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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生78巻6号

2014年06月発行

雑誌目次

特集 発達障害

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ページ範囲:P.373 - P.373

 平成17(2005)年に発達障害者支援法が施行され,9年が経過しました.この間,障害者総合支援法,障害者基本法においても,発達障害が法の対象として明文化され,保健・医療・福祉,教育,就労などに関連する様々な機関による支援策が全国的に展開されるようになりました.

 公衆衛生の領域においては,母子保健,精神保健における支援策を中心に,障害の早期発見・早期対応,医療や福祉サービスへのつなぎ,思春期における気づきと援助など,関係機関と連携しての幅広い取り組みが求められています.

発達障害に関する最近の動向

著者: 市川宏伸

ページ範囲:P.374 - P.377

 平成17(2005)年に発達障害者支援法が施行され,発達障害という言葉は,社会的には知られるようになったが,発達障害の本質が十分に理解され,適切な支援が行われるようになったわけではない.「発達上に問題があるのが発達障害である」という考え方は,今でも垣間見られる.平成17(2005)年に施行された発達障害者支援法の延長上に,平成22(2010)年12月の障害者自立支援法の改正,平成23(2011)年7月の障害者基本法の改正があり,その中で,対象は身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む)と明記され(下線は筆者),発達障害が法案上も障害の仲間入りをした.発達障害は人生を通じて存在している.初めは学童年齢で話題になったが,やがて彼らは中学生に成長し,高校生になり,社会人になっていった.現在は成人になった発達障害者の存在が注目され,社会的な話題となっている.

障害特性に応じた支援のあり方―地域連携ネットワークによる支援

著者: 辻井正次

ページ範囲:P.378 - P.381

はじめに

 この小論では,発達障害の障害特性に応じた支援のあり方を,自閉症スペクトラム(autism spectrum disorder;ASD)を中心に,特に地域連携ネットワークの位置づけも含めて考えていきたい.例えばASDの場合,障害の特性に合った取り組みは不可欠で,中核となる社会性の障害のみならず,過敏性などの感覚障害なども含め,関係者が正しく障害特性を理解して対応することが非常に重要である.すでに,2005年より施行されている発達障害者支援法においても,障害に対する適切な対応は義務づけられている1)

 徐々に,社会的な共通理解形成が行われつつある一方で,現実には,まだまだ関係機関の連携や共通理解が十分に行われていない実態がある.ASDなどの障害特性の表れは発達段階で異なる部分もあり,幼児期を担う保育所や幼稚園,学齢期を担う小中高等学校,その後を担う障害者福祉(含む就労支援)で異なる理解や対応があり,生涯を通じた支援構築は容易ではない.そうした中では,母子保健や精神保健など,保健行政の枠組みで,生涯を通した側面的な支援の役割が期待されている.

発達障害者支援センターの取り組み

著者: 阿佐野智昭

ページ範囲:P.382 - P.386

発達障害者支援センターとは

 平成14(2002)年に,「自閉症・発達障害支援センター」が全国で12か所開設されてから12年の歳月が過ぎた.平成17(2005)年には発達障害者支援法が施行され,発達障害者支援センターが全国の都道府県・政令指定都市(以下,政令市)に設置されることとなった.各センターにおいては,それぞれの地域ニーズに沿った多様な取り組みを展開しており,現在80を超えるセンターが「発達障害者支援センター全国連絡協議会」に登録されている.

 発達障害者支援センターの機能は,主に直接的支援と間接的支援に分けられる.直接的支援は,個別で行われる相談支援や就労支援などの支援と集団で行われるペアレントトレーニングなどの支援で構成される.一方,間接的支援は,地域ニーズのアセスメントを行い,当該地域の計画的な発達障害児者支援体制の構築を目的としている.それらを通じて,発達障害児者に対する専門性・広域性のある支援を行う地域の拠点として発達障害者支援センターは位置づけられている1)

幼少時期の発達障害とスクリーニング―早期発見と早期支援

著者: 平岩幹男

ページ範囲:P.388 - P.391

はじめに

 発達障害は最近医学の世界だけではなく社会的にも注目されるようになってきた概念で,平成17(2005)年4月に発達障害者支援法が施行され,支援が強調されている.この法律の中には第2条では以下のように定義づけられている.「第2条 この法律において『発達障害』とは,自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害,学習障害,注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」.この定義では疾患名や発症年齢を示してあるが,質的にどのようなものであるかは示されていない.そのため,筆者は「発達障害」は発達そのものの障害という考えではなく,「発達の途中で明らかになる行動やコミュニケーションなどの障害で根本的な治療はまだないが,適切な対応により社会生活上の困難は軽減される障害」と考えている.

 また発達障害は,生活の中でいつも「障害」を表に出しているのではなく,状況によって障害が明らかになるという特徴がある.さらに障害一般に言えることであるが,「症状」があることだけではなく,その「症状」によって「社会生活上の困難」を来してはじめて障害として扱われる.したがって発達障害には症状によって社会生活上の困難が非常に強い中核群と,その何倍もいるかもしれない,いわばグレイゾーンと言える周辺群が存在する.こうしたこともあって,特に幼児期には診断が簡単ではないし,必ずしも適切に診断されているとは限らない.しかし適切な対応や療育によって発達障害を抱えた子どもたちの社会生活上の困難は多くの場合に減らすことができる.もちろんそれなりに時間はかかるし,すべての困難がなくせるというわけではない.しかしながら,単に様子を見るあるいは診断のみで終わっていることも多い現状を変え,それぞれの子どもたちの抱える困難に合った対応を行うことが欠かせない.これは幼児期から成人期まで基本的には同じである.

思春期・青年期の発達障害者支援,二次障害への対応

著者: 齊藤万比古

ページ範囲:P.392 - P.395

はじめに

 発達障害において「二次障害」とは,個々の発達障害そのものの生来的特性のうち著しい困難や問題となっているものを「一次障害」と呼ぶのに対して,出生直後から始まる子どもと養育環境やその外部の環境との相互作用の結果として生じる新たな困難や問題を指し示すための概念である.すなわち発達障害の生来的障害特性が一次障害,その獲得性の問題が二次障害である.この二次障害(二次性精神疾患)という文脈から発達障害の治療・支援を考えることの意義は,発達障害の特性を持つ子どもの自己形成過程において,養育環境をはじめとする環境との相互作用が果たした侵襲的衝撃を,その結果とともに正当に評価した治療・支援が可能なところにあると筆者は考えている.

発達障害者支援における教育機関との連携

著者: 柘植雅義

ページ範囲:P.396 - P.400

はじめに

 公衆衛生領域の関係者が,その専門性に基づいて発達障害者支援を行うに際しては,種々の教育機関との連携は欠かせない.そして,その主な対象は,就学前の段階から,学齢期,そして大学などの高等教育機関の段階までのおよそ20年間にわたり,人生80年とすると,その4分の1の期間になる.さらに,近年の生涯学習の時代背景(教育基本法)を考えると,発達障害者の教育機関とのかかわりは生涯にわたることになる.

 本稿では,(1)発達障害者支援法の成立・施行後の特別支援教育の充実,(2)学校教育現場における取り組みの概観,(3)教育と保健,医療,福祉,就労などさまざまな分野との連携の現状と課題,(4)乳幼児健診,就学時健診による早期発見の意義と活用のあり方,そして,(5)思春期・青年期における不登校・ひきこもりなどに対する教育機関と保健福祉領域との連携,について述べる.

発達障害児の家族への支援

著者: 井上菜穂 ,   井上雅彦

ページ範囲:P.402 - P.405

はじめに

 発達障害者支援法(2005)の第13条には発達障害者の家族に対する支援の必要性が明記されている.しかしながら,家族の支援ニーズは子どもの障害の程度や養育環境だけでなく,ライフステージによっても変化し,診断時期によっても異なってくる.特に発達障害の場合,障害が疑われてから診断を受けるまでの時間が他の障害に比べても長い1)ことや,診断時期も大きな個人差があることが特徴であり,この時間差はさまざまなニーズの違いを生む.例えば幼児期に診断を受けた場合と不登校など何らかの不適応状態によって学齢期以降に診断を受けた場合では,親の障害理解や受けとめも大きく異なってくる.本稿では紙面の関係から,主として親を中心とした,ライフステージごとのニーズと支援について概説する.

発達障害者への就労支援

著者: 志賀利一

ページ範囲:P.406 - P.409

就労を主訴とした相談の増加

 就労支援を求めて,多くの発達障害者が保健福祉の窓口に訪れている.図1は,全国の発達障害者支援センターにおける,サービス提供の実績をまとめたものである.過去5年間,年間の相談件数は伸びている.その内訳をみると,発達支援の提供数はほぼ横這いであるのに対し,就労支援は確実に増加している.2008年度の2,038人から,2012年度には5,369人と,就労支援の実績数は2.6倍に増えている1)

 ここ数年で増加している,就労支援を求める発達障害者には,次のような特徴がある.

子どもの心の診療に携わる医師等の育成―子どもの心の診療ネットワーク事業

著者: 奥山眞紀子

ページ範囲:P.410 - P.414

子どもの心の診療ネットワーク事業に至る経緯

1.「子どもの心の診療医」の養成に関する検討会

 近年の発達障害を中心とする子どもの心の診療の需要に比べ,対応できる医師が限られており,専門医の初診の待ち時間が長くなっているなどの弊害が出ていることから,厚生労働省雇用均等・児童家庭局では,平成17(2005)年3月より平成19(2007)年3月まで,「子どもの心の診療医」の養成に関する検討会にてその対策の検討を行った.なお,平成16(2004)年度策定の「子ども・子育て応援プラン」において,子どもの心の健康に関する研修を受けている小児科医,精神科医の割合を100%にするという数値目標があげられ,「子どもの心の問題に対応できる小児神経科,児童精神科等の医師,保健師等の養成を図るとともに」という目標が掲げられたこともその基盤となっている.検討会は,有識者の他,関連する学会,医師会や医会,協会,医学部長病院長会議などの代表も参加し,どのようなフレームで考えるべきかの検討が行われた.小児科系の医師と精神科系の医師で診方や意見にかなりの差が生じることもあったが,それを乗り越えて,合同で報告書を作成できたことは大きな意義があったと考えられる.

 平成19(2007)年3月に完成した報告書1)では,図1のごとく,「子どもの心の診療医」を①一般の小児科医・精神科医,②子どもの心の診療を定期的に行っている小児科医・精神科医(子どもの心の診療をサブスペシャリティーとしている小児科医・精神科医),③子どもの心の診療に専門的に携わる医師の3段階に関してその育成を考えている.その背景には,一般小児科医や精神科医も子どもの心の問題にある程度の対応をして,必要に応じて専門的な医師に紹介する技術を持っていただくこと,そして,紹介先である専門的な医師の技術向上を目指す必要があると考えられたことがある.

視点

公衆衛生的視点で健康なまちづくりを

著者: 廣田洋子

ページ範囲:P.370 - P.371

 「保健所の現場からみた公衆衛生のidentity」が依頼テーマであったが,いざ書こうとすると難しい.そもそも公衆衛生とは何なのだろうか.

 公衆衛生の教科書にはウィンスローの「公衆衛生とは,病気の予防,寿命の延長,健康の増進についての科学であり,実践技術である.それは組織化されたコミュニティの努力によって達成される」という定義があるが,後半の「組織されたコミュニティの努力によって」という部分に注目したい.「組織化されたコミュニティ」は法に基づく公衆衛生的業務を行う行政組織が基本になるが,公衆衛生の目的達成には行政の力だけでは不十分で,地域の関係団体,住民組織,さらには個人の健康行動の協働が必要と思う.

特別寄稿

ワクチンの生命は品質である

著者: 倉田毅

ページ範囲:P.416 - P.421

はじめに

 ワクチンの生命は品質そのものである.最近導入された輸入ワクチン3種(小児用肺炎球菌ワクチン,ヒブワクチン,ヒトパピローマウイルスワクチン)は,多くの点で種々の重要な副作用の問題を発生させていることは否めない.それに加えて,多種ワクチン同時,あるいは極めて短い間隔での接種による被接種児における副作用・副反応が発生している.副作用・副反応はワクチンの質に起因する.

 言うまでもなく,ワクチンは感染症の予防・発症阻止の目的で用いられるものである.ワクチンは,国民の生命の安全を保障する極めて重要な医薬品である.他の医薬品が疾病の軽快,治療を目的として用いられるのに対して,ワクチンは,通常疾患を有しない小児,高齢者,あるいは全年齢層の健康人に接種されるので,特にワクチンの安全性と有効性が最大限に重視されなければならない.その意味では,近年突如輸入された外国ワクチンの副作用などの発生は極めて問題であり,かつて日本脳炎ワクチンで急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis;ADEM)類似の1例でワクチンを中止し,切り替えられるまで6年かけた対応に比べればあまりにも安易な導入であると思われる.

 筆者は,わが国の実験室におけるワクチンの品質管理を行っている国立感染症研究所において,(全世界の重篤感染症の感染病理学的研究のかたわら)1985年10月から2006年3月まで,その仕事に携わってきた.その間1999年から7年間は,WHOの「生物製剤標準化委員会(Expert Committee on Biological Standardization;ECBS)」の委員として多くの製剤がどのようにしてWHOで検討されていくかをみてきたつもりである.

 ワクチンはWHOが認めるかどうかではなく,各国が自国の品質管理の中で安全性,有効性を決めていくべきものであることが,まず大前提にあることを忘れてはならない.どのワクチンも,同じ名がついたものの内容がすべて同じではない.これは生物系の一連の実験を自ら実施してみればすぐ分かることである.品質について言うとき,製造元,許認可条件がそれぞれのワクチンごとに,また国ごとに異なっているのに,国際協調,国際調和,国際標準という論をもってあたかも同じ用途(特定の疾病の)ならどのワクチンも同じということには全くならないということを十分理解しなければならない.

 新規導入ワクチンについてどのような治験が国内でなされ,また議論されてきたかは分からないが導入後に小児用肺炎球菌ワクチン,またはヘモフィルスインフルエンザ菌b型(ヒブ)(haemophilus influenzae type B;Hib)ワクチンを含むワクチン同時接種後の死亡例が7人報告され,その検証結果についても,乳幼児突然死症候群(sudden infant death syndrome;SIDS)という被接種者の個人の責任にされてしまい,基本的な原点に戻った検討がなされなかったことは極めて遺憾である.これについては後述する.

連載 公衆衛生Up-To-Date・17 [結核予防会結核研究所発信・その1]

低まん延下の効果的な結核対策

著者: 加藤誠也

ページ範囲:P.424 - P.427

はじめに

 わが国の結核罹患率は近年漸減を続けており,2012年には人口10万対16.7になった.今後,低まん延状態になるまでには多くの課題があり,効率的かつ効果的な対策を進める必要がある.

リレー連載・列島ランナー・63

高齢化団地問題でみんなをつなぐ「緑のおばさん」

著者: 稲葉静代

ページ範囲:P.428 - P.431

 2013年12月8日に名古屋市内で日本福祉大学健康社会研究センター主催のシンポジウムが開催されました.主催者の近藤克則先生が,意見交換の場で名古屋市緑区の大規模団地における孤立防止の取り組みについてご紹介くださったことがきっかけで,執筆の機会をいただきました.

衛生行政キーワード・95

HIV/エイズ対策

著者: 西嶋康浩

ページ範囲:P.432 - P.434

HIV感染症を取り巻く状況

 1981年に,今でいう「後天性免疫不全症候群(acquired immune deficiency syndrome;AIDS)」が新しい後天性の細胞性免疫不全症として報告され,1983年にその原因がヒト免疫不全ウイルス(human immunodeficiency virus;HIV)であることが突き止められた.それ以降,交通手段の発達や人的交流の活発化により瞬く間に世界中に伝播され,これまでに世界で約7,000万人が感染し,そのうち約半数がすでに亡くなり,現在,約3,500万人がHIV感染症/AIDSを持ちながら生活している.

 わが国では,いわゆる感染症法に基づき作成された「後天性免疫不全症候群に関する特定感染症予防指針」により,予防と医療に係る総合的な施策を患者の人権に配慮しつつ推進してきた.わが国のHIV感染症/AIDSの動向をみると,平成25(2013)年については,新規HIV感染者1,077件,エイズ患者469件,合計で1,546件となっており,近年では1,500件前後の報告が続いている(図1).患者・感染者の累積報告数は約23,000件を突破するとともに,地域的,年齢的な広がりもみせ,依然として予断を許さない状況にある.

映画の時間

―超豪華俳優4人の夢の共演―ラスト・ベガス

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.435 - P.435

 本誌2月号でご紹介した中国映画「グォさんの仮装大賞」(監督;チャン・ヤン,2012)やこの春に公開されたドイツ映画「バチカンで逢いましょう」(監督;トミー・ビガント,2012)など,洋の東西を問わず,高齢者が活躍する映画が目立ちます.今月,ご紹介するアメリカ映画「ラスト・ベガス」も4人(+1人)の元気な高齢者が活躍する映画です.わが国もそうですが,各国とも第2次世界大戦後のベビーブーマーが65歳を超えて高齢社会が到来してきたことが背景にあるのでしょう.

 1950年代の半ば,古きよき時代のアメリカの記憶がよみがえるようなブルックリンの店にたむろする悪ガキの仲良し4人組.喧嘩をしたり彼女を取り合ったりといった風情がタイトルといっしょに紹介された後,時代は58年後の現代に移ります.

予防と臨床のはざまで

職域ヘルスプロモーショングローバルセミナー

著者: 福田洋

ページ範囲:P.437 - P.437

 4月12日にタイヘルスとさんぽ会(産業保健研究会,http://sanpokai.umin.jp/)の共催で,職域ヘルスプロモーショングローバルセミナーを開催しました(会場:順天堂大学).テーマは「タイと日本のGood PracticeからHealthy Workplaceについて考える」.タイヘルス(Thai Health Promotion Foundation)は,「タイ国民の健康増進と幸福度向上」を目的に運営されている,タイ首相直下のヘルスプロモーションに特化した政府系独立専門機関です.タイ国内における認知度は非常に高く,タバコと酒の税金を財源として健康増進につながる様々な施策を強力に推進しています(http://thaihealth.or.th).

 タイヘルスには,健康増進の観点から注力している重点項目がいくつかあり,タバコ,酒,交通安全,健康教育などが挙げられますが,その重要項目の1つが「職域ヘルスプロモーション」です.その主要プログラムに「Happy Workplace Program」があり,タイ全土の2,000を超える組織(企業,官庁,大学,お寺など)に浸透しつつあります.タイでは,僧侶のメタボも社会問題になっていて,僧侶の職場である寺院においても同プログラムが浸透しつつあります.一方タイには,多くの外資系企業(日系企業含む)が進出し,多くのタイ人が働いているにもかかわらず,外資における同プログラムの普及は限定的なのが現状とのこと.その状況を打破するために日本人として「Happy Workplace International Project」のディレクターを務める大和茂さんが,今回のセミナーの発起人です.

「公衆衛生」書評

―茨木 保 著―苦しみを抱えながら不朽の仕事を成し遂げた―『ナイチンゲール伝 図説 看護覚え書とともに』 フリーアクセス

著者: 鈴木晃仁

ページ範囲:P.415 - P.415

 フロレンス・ナイチンゲール(1820~1910)は,クリミア戦争(1853~1856)におけるスクタリの陸軍病院の傷病兵の看護で国民的な英雄となり,帰国後に,イギリス陸軍の衛生・看護の改革,イギリス帝国に編入されたインドの衛生の改革,急激に拡大していた病院における看護の改革などに活躍した女性である.1859年に出版された『看護覚え書』は改訂されながら版を重ね,現在では世界中で200以上の言語に翻訳されている.今も医療の現場でも存在感がある歴史上の人物である.

 偉大な人物の常として,どの時代もそれぞれのナイチンゲールの像を描いてきたし,同じ時代においても,信条や視線の違いによって,異なったナイチンゲールの姿が映し出されてきた.当初は傷病兵を見守る「灯を持った婦人」として女性らしい献身とキリスト教精神の発露の象徴とされ,行政学者も,統計学者も,フェミニストも,それぞれの立場からのナイチンゲールを描いてきた.

お知らせ

Ⅰ 第33回健康学習研修会「行動変容,意識変容の基本となるコミュニケーション技法の習得」 フリーアクセス

ページ範囲:P.423 - P.423

2014年7月3日(木)9時15分~4日(金)17時15分

テーマ:元気・やる気が生まれるコミュニケーション法とは

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投稿規定 フリーアクセス

ページ範囲:P.438 - P.438

次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.439 - P.439

あとがき フリーアクセス

著者: 成田友代

ページ範囲:P.440 - P.440

 「DSM」(米国精神医学会による精神障害の分類と診断)第5版への改訂により,今までの広汎性発達障害がASD(自閉症スペクトラム症)となり,診断基準も大きく変更されました.発達障害に関する診断分類はなかなか複雑で,改訂の度に頭を悩ませている読者も少なくないのではないかと思います.冒頭,市川宏伸先生から,診断分類について体系的にご解説いただき,理解が深まりましたが,その一方で,発達障害の診断をクリアカットにすることは困難であり,診断を受けていなくても,支援が必要と判断される人に支援を開始するという先生のお話が印象に残りました.我々関係者にとって大切なのは,発達障害の特性を理解し,本人や家族,周囲の気づきを適切な支援につなげていくことであることを改めて認識いたしました.

 しかし,現実にはそうではない側面が課題となっているようです.平岩幹男先生から,「専門機関の悲劇(詳細は本文参照)」として,保健担当者にありがちな「早期発見に一生懸命,疑えば専門機関を紹介すればよい」という流れについてご指摘があり,まさに目から鱗が落ちる思いがいたしました.保健担当部署においては,様々な気づきを常にその先にある支援につなげていくことが重要であり,紹介をして支援が途切れてしまうことは目指すところではないはずです.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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