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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生78巻6号

2014年06月発行

文献概要

特別寄稿

ワクチンの生命は品質である

著者: 倉田毅12

所属機関: 1国際医療福祉大学塩谷病院中央検査部 2元国立感染症研究所

ページ範囲:P.416 - P.421

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はじめに

 ワクチンの生命は品質そのものである.最近導入された輸入ワクチン3種(小児用肺炎球菌ワクチン,ヒブワクチン,ヒトパピローマウイルスワクチン)は,多くの点で種々の重要な副作用の問題を発生させていることは否めない.それに加えて,多種ワクチン同時,あるいは極めて短い間隔での接種による被接種児における副作用・副反応が発生している.副作用・副反応はワクチンの質に起因する.

 言うまでもなく,ワクチンは感染症の予防・発症阻止の目的で用いられるものである.ワクチンは,国民の生命の安全を保障する極めて重要な医薬品である.他の医薬品が疾病の軽快,治療を目的として用いられるのに対して,ワクチンは,通常疾患を有しない小児,高齢者,あるいは全年齢層の健康人に接種されるので,特にワクチンの安全性と有効性が最大限に重視されなければならない.その意味では,近年突如輸入された外国ワクチンの副作用などの発生は極めて問題であり,かつて日本脳炎ワクチンで急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis;ADEM)類似の1例でワクチンを中止し,切り替えられるまで6年かけた対応に比べればあまりにも安易な導入であると思われる.

 筆者は,わが国の実験室におけるワクチンの品質管理を行っている国立感染症研究所において,(全世界の重篤感染症の感染病理学的研究のかたわら)1985年10月から2006年3月まで,その仕事に携わってきた.その間1999年から7年間は,WHOの「生物製剤標準化委員会(Expert Committee on Biological Standardization;ECBS)」の委員として多くの製剤がどのようにしてWHOで検討されていくかをみてきたつもりである.

 ワクチンはWHOが認めるかどうかではなく,各国が自国の品質管理の中で安全性,有効性を決めていくべきものであることが,まず大前提にあることを忘れてはならない.どのワクチンも,同じ名がついたものの内容がすべて同じではない.これは生物系の一連の実験を自ら実施してみればすぐ分かることである.品質について言うとき,製造元,許認可条件がそれぞれのワクチンごとに,また国ごとに異なっているのに,国際協調,国際調和,国際標準という論をもってあたかも同じ用途(特定の疾病の)ならどのワクチンも同じということには全くならないということを十分理解しなければならない.

 新規導入ワクチンについてどのような治験が国内でなされ,また議論されてきたかは分からないが導入後に小児用肺炎球菌ワクチン,またはヘモフィルスインフルエンザ菌b型(ヒブ)(haemophilus influenzae type B;Hib)ワクチンを含むワクチン同時接種後の死亡例が7人報告され,その検証結果についても,乳幼児突然死症候群(sudden infant death syndrome;SIDS)という被接種者の個人の責任にされてしまい,基本的な原点に戻った検討がなされなかったことは極めて遺憾である.これについては後述する.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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