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特集 超高齢社会―大都市の高齢者支援の課題
文献概要
高齢化する都市のために,住宅政策をどのように構築すればよいのか.住まいに関する高齢層の最大の特徴は,持ち家率が高い点である1).この持ち家は,住む場所を物的に安定させ,さらに経済安定をもたらすと考えられている.高齢者の住まいと経済が安定してはじめて,保健・医療・社会保障などが有効に機能し,社会の落ち着きが得られる.戦後,日本の政府は,住宅所有の普及をめざし,持ち家促進の住宅政策を展開した.この枠組みのもとで,多数の一戸建て住宅が郊外に建ち並び,市街地には分譲集合住宅が増大した.高齢化の段階に入った都市は,持ち家の大量のストックを有し,“不動産都市”としての側面をもつ.しかし,住宅所有に根ざす社会安定が続くとは限らない.以下では,持ち家中心社会の実態を検討し,高齢化都市における住宅政策の課題を考える.
参考文献
1)Hirayama Y:The role of home ownership in Japan's aged society. Journal of Housing and the Built Environment 25(2):175-191, 2010
2)平山洋介:都市の条件―住まい,人生,社会持続.NTT出版,2011
3)荒川匡史:高齢者保有資産の現状と相続―高齢者内で循環する使われない資産.Life Design Report 150:16-23, 2003
4)Kemp PA (ed):Housing Allowances in Comparative Perspective. Bristol:Policy Press, 2007
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