各都道府県では市町村や関係機関などとの連携により,大綱に示された重点施策が計画的に実施され,現在も進行中です.

わが国における自殺の原因分析と自殺対策の展望

著者: 竹島正 ,   山内貴史 ,   松本俊彦

ページ範囲:P.230 - P.235

はじめに

 わが国の自殺死亡数は2012年に15年ぶりに3万人を下回り,2013年も引き続き減少傾向にある1).本稿では,自殺既遂・自殺未遂の動向(年次,性・年齢階級別・職業別の特徴,地域較差,原因・動機別の特徴,自殺既遂者における自殺未遂の経験,自損行為による救急搬送の動向),自殺の心理学的剖検の研究成果,自殺予防コンソーシアム準備会の活動状況を踏まえ,わが国の自殺対策の進むべき方向について述べる.

地方自治体の自殺対策の効果の評価と今後の展望

著者: 本橋豊

ページ範囲:P.236 - P.240

はじめに

 わが国の自殺者数は平成24(2012)年では27,858人であり,減少傾向にある1).平成15(2003)年には自殺者が34,427人であったので,このピーク時と比較して平成24(2012)年は19.1%の減少を示したことになる.この減少が対策の効果によるのか,自然の減少によるのかを明らかにすることは,今後の自殺対策の推進に大きな鍵となる.

 自殺は複合的要因が作用して起きるものと考えられ,社会経済的要因の影響は無視できないため,減少の効果を厳密に検証することは難しい.また,対策の効果の検証は社会実験であるため,介入群と対象群を設定することができない.そのため,対策の効果(人為的介入の効果)を社会経済的要因のような背景的要因から区別することができないのである.

 地方自治体の自殺対策を強化するために,平成21(2009)年度補正予算において100億円の地域自殺対策緊急強化基金が造成され,都道府県における総合的な自殺対策の強化がなされた.事業メニューとして示されたのは,次の5つである.①対面型相談支援事業,②電話相談支援事業,③人材養成事業,④普及啓発事業,⑤強化モデル事業.これに加えて,平成22(2010)年度から厚生労働省分の予算として「うつ病医療体制強化事業」が追加された.これらの事業は地域の実情を踏まえて自主的に取り組む地方公共団体の対策や民間団体の活動などの支援により,最終的な目標として「地域における自殺対策力」を強化することを目的としている.

 基金が創設されて3年が経過したことを受けて,平成24(2012)年度には内閣府に「地域自殺対策緊急強化基金検証・評価チーム」が編成され,平成23(2011)年度までの効果検証が行われた.平成25(2013)年7月には,新たに自殺対策検証評価会議が設置され,中立・公正の立場から自殺対策の施策の実施状況,目標の達成状況などの検証を行うことになった.平成25(2013)年11月には自殺対策検証評価会議の報告書が公表された2).本稿では,この報告書に基づいて地方自治体の自殺対策の効果と評価について概観することにする.

世界の自殺対策と日本の自殺対策

著者: 高橋祥友

ページ範囲:P.241 - P.246

はじめに

 世界で年間約100万件の自殺が生じ,自殺予防は喫緊の課題と認識されている1).WHO(世界保健機関)からも国のレベルにおける自殺予防戦略のガイドラインが発表されている.しかし,実際に国のレベルで自殺予防の方針を作成し,それをもとに対策を実施している国となると世界中をみてもごく少数である.

 本論では,UN(国連)/WHOの自殺予防ガイドラインを紹介するとともに,わが国の自殺予防対策について考察した.

自死遺族支援の重要性と取り組みの現状

著者: 杉本脩子

ページ範囲:P.247 - P.251

はじめに

 2006年に成立した自殺対策基本法は,第1条目的において遺族の支援を充実すると明記している.自殺を防ごうというだけでなく,不幸にも多くの人が自ら命を絶っている事実から目をそらさずに向き合い,遺された人たちを社会全体で支えようという基本理念は画期的なものだ.

 自殺は個人の選択であり,個人の問題である.また,遺された人の悲嘆や苦悩も個人で対処するものという考えが長年にわたって一般的であったことを思うと,この条文を大切にしたいと強く願う.

 基本法施行後,試行錯誤を重ねながらさまざまな取り組みが行われている.自死遺族支援には,自死・自殺の問題をどう理解し,支えるかという面と,死別の悲嘆(グリーフ)をどう理解し,支えるかという面があり,現状や課題についての考察を試みたい.

自殺未遂者などのケアの重要性と地域における支援のあり方

著者: 桑原寛

ページ範囲:P.252 - P.255

はじめに

 自殺未遂者が再び自殺を図る危険性は,非未遂者に比べ著しく高い.また,自殺未遂の頻度は自殺既遂の10~20倍と推定されている1,2).そのため,未遂者支援は自殺対策上極めて重要であり,2006年の自殺対策基本法,2007年の自殺総合対策大綱でも重点課題として位置づけられた.

 その後,今日までの間に,未遂者の実態把握に向けて救急医療機関を対象にした調査などが数多くなされてきた.そして,厚生労働科学研究費補助金を活用して,地域の精神保健福祉相談担当者向けに「自殺に傾いた人を支えるために―相談担当者のための指針(以下,指針)」や,救急医療従事者向けに「自殺未遂患者への対応:救急外来(ER)・救急科・救命救急センターのスタッフのための手引き」,精神科救急医療従事者向けに「精神科救急医療ガイドライン(自殺未遂者対応)」が作成され,これらのテキストを用いた研修会も開催されてきた.また,地域での未遂者支援活動を含む包括的な取り組みにかかる「地域における自殺対策プログラム」なども作成されており,これらの資料は,厚生労働省の自殺予防対策ホームページ(http://www.mhlw.go.jp/bunya/shougaihoken/jisatsu/)から入手できる.

 そこで,本稿では,これまでの未遂者支援にかかる取り組みの成果をふまえつつ,今後の地域のプライマリケア従事者による未遂者支援のあり方を整理する.

救急医療における自殺未遂者ケアの現状と展望

著者: 三宅康史

ページ範囲:P.256 - P.263

はじめに:自殺企図患者搬送と救急医療の現状

 自殺による死亡が連続して年間3万人を切る状況となっても,自殺未遂者はその複雑な背景や精神科関連の既往歴,あらゆる薬物や毒物の過量摂取による影響が予見できないこと,飛び降りや飛び込みなど高度な身体的治療を要する自殺企図の手段とその後の集中治療の困難さから,救急隊は一般救急病院への自殺企図患者の搬送をあきらめ,軽症~重症を問わず救命救急センターを中心とした身体科三次救急医療機関への搬送に依存している.その結果,救命救急センターが身体的に軽症の自殺企図患者の初療にまで対応することとなり,ベッド状況の逼迫化とともに本来の業務への支障をきたす状況に陥っている.

 自殺企図患者では身体的問題以外に,自殺企図に至った原因の排除や,現在の精神症状の評価と治療,来院後の希死念慮の変遷など精神科的なアプローチやケアが必要なことは言うまでもない.ところが,搬送されてきた自殺未遂者の精神科的側面への対応について,身体科救急を担う医療スタッフで“正しく”ケアできるよう教育や研修を受けたものはほとんどいないのが実情である.しかしそれとはお構いなしに,平日夜間,週末,盆,正月など精神科医がいない状況で,同じような患者が次々搬送されベッドは埋まる.矛先は,かかりつけの精神科医や,いつまでたってもまともに機能しない精神科救急医療システムに向かうことになる.かかりつけ精神科クリニックでの大量の内服薬処方を原因の1つとしてこれを責める意見や,軽症患者は時間外でもかかりつけクリニックへの救急搬送あるいはコンサルテーションを求める意見も出されている.自治体の設定した夜間の精神科救急担当医療機関に電話しても,当直医は身体的な問題が解決しない限り患者の診察すらしてもらえないのが現実となっている.

 回避できない自殺も多々ある中,精神病的な自殺やうつ病による自殺は精神科的な対処によって予防可能な症例もある.そのため一命を取り留め自殺未遂となった場合には,自殺完遂の最大の危険因子といわれる再企図を予防することが自殺死亡者数を減らすうえでのポイントとなる.そしてその答えは自殺企図者が最初に担ぎ込まれる救急医療機関の中にある.

 搬送された救急医療機関において,まずは身体的な治療を行い,これと並行して精神科医のいない状況においても可能な限り標準的な自殺未遂者への精神科的ケアを施すことが,後々の精神科でのフォローアップに際しても有効である.しかし,救急の現場で使える自殺企図者へのケアを行うために欠如している問題が多く存在している.主な問題点を表1に示す.

うつ病・自殺対策における一般診療科の役割と精神科との連携

著者: 稲垣正俊

ページ範囲:P.264 - P.268

はじめに

 本稿では,一般診療科におけるうつ病スクリーニングとケアマネジメントの実施について記述するが,その実施において,一般診療科外の資源との連携が必要となってくる.うつ病・自殺予防対策と関連して一般診療科で行われている,もしくは今後行われるうつ病スクリーニングについて考察する.地域連携のあり方を検討する際の参考にしていただけると幸いである.

若者の自殺予防のための支援のあり方

著者: 斎藤環

ページ範囲:P.269 - P.273

はじめに

 わが国の自殺者数は,2012年には15年ぶりに3万人を割り27,858人となり,2013年には27,276人と緩やかな減少傾向にある1).しかしその一方で,若者の自殺が急速に深刻化していることは意外に知られていない.

 2012年版「自殺対策白書」においては,複数のデータがその深刻さを示唆している2).2013年版よりも若者に焦点化した内容であるため,本論では2012年版のデータに基づいて検討を進めたい.

 図1は,「平成10年の値を100とした年齢階級別の自殺死亡率の推移」である.どの年代よりも20代の自殺死亡率が高く,次いで30代,3番目が19歳以下となっている.また同白書によれば,15~39歳の各年代の死因トップが自殺となっている.若年層で死因トップが自殺となっているのは先進7か国で日本のみであり,死亡率も他国に比べて高い.

視点

保健所公衆衛生医師の役得

著者: 佐々木隆一郎

ページ範囲:P.226 - P.227

はじめに

 今から考えると,学生時代に岐阜県飛騨地方のお茶が名産の白川町で,3年にわたって大学の予防医学教室の研究活動のお手伝いをしたのが,私の公衆衛生活動の始まりである.初めて参加した最後の日に,町の方々が出してくださった五平餅(みたらし団子くらいの大きさ)を30串も平らげてしまったことが,卒業後2年半の研修途中で,大学に連れ戻されてしまった原因だろうと考えている.

 当時,研修を行っていた750床の岐阜県の病院で,日々,救急患者,治療法が必ずしも確立していないがん患者さんの闘病をお手伝いしていた.五平餅の恩義だけではなく,「これはもとを絶たねばだめだ」と感じたことも,しばらく予防医学の道に身を置いてもよいかなと考えた理由である.

連載 いま,世界では!? 公衆衛生の新しい流れ【新連載】

自殺および自殺対策―WHOの活動

著者: 瀬戸屋雄太郎 ,   中谷比呂樹

ページ範囲:P.274 - P.277

はじめに

 日本の自殺者数は4年連続で減少し,昨年に続いて3万人以下となった.では世界全体で見ると,何人ぐらいの人が自殺で亡くなっているのであろうか.WHO(世界保健機関)では,毎年80万人以上の自殺者数がおり,自殺未遂者はその10倍以上いると推計している1).自殺および自傷行為による経済的・社会的損失は莫大であり,また自殺者の遺族に与える心理的・社会的インパクトも大きい.そのため,WHOでは自殺を公衆衛生上の問題の1つととらえ対策に取り組んでいる.

 本稿ではまず世界における自殺の現状をまとめ,それに対してのWHOの活動について概要を示す.またこれらを踏まえ,日本の自殺対策や研究がどのように世界の人々に貢献することができるか考察する.

公衆衛生Up-To-Date・15 [動物衛生研究所発信・その1]

家畜のインフルエンザ

著者: 彦野弘一 ,   西藤岳彦

ページ範囲:P.279 - P.282

はじめに

 近年,発展途上国において畜産業が急激に成長し,家畜の飼養衛生環境の悪化や家畜衛生にかかわる社会資本の未整備などにより家畜感染症の増加をもたらし,人畜共通感染症として人に健康被害を引き起こすリスクを増大させている.現在,人畜共通感染症として重要視されている疾病の1つは,家禽および豚におけるA型インフルエンザウイルスの感染症,いわゆるインフルエンザである.

 一般的に,A型インフルエンザウイルスは宿主特異性を持ち,家禽または豚から人への伝播は散発的に起きるに過ぎない.しかし,過去のインフルエンザのパンデミックは,動物由来のA型インフルエンザウイルスが人に直接伝播するか,人と動物由来のA型インフルエンザウイルスの遺伝子再集合体が人に伝播することにより起きている.近年では,H5N1亜型ウイルスやH7N9亜型ウイルスが家禽から人へ伝播し高い死亡率を示す事例が多発し,パンデミックにつながる可能性があるとして注視されている.

リレー連載・列島ランナー・61

日常業務にある「事例」から実践能力の獲得を

著者: 守田孝恵

ページ範囲:P.283 - P.287

地域看護学実習と「住民の力」

 地域看護学実習を終えると,多くの学生が「楽しかった!」と感想を述べる.何が楽しかったのかを尋ねると,地域で行われる健康教育や地域組織活動に参加し,住民と一緒に活動できたことが楽しかったと言う.学生が地域の魅力を実感できたと聞くことは,私にとって何よりの喜びである.

 私も学生時代の実習で保健師活動を知り,住民の持つ健康に向かう「力」を実感することができて,この「力」にかかわれる保健師活動に魅力を感じた.当時,3歳児健康診査のフォローで家庭訪問に行った2つのケースの母子が,たまたま知り合いであった.私は,一方のケースに児童館を紹介した.その見学の日に,待ち合わせ場所に現れたのは,この2組の母子だったのだ.住民が誘い合って保健行動を起こした場面を見た.住民がつながり,行動する「力」を持っていることに気付いた.

衛生行政キーワード・94

自殺対策

著者: 伊東千絵子 ,   河嶌譲 ,   江副聡

ページ範囲:P.288 - P.290

世界的な動向

 WHO(世界保健機関)によると,世界では低中所得国を中心に毎年約100万人が自殺で亡くなっている1).自殺は,世界で15~34歳における死因の上位3要因の1つであるほか,疾病負荷においても5位2)と,社会に与える影響は大きい.WHOは,自殺は予防可能な公衆衛生上の問題であるとして,科学的根拠を踏まえた,革新的で包括的な協働アプローチの必要性を指摘している.2013年5月の第66回WHO総会においては,「精神保健行動計画2013-2020」3)が承認されたが,その目標の1つに2020年までに世界の自殺死亡率を10%減少させることを挙げ,保健や精神保健以外を含む多くのセクターとの連携による効果的な活動が必要と述べている.また,2013年12月16日・17日に日本で,世界各国から参加する世界自殺レポート会議を開催し,2014年9月10日の世界自殺予防デーに,日本の自殺対策の紹介も含めた初めての世界自殺レポート(World Suicide Report)を刊行する予定となっている.

映画の時間

―1980年代ポーランドの厳しい体制下,人々は自由と未来のために立ち上がった―ワレサ 連帯の男

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.291 - P.291

 1989年11月にベルリンの壁が崩壊しました.東欧諸国の民主化の象徴として語り伝えられる出来事ですが,それに先立つ6月に,ポーランドでは自由選挙が行われ,統一労働者党(共産党)が大きく後退して民主化が進展しました.このことがベルリンの壁崩壊に大きく影響したと考えられます.今月は,ポーランドの民主化の進展,ひいては東欧社会主義圏の民主化に大きく貢献したレフ・ワレサを描いた作品をご紹介します.

 1980年代の初め,イタリアの著名なジャーナリストであるオリアナ・ファラチが,インタビューのためにワレサの自宅を訪ねるシーンから映画は始まります.既に独立自主管理労働組合「連帯」の活動が活発化している頃で,ポーランドの国家警察が連帯の委員長であるワレサを監視しているなかでの訪問であり,当時の緊張感が観客にも伝わってきます.多くの観客が同時代の出来事として承知している事柄を映画化することは,たいへん難しい作業だと思いますが,アンジェイ・ワイダ監督は冒頭から国家権力による弾圧の一断面を描くことにより,観客を映画に引き込んでいきます.

予防と臨床のはざまで

ためしてガッテンに学ぶ健康教育

著者: 福田洋

ページ範囲:P.293 - P.293

 このコラムでも何度もご紹介しているさんぽ会(多職種産業保健スタッフの研究会,http://sanpokai.umin.jp/)ですが,2月の月例会は元NHKディレクター北折一氏を講師にお招きし,「ためしてガッテンに学ぶ健康教育」と題して人の心を動かす健康教育の極意についてご講演頂きました.北折一氏は,元NHK科学・環境番組部専任ディレクター,「ためしてガッテン」演出担当デスクで,1995年から「ためしてガッテン」の立ち上げに参加し,以来「NHKスペシャル」1本を除き,丸18年間,一貫してガッテンの制作にあたられた方です.北折氏との出会いは2009年の花王「保健指導力プラスワン」セミナーで,一緒に講演を担当させていただき,その明快で痛快な語り口調と含蓄ある内容に大変感動しました.いつかさんぽ会でご講演を…と思っていましたが,講演は2年待ちと大変ご多忙で,今回やっと実現しました.

 ご講演のツカミは,ご自身の10kg以上の減量体験と筋トレの成果です.コミカルな写真と「デブのくせに運動しても,苦しい,痛い,痛々しい」などの軽快な語り口調で,すっかり専門職の興味を引きつけます.「運動だけで減量効果を出すのは難しい」と同じような内容を伝えようとしていても,そこに工夫が加わることで印象はまったく変わるという実例を次々と繰り出します.そして「健康情報,伝えようとしちゃってませんか?」という問いかけから,意外性のない健康情報の説明や,「運動しましょう」,「野菜を増やしましょう」というような「魔性(ましょう)の攻撃」で,専門職が健康教育や保健指導で陥りがちな「自分たちが正しいと思っている健康情報や価値観の押しつけ」がいかに効果がなく,逆に不快感を与えるかを指摘されました.

「公衆衛生」書評

―NPO法人 日本医療ソーシャルワーク研究会 編 村上須賀子,佐々木哲二郎,奥村晴彦 編集代表―さまざまな患者・家族のケースマネジメントへの実践書―『医療福祉総合ガイドブック 2013年度版』 フリーアクセス

著者: 宇都宮宏子

ページ範囲:P.278 - P.278

 私は,病院から生活の場へ患者さんを帰したいと考え,訪問看護の現場から大学病院に移り,「退院調整看護師」として,退院支援・退院調整に取り組んだ.私が訪問看護をしていた時代は介護保険制度が施行される前で,行政の高齢福祉課のケースワーカーや,ヘルパー事業所,特別養護老人ホームのデイサービスや短期入所担当の相談員たち,多くの社会福祉士の仲間に支えられ,対象者や,家族の抱える暮らし,経済問題,虐待の問題等に一緒にかかわってきた.

 1992年から,私が訪問看護を実践していた京都の行政区では,特に「福祉・医療・保健の実務者会議」を当初から開催し,困難事例のケース検討も行ってきた.そこで中心になって会を牽引していたのが行政の社会福祉士だった.その経験から,退院調整部門では医療ソーシャルワーカー(MSW)と退院調整看護師が協働して取り組むことが効果的であると考え,病院に戻ってからも退院調整部門の仕組みを作ってきた.

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投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.294 - P.294

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.295 - P.295

あとがき フリーアクセス

著者: 阿彦忠之

ページ範囲:P.296 - P.296

 昨年から今年にかけて複数の県が,知事部局や教育委員会などの公文書では「自殺」という用語の使用を原則としてやめ「自死」と言い換えるという方針を発表しました.世の流れは,「自殺」よりも「自死」が主流になるかと思いきや,最近は両者の比較や「自死」への言い換えのメリット・デメリットなどの論評も多く,使い分けも簡単とは言えません.

 本号でも,どちらか1つではsuicide prevention and controlに関する最近の課題や対策の展望を広く紹介することができないと考え,「自殺・自死対策」という特集タイトルにしました.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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