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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生79巻5号

2015年05月発行

文献概要

特集 死因究明制度の現状と将来展望

日本の死因究明制度の課題—法学者の立場から

著者: 福島至12

所属機関: 1龍谷大学法科大学院 2龍谷大学矯正・保護総合センター

ページ範囲:P.316 - P.320

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はじめに—法律家の関わり
1.法律家と死因究明
 人が亡くなった原因が何であるのかについては,以前からも,裁判所において最終的に決定されることがらではあった.民事訴訟においてと,刑事訴訟においてと,である.
a) 民事訴訟は,基本的に私人間の争いに関する訴訟である.例えば,医療過誤を理由に遺族が損害賠償を求める訴えを起こした場合で,その中で死因が問題となりうる.
b) 刑事訴訟は,国家機関である検察官が,被告人に対して刑罰を科すよう求める訴訟である.例えば,検察官が殺人罪で公訴提起した場合で,その中で死因が問題となりうる.
 しかしながら,訴訟を通じての死因究明には,大きな限界や制約がある.第一は,責任追及のための訴えや公訴が提起されなければ,始まらないことである.そもそも,遺族や検察官が,死因に不審を抱くことがなければ訴訟にはならない.第二に,訴訟には大きなハードルが存在する.特に民事訴訟では,時間や労力,資金などの点で大きな壁がある.いずれの訴訟にせよ,死亡直後の初期段階で,必要な情報収集(解剖など)が行われていないことも,訴訟を提起しにくくしている原因である.

参考文献

1)憲法13条「すべて国民は,個人として尊重される.生命,自由及び幸福追求に対する国民の権利については,公共の福祉に反しない限り,立法その他の国政の上で,最大の尊重を必要とする.」
2)憲法25条「すべて国民は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する.②国は,すべての生活部面について,社会福祉,社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない.」
3)Matthews P:Jervis on the Office and Duties of Coroners, 13th ed. Sweet & Maxwell, London, pp501-521, 2014. この他,Thomas L, et al:Inquests:a practitioner's guide, 3rd ed. Legal Action Group, London, pp373-467, 2014
4)原文は,Everyone's right to life shall be protected by law.和訳は「すべての者の生命に対する権利は,法律によって保護される.」である.
5)自由権規約6条1項「すべての人間は,生命に対する固有の権利を有する.この権利は,法律によって保護される.」
6)福島至(編著):法医鑑定と検死制度.日本評論社,p5, 2007
7)日本弁護士連合会:「死因究明等推進計画」に対する意見書.2014年8月21日

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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