公衆衛生79巻6号

2015年06月発行

特集 熱中症

熱中症をめぐる最近の動向と歴史的変遷

著者： 中井誠一¹

所属機関： ¹京都女子大学

ページ範囲：P.366 - P.372

　熱中症は，労働衛生上の問題として積極的な予防対策の取り組み，あるいは労働条件等の改善により一時は収束したかに見られた．しかし近年，夏季の暑熱環境の長期化に伴い，熱中症死亡数は過去に比して増加している．また，高齢者の熱中症死亡数が増加傾向であり，高齢者人口の増加と合わせて高温環境における健康問題として重要課題である^1〜3)．
　本稿では，熱中症死亡数の年次推移や熱中症の用語(熱射病，日射病など)および水分補給に関する問題など熱中症をめぐる最近の動向を解析し，熱中症予防との関連を考察したい．さらに，暑熱環境における健康生活に係る生活習慣の問題についても検討したい．

参考文献

1)中井誠一：高齢者における熱中症の発生実態．Geriat Med 46(6):583-587, 2008

2)中井誠一：熱中症の疫学．日本臨床70(6):934-939, 2012

3)中井誠一：熱中症の疫学．発汗学20(2):83-87, 2013

4)中井誠一，他：熱中症発生に関する疫学的検討—1990年-1994年の新聞記事にもとづく検討—．日生気誌33(2):71-77, 1996

5)中井誠一：熱中症死亡数と気象条件—日本における21年間の観察—．日生気誌30(4):169-177，1993

6)Nakai S, et al:Deaths from heat-stroke in Japan:1968-1994. Int J Biometeorol 43(3):124-127, 1999

7)新矢博美，他：乳幼児における熱中症死亡事故の発生実態．日生気誌47(3):s52, 2010

8)環境省：熱中症環境保健マニュアル　2014．2014

9)環境省：熱中症環境保健マニュアル　2006．2006

10)三浦豊彦：日本の高温労働—熱中症小史—．労働科学39(9):437-456, 1963

11)三浦守治：日射病ニ就テ．東京医学会雑誌3(15):22-25, 1889

12)飯島茂：暍病の定義と歴史．日本医事新報937:3035-3055, 1940

13)石川知福：暍病の原因と其の発症条件に就いて．日本医事新報937:3056-3059, 1940

14)勝木新次：労働者における熱中症，殊に其の予防に就いて．日本医事新報937:3062-3065, 1940

15)労働省：業務上疾病調査．1963-1978

16)労働省労働衛生課：熱中症を防ごう．労働衛生管理7(3):19-24，1996

17)吉田竜介：熱中症．臨床医18，増刊号：1214-1219, 1992

18)行岡秀和：温熱・寒冷による疾患．杉本恒明，他編：内科学　第9版．pp1969-1971，朝倉書店，2007

19)犬塚祥，他：熱射病．救急医学14(6):679-687, 1990

20)盛生倫夫，他：Heat stroke(熱射病)を見直そう．救急医学14(6):665-668, 1990

21)万木良平：運動時の体温障害．J J Sports Sci 2:444-451, 1983

22)森本武利：水分摂取と塩分バランス．臨床スポーツ医学4(10):1097-1103, 1987

23)森本武利，他：高熱，寒冷による疾患．最新内科学大系75．pp66-71, 中山書店, 1994

24)United States Army Medical Research ＆ Development Command:Heat Illness, A handbook for Medical Officers. 1991

25)川原貴，他編：スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック．日本体育協会，1994

26)三浦豊彦：徳川時代の熱中症予防と20世紀初頭の高温職場の食塩補給の歴史．労働科学62(8):375-389, 1986

27)Murphy, RJ and Ashe W F:Prevention of heat illness football players. JAMA 194(6):650-654, 1965

28)American College of Sports Medicine:Prevention of heat injuries during distance running. Med Sci Sports Exerc 7(1):ⅵ-ⅷ, 1975

29)中井誠一，他：日常生活で暴露される温度の年間変動．日生気誌42(3):s57, 2005