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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生78巻8号

2014年08月発行

文献概要

特集 公害・環境問題の変貌と新展開

環境化学物質の次世代影響―出生コーホート研究による成果と今後の課題

著者: 岸玲子1

所属機関: 1北海道大学環境健康科学研究教育センター

ページ範囲:P.547 - P.552

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次世代影響が注目される背景

 環境化学物質が子どもの健康に与える影響,とりわけ胎児期曝露の影響に世界的な関心が高まっている.その背景として,1996年発刊のColbornらによる「奪われし未来(Our Stolen Future)」で,環境化学物質による内分泌かく乱作用は胎児期が最も感受性が高いことが指摘されたことが挙げられる.翌1997年にはG8環境大臣会合において子どもの環境保健は最優先事項であるとされ,種々の対策の実施が緊急の課題として「マイアミ宣言」が採択された.

 一方,医学的には“疾病の胎児期起源説(Fetal origins hypothesis)”が近年,提唱されている.胎児期の低栄養などによって成人期の循環器疾患やⅡ型糖尿病などに罹患しやすくなるとされ,その理由は飢餓など過酷な環境に適応する形で胎児が「倹約型」体質にプログラミングされ,それが小児期以降の肥満や成人期疾患につながるという仮説が出された.この考え方はその後,「Developmental Origins of Health and Diseases(DOHaD)」として生涯を通じたライフコースアプローチに関心が向けられるようになった1)

参考文献

1)岸玲子:環境リスクによる潜在的な健康障害の解明―特に次世代影響に関する研究.日本医師会雑誌138(10):56-59, 2010
2)Kishi R, et al:Cohort Profile:The Hokkaido Study on Environment and Children's Health in Japan. Int J Epidemiol 40(3):611-618, 2011
3)Kishi R, et al:Ten Years of Progress in the Hokkaido Birth Cohort Study on Environment and Children's Health:Cohort Profile-Updated 2013. Environ Health Prev Med 18(6):429-450, 2013
4)Kishi R, et al:Exploiting gene-environment interaction to detect adverse health effects of environmental chemicals on the next generation. Basic Clin Pharmacol Toxicol 102(2):191-203, 2008
5)Okada E et al:Temporal trends of perfluoroalkyl acids in plasma samples of pregnant women in Hokkaido, Japan, 2003-2011. Environ Int 60:89-96, 2013
6)野々村克也,他:平成24年度環境研究総合推進費「妊娠中及び胎児期における内分泌攪乱物質が性分化および性腺機能に及ぼす影響について」による研究委託業務 中間研究等成果報告書.平成25年3月,2013
7)Yila TA, et al:Effects of Maternal 5, 10-Methylenetetrahydrofolate Reductase C677T and A1298C Polymorphisms and Tobacco Smoking on Infant Birth Weight in a Japanese Population. J Epidemiol 22(2):91-102, 2012
8)岸玲子,他:前向きコーホート研究に基づく先天異常,免疫アレルギーおよび小児発達障害のリスク評果と環境化学物質に対する遺伝的感受性の解明 厚生労働科学研究費補助金 化学物質リスク研究事業 平成25年度総括・分担研究報告.平成26年3月,2014
9)喜多歳子,他:親の収入と42か月児の知的能力;環境とこどもの健康に関する前向きコホート研究の結果.日本公衆衛生誌60(10)特別付録,p388,2013
10)ENRIECO:Environmental Health Risks in European Birth Cohorts. http://www.enrieco.org/.
11)BiCCA:Birth Cohort Consortium of Asia. http://www.bicca.org/.
12)Suzuki K, et al:Neurobehavioral effects of prenatal exposure to methylmercury and PCBs, and seafood intake:neonatal behavioral assessment scale results of Tohoku study of child development. Environ Res 110(7):699-704, 2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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