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デンマーク国における風力発電事情
著者: 森松嘉孝1 久保達彦2 藤野善久2 原邦夫3 石竹達也1
所属機関: 1久留米大学医学部環境医学講座 2産業医科大学公衆衛生学講座 3帝京大学大学院公衆衛生学研究科
ページ範囲:P.189 - P.192
文献購入ページに移動世界の風力発電総設備容量は,毎年,前年比10〜30%超の伸び率で増加している1).デンマークは早くから原子力発電施設建設予定地を風力発電パークへと切り替えることにより,現在,エネルギー供給源として風力発電の占める割合が最も高い国である.デンマークの「エネルギー戦略2050」は,2050年までに化石燃料から脱却し,再生可能エネルギーへの転換をめざす大胆なものであり,「2020年に向けたグリーンエネルギーの加速」では,2020年までに総電力消費量の約50%を風力発電でまかなうエネルギー政策目標を掲げた2).このため,最近のデンマークでは風力発電施設の大型化が進んでいる.
米国オレゴン州における先行研究3)では,風力発電施設からの音によって深刻なアノイアンス(騒音による不快感やイライラ感),睡眠妨害,生活の質の低下が示され,長期にわたる健康影響の多くは,夜間の風力施設からの音による睡眠妨害が原因と考えられたが,疫学的研究,振幅変調,室内の低周波音影響についての証拠は不十分とされている.また,米国マサチューセッツ州の報告4)では,風力発電の騒音が,アノイアンスや睡眠中断とは別に直接的な健康問題や病気を引き起こす根拠はない,としている.本邦においても低周波音に係る苦情件数は増加しており5),風力発電設備の導入量が年々増加している6)ことから,今後は健康被害の訴えが増加する可能性があるが,現時点ではその因果関係は明らかでない.
今回われわれは,デンマーク国における風力発電事情と健康影響への対策を報告するとともに,わが国が参考とすべき点を検討する.
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