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特集 発達障害
幼少時期の発達障害とスクリーニング―早期発見と早期支援
著者: 平岩幹男1
所属機関: 1
ページ範囲:P.388 - P.391
文献購入ページに移動発達障害は最近医学の世界だけではなく社会的にも注目されるようになってきた概念で,平成17(2005)年4月に発達障害者支援法が施行され,支援が強調されている.この法律の中には第2条では以下のように定義づけられている.「第2条 この法律において『発達障害』とは,自閉症,アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害,学習障害,注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現するものとして政令で定めるものをいう」.この定義では疾患名や発症年齢を示してあるが,質的にどのようなものであるかは示されていない.そのため,筆者は「発達障害」は発達そのものの障害という考えではなく,「発達の途中で明らかになる行動やコミュニケーションなどの障害で根本的な治療はまだないが,適切な対応により社会生活上の困難は軽減される障害」と考えている.
また発達障害は,生活の中でいつも「障害」を表に出しているのではなく,状況によって障害が明らかになるという特徴がある.さらに障害一般に言えることであるが,「症状」があることだけではなく,その「症状」によって「社会生活上の困難」を来してはじめて障害として扱われる.したがって発達障害には症状によって社会生活上の困難が非常に強い中核群と,その何倍もいるかもしれない,いわばグレイゾーンと言える周辺群が存在する.こうしたこともあって,特に幼児期には診断が簡単ではないし,必ずしも適切に診断されているとは限らない.しかし適切な対応や療育によって発達障害を抱えた子どもたちの社会生活上の困難は多くの場合に減らすことができる.もちろんそれなりに時間はかかるし,すべての困難がなくせるというわけではない.しかしながら,単に様子を見るあるいは診断のみで終わっていることも多い現状を変え,それぞれの子どもたちの抱える困難に合った対応を行うことが欠かせない.これは幼児期から成人期まで基本的には同じである.
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