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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生78巻7号

2014年07月発行

特集 行為への依存症―スマホ・ネット・ギャンブル

行為への依存とは何か

著者: 渡辺登1

所属機関: 1日本大学医学部精神医学分野

ページ範囲:P.446 - P.451

文献概要

はじめに

 依存とは人間が生まれつき持っている,こころの安心や肉体の満足を求める行為である1).私たちは,底知れぬさびしさに耐えられなくなった時,もっぱら人にしがみつく.家族や友人から安心を受けとれず安心感の乏しい人に,しがみつく依存は認められやすい.対人関係依存である.

 もたれかかる依存は相手の立場を考えない.自分の安心を得るために,相手をどのように利用するかをひそかに計算している.しかし他人とのかけ引きが苦手な人も多い.そこで身近な行為に頼って,自分の不快な感情を処理しようと試みる.ギャンブルやスマホ,インターネット,オンラインゲーム,浪費,恋愛など行為の過程に依存すれば快感を得られ,さらに不快な感情を招く現実から目をそらせる.行為(プロセスとも呼ぶ)依存である.

 人とのかけ引きや行為を続けるのが億劫な人が,アルコールやドラッグ,ニコチンなどを体内にとりこめば,快感をたちまち手にすることができる.安心の乏しい人は,それらを体内にとり入れた時の快感が忘れられなくなり,手軽な手段に頼りきってしまう.物質依存である2,3)

 さびしさを癒す適切な手段をとれば,ほっとした気持ちになるだろう.ところが他人を操作して安心を手にしようとしたり,ドラッグや行為で不快を除いたりする自分本位のしがみつきでは,本当の安心は得られない.つかの間の快感を覚えるだけだ.望ましくない行為とわかっていても,やめられない.安易な生き方が身について手放せなくなり,生活に支障を来せば依存症と診断される.

参考文献

1)渡辺登:よい依存,悪い依存.朝日選書,2002
2)渡辺登:薬物依存―ドラッグを求める心と脳.朝倉喬司,他:こころの中の深い森.pp121-165,日本実業出版社,1997
3)渡辺登:「依存」する心理.日本実業出版社,1997
4)A・W・シェフ(著),斎藤学(監訳):嗜癖する社会.誠信書房,1993

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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