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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生79巻6号

2015年06月発行

文献概要

特集 熱中症

スポーツと熱中症

著者: 川原貴1

所属機関: 1国立スポーツ科学センター

ページ範囲:P.401 - P.404

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スポーツ活動と熱中症
 熱中症は暑熱環境における体温調節,循環調節,体液調節などの破綻によって生じる.深部体温は環境温度が変化しても一定に保たれるようになっている.これは体内での熱産生と体表面からの熱放散が体温調節中枢によって平衡を保っているからである.体内での熱産生は化学的代謝過程で生じ,肝,筋が主な場となる.熱放散は輻射,伝導,対流,蒸発といった物理的過程で行われるが,前三者の効率は皮膚温と環境温の差が関係し,蒸発には湿度が関係する.
 涼しい環境の運動では,熱放散はおもに輻射,伝導,対流によってなされるが,暑熱環境では,これらは効率が悪くなり,熱放散はもっぱら汗の蒸発に頼ることになる.したがって,暑熱環境の運動では発汗量が多くなり,水分補給をしないと脱水になりやすい.脱水では循環が悪くなるため熱放散の効率が低下し,うつ熱が生じやすくなる.湿度が高いと運動時の発汗量は多くなるが,蒸発して放熱に寄与する有効発汗量は減少し,熱中症になりやすい.

参考文献

1)環境省:熱中症環境保健マニュアル2014
2)日本救急医学会熱中症に関する委員会:本邦における熱中症の現状—Heatstroke STUDY2010最終報告.日本救急医学雑誌23(5):211-230, 2012
3)独立行政法人日本スポーツ振興センター:体育活動における熱中症予防.2014
4)川原貴,他:スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック.日本体育協会,2013
5)中井誠一,川原貴:学校管理下における熱中症死亡事故発生時の環境温度.臨床スポーツ医学13(5):562-566, 1996
6)菅原誠,他:夏のマラソン大会の救護体制—北海道マラソンの実態.臨床スポーツ医学26(3):263-271, 2009
7)American College of Sports Medicine:Prevention of thermal injuries during distance running. Sports Medicine Bulletin 19(3):8-12, 1984

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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