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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生79巻12号

2015年12月発行

文献概要

特集 進めよう! COPD対策

在宅酸素療法を受けている慢性呼吸器病患者の災害脆弱性と対応策

著者: 藤本圭作1

所属機関: 1信州大学医学部保健学科 検査技術科学専攻 生体情報検査学領域

ページ範囲:P.855 - P.859

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慢性呼吸器疾患患者の災害時脆弱性
 先の東日本大震災においては,在宅酸素療法(home oxygen therapy;HOT)を受けている患者が,酸素機器が破損や停電で使用できず,多くのHOT患者(HOT難民)が医療機関に酸素を求めて殺到しパニックになったことは記憶に新しい1).また,慢性疾患患者の薬が供給できず悪化を来した例も多い.当時,HOT患者の酸素供給が断たれることの重大性について社会的な認識はなく,患者会の訴えによりようやく認識されることとなった2).また,震災による津波,震災直後の劣悪な居住環境,大気汚染,薬の供給停止は肺炎の発症,慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease;COPD)および喘息の増悪につながった3〜5).さらに日常生活動作(activities of daily living;ADL)の減少や低栄養も肺炎の増加に拍車をかけた6).後方連携の病院に搬送された患者の約3分の1が呼吸器疾患であったと言われている.このように災害時には慢性呼吸器疾患,特に全国に推計17万人いるとされるHOT患者の災害時脆弱性が明らかとなった.われわれは東日本大震災の教訓を生かして災害時対策を徹底する必要がある.

参考文献

1)Kobayashi S, et al:Home oxygen therapy during natural disasters:lessons from the great East Japan earthquake. Eur Respir J 39(4):1047-1048, 2012
2)遠山和子:COPDの啓蒙について—日本呼吸器疾患患者団体連合会10年の取り組みと展望.日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌24:101s, 2014
3)Ohkouchi S, et al:Deterioration in regional health status after the acute phase of a great disaster:respiratory physicians' experiences of the Great East Japan Earthquake. Respir Investig 51(2):50-55, 2013
4)Yamanda S, et al:The impact of the 2011 Great East Japan Earthquake on hospitalisation for respiratory disease in a rapidly aging society:a retrospective descriptive and cross-sectional study at the disaster base hospital in Ishinomaki. BMJ Open 3(1), 2013, pii:e000865. doi:10.1136/bmjopen-2012-000865
5)木田厚瑞,藤本圭作,他:大災害時に備え慢性重症の呼吸器疾患の対応策をどのように構築するか(座談会).呼吸33(3):222-233, 2014
6)Kobayashi S, et al. The impact of a large-scale natural disaster on patients with chronic obstructive pulmonary disease:The aftermath of the 2011 Great East Japan Earthquake. Respir Investig 51(1):17-23, 2013
7)藤本圭作:松本における在宅酸素療法患者の緊急時・災害時の対応に関する問題.厚生労働科学研究費補助金 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業 災害時及び災害に備えた慢性閉塞性肺疾患等の生活習慣病患者の災害脆弱性に関する研究 平成25年度総括・分担研究報告書,pp.22-26, 2014
8)Sato K, et al:Questionnaire survey on the continuity of home oxygen therapy after a disaster with power outages. Respir Investig 51(1):9-16, 2013
9)藤本圭作,酒井志野:自治体による災害時要援護者の支援体制の整備状況および松本市の実態調査.松本における在宅酸素療法患者の緊急時・災害時の対応に関する問題.厚生労働科学研究費補助金 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業 災害時及び災害に備えた慢性閉塞性肺疾患等の生活習慣病患者の災害脆弱性に関する研究 平成24年度総括・分担研究報告書,pp18-26, 2013
10)松本市:災害時医療救護活動マニュアル第2版.平成23年3月 https://www.city.matsumoto.nagano.jp/kurasi/bosai/taisaku/iryo.html
11)松本広域圏救急・災害医療協議会:松本広域圏災害時医療連携指針—震度6弱以上で適用.平成25年8月

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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