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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生78巻7号

2014年07月発行

文献概要

投稿・活動レポート

開発途上国における喀痰塗抹陰性肺結核患者の確実な診断を目指して―胸部X線検査の精度管理の取り組み

著者: 伊達卓二1 大角晃弘2

所属機関: 1保健医療経営大学 2公益財団法人結核予防会結核研究所 臨床・疫学部

ページ範囲:P.485 - P.489

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はじめに

 呼吸器症状を有する患者に対する画像診断として,通常,最初に行われるのは胸部X線検査であり,世界で最も広く行われているX線を使った検査である.胸部X線検査の特徴は,検査時間が比較的短く,感染症など病変の形態と位置をフィルム上に描出できることである.さらに,結核菌を排菌していない早期感染時の患者を発見できる可能性がある一方,結核菌の感染特定はできない.日本では,X線撮影装置を搭載した検診車が1940年に開発された経緯から,喀痰検査を主な診断手段とする多くの開発途上国(以下,途上国)とは歴史的背景が異なる.

 胸部X線検査の精度を左右するのは,医師の読影能力だけでなく,X線写真の画質の優劣もある.途上国で行われる胸部X線写真は,さまざまな理由から,医師が読影できないほど高い濃度の写真,肺野がごく一部しか写っていない写真,焦点がずれたものなど,胸部疾患の診断ツールとしては不適当と考えられる胸部X線写真が少なからずあり,筆者ら1)はその撮影技術改善の必要性を以前より指摘してきた.この問題解決の糸口として,世界結核支援技術連盟(Tuberculosis Coalition for Technical Assistance;TBCTA)の支援を受け,途上国での胸部X線検査精度管理のためのハンドブックを2008年に作成し,これをテキストに用いた放射線技師対象の研修をカンボジアとケニアで実施した.さらにその後,フィリピンでオペレーショナル・リサーチとして同様の研修を実施し,放射線技師の胸部X線写真撮影技術向上に有用であることを報告した.

 本稿では,途上国における喀痰塗抹陰性肺結核患者の確実な発見を目指した取り組みについて報告する.

参考文献

1)伊達卓二,他:医療協力における自動現像機導入の妥当性―ネパール結核対策プロジェクトでの自動現像機による放射線画像診断の一例.国際協力研究15(2):65-72, 1999
2)WHO Stop TB Department:Global Tuberculosis Report 2013. WHO, Geneva, ix, 2013 Available at[http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/91355/1/9789241564656_eng.pdf]
3)WHO Stop TB Department:Implementing The WHO Stop TB Strategy:A handbook for national tuberculosis control programmes. WHO, Geneva, p13, 2008 Available at[http://whqlibdoc.who.int/publications/2008/9789241546676_eng.pdf]
4)WHO:The global plan to stop TB, 2006-2015:Actions for life towards a world free of tuberculosis. WHO, Geneva, p39, 2006 Available at[http://www.stoptb.org/assets/documents/global/plan/GlobalPlanFinal.pdf]
5)Colebunders R, et al:A review of the diagnosis and treatment of smear-negative pulmonary tuberculosis. Int J Tuberc Lung Dis 4(2):97-107, 2000
6)WHO Stop TB Department:Improving the diagnosis and treatment of smear-negative pulmonary and extrapulmonary tuberculosis among adults and adolescents:Recommendations for HIV-prevalent and resource-constrained settings. WHO, Geneva, p6, 2006 Available at[http://www.who.int/tb/publications/2006/tbhiv_recommendations.pdf]
7)Date T, et al:Handbook for district hospitals in resource constrained settings on Quality Assurance of Chest Radiography:for better TB control and health system strengthening. TBCTA, 2008 Available at[http://pdf.usaid.gov/pdf_docs/pnadp465.pdf]
8)Date T, et al:A breakthrough for the quality assurance of chest radiography with a simple assessment tool, Journal of International Health 27(1):79-86, 2012
9)伊達潤子:カンボジア医療技術者育成プロジェクトでの活動.画像通信30(2):50-53, 2007
10)大角晃弘,他:NGO結核研究所・結核予防会フィリピンマニラ事務所開設,複十字321:18, 2008 Available at[http://www.jata.or.jp/rit/rj/321p19.pdf]
11)Ohkado A, et al:Effectiveness of a training course on the quality assurance of chest radiography in the Philippines. Int J Tuberc Lung Dis 16(3):379-383, 2012 Available at[http://dx.doi.org/10.5588/ijtld.11.0436]

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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