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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生79巻4号

2015年04月発行

特集 危険ドラッグ対策

世界各国の動向を踏まえた日本の危険ドラッグ対策

著者: 小森榮1

所属機関: 1小森法律事務所

ページ範囲:P.245 - P.249

文献概要

世界規模の危険ドラッグ問題
1.際限のないイタチごっこ
 厳しい規制下に置かれる古典的な薬物に代わって,法規制の及ばない新たな合成薬物の台頭が,いま世界を悩ませている.
 こうした薬物は1970年代末から出回り始めたが,今日的な意味での危険ドラッグが本格的に広まったのは1990年代以降である.その原動力となったといわれるのは,米国の薬理学者シュルギンが著した「PiHKAL1)」「TiHKAL2)」の2冊で,膨大なフェネチルアミン系とトリプタミン系の精神作用物質がまとめられている.これに触発されて,メチロン,2C-I,AMT,5-MeO-DIPTなど新たな薬物が「合法」と称して次々に登場し,世界的な危険ドラッグの第一波となったのである.

参考文献

1)Shulgin A & Shulgin A “PiHKAL:A Chemical Love Story”, Transform Press, 1991.フェネチルアミン系物質179種類について,その合成方法から使用法までを「小説」として記載している.
2)Shulgin A & Shulgin A “TiHKAL:The Continuation”, Transform Press, 1997.トリプタミン系物質55種類について,その合成方法から作用,使用法までをまとめている.
3)厚生労働省・第1回脱法ドラッグ対策のあり方に関する検討会・資料3「全国実態調査結果について」(2005年)
4)Controlled Substances Analogue Enforcement Act(CSA)of 1986
5)21 U.S. Codeでは(ⅰ)その化学構造がスケジュールⅠ又はⅡで規制される物質の化学構造と実質的に同様であるか,(ⅱ)その物質が中枢神経系にもたらす興奮,抑制,幻覚の作用が,スケジュールⅠ又はⅡで規制される物質が中枢神経系に及ぼす興奮,抑制,幻覚作用と実質的に同等又はそれ以上であるものを規制薬物のアナログと定義している(§802).
6)21 U.S. Code§813
7)詳しくは,小森榮『あぶないハーブ』pp74-75,三一書房,2012
8)King LA “The Misuse of Drugs Act:A Guide for Forensic Scientists”, pp2-3, Royal Society of Chemistry, 2003
9)詳しくは,前掲書7)pp75-78
10)2013年2月20日,合成カンナビノイドのうちナフトイルインドール群を包括的に指定する省令が公布され,772物質が指定薬物に指定された.
11)2013年12月13日,合成カチノン群を包括的に指定する省令が公布され,474物質が指定薬物に指定された.
12)21 U.S.Code §811(h)
13)医薬品医療機器法,第2条第15項
14)薬事法規研究会『逐条解説薬事法[5訂版]第1部』p246,ぎょうせい,2012
15)藤井基之『危険ドラッグとの戦い』pp68-69,薬事日報社,2014
16)前掲書15)p79によると,藤井議員の質問主意書(2014年3月6日)に対して,危険ドラッグ販売店に対する検査等命令や立入検査について,厚生労働省は「厚生労働省が行った事例はなく,都道府県等が行った事例については具体的に承知しておらず,お答えすることは困難である」と回答している.
17)厚生労働省「薬物乱用の現状と対策」2012年10月
18)Hague International Opium Convention of 1912
19)ドラッグ・コートの全体像は,Nolan Jr JL(著)“Reinventing Judtice:The American Drug Court Movement”/小沼杏坪(監),小森榮,妹尾英一(訳)『ドラッグ・コート—アメリカ刑事司法の再編』丸善プラネット,2006
20)医薬品医療機器法,第76条の11
21)医薬品医療機器法,第76条の12

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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