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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生79巻9号

2015年09月発行

雑誌目次

特集 医療情報の利活用

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ページ範囲:P.581 - P.581

 ICTの進展により医療現場は大きく変貌しています.カルテや看護記録は電子化され,さらに画像や臨床検査のデジタル化も進んでいます.レセプト請求も電子化されています.今後は,医療機関内での医療情報の利活用のみではなく,社会的な情報として利活用していくことが課題です.レセプト情報を利活用するデータヘルス事業がすでに進められています.がん登録などの疾病の発生状況や治療成績,予後の把握を行う全国的な体制づくりも進められています.
 医療情報を社会的に利活用するためには,医療機関や医療保険者の間に分散している情報を突合し,統一したデーターベースとすることが必要です.医療情報が一つに統合されることになると,個人情報の保護をどうするのか,また情報流出防止策をより万全なものとすることなどが求められます.ベネッセコーポレーションや社会保険庁などの大手の企業や国の機関から100万人以上の個人情報が流出し,情報管理体制は大丈夫なのか大きな懸念がもたれています.医療情報の利活用を進展させていくためには,個人情報保護に関わる法制度や情報管理体制を整えることが大きな課題となっています.

医療情報を活用した地域医療連携システム構築の現状と課題

著者: 藤森研司

ページ範囲:P.582 - P.586

 地域医療構想策定ガイドラインが作成され,各地域の医療需要の推計,人口構造の変化,医療提供体制の現状,患者受療動向などがデータ化され,一年半程度をかけて,二次医療圏ごとの地域医療構想が策定される1).本稿では医療情報を活用した地域医療連携システム構築,特に地域医療構想に向けて,何が分かっており,何が分かっていないか,何が足りないかを中心に現状と課題を述べる.

がん登録の整備とがん診療情報の利活用

著者: 西本寛

ページ範囲:P.587 - P.591

がん登録推進法の成立
 2013年12月13日に「がん登録等の推進に関する法律」(平成25年法律第111号,以下がん登録推進法)が臨時国会で成立,公布され,2016年1月には施行の予定となった.がん罹患を正確に把握することを主たる目的とする地域がん登録は1951年,東北大学の瀬木三雄先生が始められた宮城県の地域がん登録に始まり,関係者の努力もあって2012年から全都道府県で実施されるようになっていた.しかしながら,都道府県間をまたがった受診や住所移動の頻度の高いわが国では,都道府県単位での実施については課題が大きい状況にあった.
 地域がん登録での共通の項目は,2004年厚生労働科学研究(祖父江班)において標準登録票項目25項目(表1)が定められた.しかしながら,都道府県によっては,独自のシステム・ソフトウェアを用いたり,病理診断を併用したり,独自の取り組みをしており,これら先進的取り組みは利点もあったが,全国においてデータの共用等に課題を残していた.こうした背景から,現在の地域がん登録を発展させて,がん対策の情報基盤を確立することを目的として,上記の法律が成立したわけである.

滋賀県における全県下脳卒中登録の構築と今後の課題

著者: 高嶋直敬 ,   三浦克之 ,   喜多義邦 ,   野崎和彦

ページ範囲:P.593 - P.597

 地域における脳卒中発症の実態を明らかにするためには受診する可能性のある脳卒中診療医療機関を網羅する登録を実施する必要がある.地域脳卒中登録としては1985〜87年にWHO Monitoring of Trends and Determinants in Cardiovascular Disease(MONICA)プロジェクト1)が国際的に実施され,それと比較可能な日本の心筋梗塞,脳卒中の発症率,致命率,死亡率を把握する調査として1989年から1992年にかけて国内の複数の地域で実施された2〜4).しかし,これらの地域の多くではその後継続して発症率の調査が行われていない.現在,都道府県単位の脳卒中登録は秋田県の脳卒中発症者通報事業など10府県程度が実施しているが,ほとんどが届出制による登録である.また地域によっては悉皆性を向上させるために届出率の向上への取り組みと出張採録などの補充登録を組み合わせるなどの取り組みが行われている.
 そうした中,滋賀県では高い悉皆性を目指した脳卒中登録事業が2012年度から滋賀医科大学を核として開始された.本稿では滋賀県脳卒中登録事業構築の経緯と現状を述べ,全国規模の登録への課題について検討する.

レセプトデータを利活用したデータヘルス事業の現状と課題

著者: 岡本悦司

ページ範囲:P.598 - P.603

背景
 レセプトのオンライン化がほぼ達成され,専ら関心はその利活用に移っている.毎月,DVDやディスクに蓄積されるテラバイト単位のビッグデータを,では,どう活用するか,は保険者にとって未知の領域であり,新たなチャレンジでもある.保険者がレセプト情報をレセプト点検等の医療費チェック以外の目的に利用することに対しては最近まで強い抵抗があり,ましてやそれを保健指導や疾病管理に活用することに多くの保険者は躊躇するものがあった.
 そうした抵抗感を払拭し,データ活用を促進する目的で保健事業の実施指針が2014年4月より改正され,保健事業の実施計画(データヘルス計画)が開始された.2015年度より全ての健康保険組合がデータヘルス計画を策定し,事業主や産業医とも連携して推進されている1).健康保険組合には,データ分析を専門事業者に委託するところも多いが,市町村国保においては,国保データベース(KDB)という情報システムが配備されており,データヘルス計画推進のための有力なツールとして期待される.

母子保健・医療情報の利活用の現状と展望

著者: 山縣然太朗

ページ範囲:P.604 - P.608

 2015年は母子保健法施行から50年である.母子保健法は,「母性並びに乳児及び幼児の健康の保持及び増進を図るため,母子保健に関する原理を明らかにするとともに,母性並びに乳児及び幼児に対する保健指導,健康診査,医療その他の措置を講じ,もつて国民保健の向上に寄与することを目的と」して,妊娠届出,妊婦健康診査,乳幼児健康診査などを法的に措置している.これら健診のデータは個々の健康支援のため,すなわち,「個益」として活用されるために収集されたデータである.一方で,「公益」として,母子保健計画や健康増進計画策定の資料としても活用されてきた.また,健診データをはじめとする様々な母子保健に関連する情報の共有は連携のツールでもある.
 2015年4月に開始した健やか親子21(第2次)では,これらの健診データや学校保健のデータなどを利活用して,母子保健活動の基盤にすることが謳われている.本稿では,母子保健・医療の情報の利活用の現状と展望について概説する.

東京都における健康危機に備えた感染症関連情報の活用

著者: 渡瀬博俊

ページ範囲:P.609 - P.613

 昨今,人やものの往来がますます活発になるとともに,国境を越えて短期間に感染症が広がるリスクも高まっている.2014年8月には,およそ70年ぶりとなるデング熱の国内感染事例が都内の公園において確認された.また西アフリカで流行が拡大していたエボラ出血熱やMERS,H7N9鳥インフルエンザなど,わが国がこれまで経験したことのない感染症の日本国内への侵入が懸念されており,住民の健康と安全に対する脅威に備えた対策が求められている.
 感染症は,いつ,どこで発生するのかを予測することは困難であり,健康危機管理の強化を進めるうえでは,保健所,医療機関をはじめ関係機関において,日頃から感染症に対する情報の把握が必要と考えられる.現在,国においては感染症サーベイランスシステム(NESID)により,地方自治体とのネットワークが作られており,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に基づいて届出等が行われたデータの集計,公開が行われている.都においても同様に,都内の感染症の報告数や病原体情報,感染症トピックス等について,ホームページ上で公開し,感染症の流行状況や予防策等について周知を図っている1).都内には31カ所の保健所があり,各々の保健所では,集団感染や原因不明の感染症の発生等を含め,様々な感染症発生の連絡や報告を受けており,適宜適切な初動対応に努めている.各保健所が管内において感染症の対応を進める際,当該事例が地域で限局して発生しているものか,広域にわたる事例の一部であるか等,調査の中で総合的な判断が必要になる際には,公開されている感染症情報に基づいた流行状況の確認に加えて,都内の感染症の発生状況をモニタリングしている都庁感染症対策課,東京都健康安全研究センター(地方衛生研究所)疫学情報室等,感染症に係る関係機関の間で,地域の感染症情報を素早く共有し,感染症拡大防止に必要な迅速な対応や連携を図ることが重要である.

日本における医療ビッグデータの利活用の現状と課題

著者: 山本隆一

ページ範囲:P.614 - P.618

 日本は医療の情報化自体は先進的であったし,現在でも情報システムの導入率では世界の最高水準にある.しかし,進められてきた情報化の目的は,事務処理の合理化が主体であり,情報を公益目的に利用する二次利用の面においては遅れていたと言わざるを得ない.しかし最近になって,わが国にも大規模な医療健康情報データベースが構築されるようになり,利活用も進められている.一定の進捗はあるものの,課題も存在する.本稿では「高齢者の医療の確保に関する法律」に基づいて作成されたレセプトおよび特定健診・保健指導のデータベースを中心に現状を概観するとともに,残された課題について論ずる.

イギリスにおける医療情報の活用の課題と展望

著者: 堀真奈美

ページ範囲:P.619 - P.623

 患者の消費者意識の向上やIT技術の高度化を背景に,医療情報への社会的ニーズが急速に高まっている.日本では,医療機関がウェブサイト等を通じて自らの医療機関や治療に関する情報提供を行うのが一般的になりつつあるが,複数機関間で比較可能な系統的な情報とは必ずしもなっていない.ここ数年は,医療の効率化と質の向上,安全性の確保を実現する手段として,医療情報の利活用に注目が集まるようになってきたところである.
 一方,本稿の考察対象となるイギリスは,国営の医療提供体制であることから,国の公共投資によって医療情報の利活用が進められている.施設ごとの治療までの待機期間や施設の清潔さ,スタッフの労働環境,財政状態,患者への応答度,手術後の死亡率など多様な情報が他の医療機関と比較可能な形で入手可能となっている.また,EBM(科学的根拠に基づく医療)の推進がはかられており,医療知識や医学に関する情報の蓄積,公開も日本以上に進んでいる.

視点

アルコール対策におけるリーダーシップ—世界,日本,そして地方における動向

著者: 神田秀幸

ページ範囲:P.578 - P.579

 アルコール対策に関して,世界や日本,そして地方が大きく動き出してきた.アルコール対策は,単なる個人の嗜好行動として個人レベルの問題にとどめず,健康への影響や社会への負担から,社会全体として取り組んでいく時代に確実に進んでいる.これはたばこ対策で社会の認識・対応が大きく変化したのと同様な動きであり,これから広く浸透していくと思われる.アルコール対策の実現にあたっては,多くのリーダーシップが関わり,対策の推進に寄与している.本稿では,アルコール対策の世界・日本・地方の動きを紹介しながら,アルコール対策の今後の展望について紹介する.

寄稿

高齢者就労に関する先行研究 その2—高齢者就労支援のあり方の検討

著者: 南潮 ,   藤原佳典

ページ範囲:P.625 - P.628

 日本におけるこれまでの高齢者就労支援の主流はシルバー人材センターによるものであり,第6期介護保険事業計画の中でも高齢者の日常生活支援の担い手として期待されている.シルバー人材センターが仲介する就業は高齢者福祉の一環として取り組まれてきた施策(福祉型就労)であり,労働者は雇用主との直接の雇用関係を持たない.これは生計に必要な賃金を得るための労働政策系列の就労(稼得型就労)と区別されており,「就労」でなく「就業」という表現を用いることが多い.原則60歳以上を対象とし,活動理念として社会参加が挙げられ,地域社会の協力と支持を得ながら,雇用主にも市場原理だけでなく高齢者就業の趣旨への賛同を求めるものである.2013年度の統計では全国に1300団体,会員数は約73万人が参加しているが,日本最大の高齢者就労支援ネットワークといえる.しかし2009年のピーク時会員数約79万人からすると,現在会員数が徐々に減少傾向にあり,その原因についての考察が期待されている.本稿ではこうした状況を鑑み,日本国内の高齢者就労支援の現況について明らかにするため,先行研究のレビューを行った1)

連載 リレー連載・列島ランナー・78

「たば風」の町から

著者: 原田智史

ページ範囲:P.629 - P.631

 はじめまして.私は北海道で一番西にある保健所である江差(えさし)保健所に勤務しています.当所は「南檜山」二次医療圏の5町を管轄し,管内人口は約2万5千人弱(2015年3月末現在:住基ネットにおける参考値)となっています.管内5町は,次のとおりです.かつて「にしん」の群来(くき)にわき,「江差の5月は江戸にもない」といわれるほど繁栄し,民謡の「江差追分」発祥の地である江差町.道内で最も早くから和人が居住していた地の一つであることを示す勝山館などの遺跡が数多く残る上ノ国町.戊辰戦争の遺構を残し,メークインの一大産地である厚沢部町.「縁桂」と呼ばれる桂の巨木があり,沖合で漁獲したスケトウダラからとれる高品質なたらこで名をはせる乙部町.そして,北海道南西沖地震による津波被害から復興し,ウニやアワビなどの海産物や島の人情が旅人を魅了する奥尻町.このように,個性あふれる町々となっています.

基礎から学ぶ楽しい保健統計・12

オッズ比

著者: 中村好一

ページ範囲:P.632 - P.636

point
1.2×2表の2つの要因の関連の強さを示す指標としてオッズ比がある.
2.オッズ比の推定方法(95%信頼区間算出方法)は複数あるが,1つだけを使えれば良い.
3.対応のある2×2表のオッズ比の算出方法は,推定方法も含めて通常のものとは異なる.
4.交絡因子の制御のために複数の2×2表の併合を行うためにマンテル・ヘンツェルの方法を用いる.

[講座]子どもを取り巻く環境と健康・7

喫煙,受動喫煙による児への影響—遺伝的ハイリスク群を含む

著者: 佐々木成子 ,   小林澄貴 ,   岸玲子

ページ範囲:P.637 - P.643

 喫煙は,がん,心疾患,呼吸器疾患や糖尿病など,様々な疾病を引き起こす最大の危険因子であるが,妊娠中の母親が喫煙すると,流死産や低出生体重(LBW),乳幼児突然死症候群(SIDS)など,子どもの健康に大きな影響を及ぼす.中でも,LBWは成人期における高血圧,糖尿病,循環器疾患等のリスクを高める危険因子の一つである.また,胎児期のみならず,乳幼児期など発達初期においても受動喫煙の影響は大きく,成人してからの疾病や健康に影響を与える要因となっている.近年,薬物代謝に関わる遺伝子多型により疾患に対する個体感受性が異なることが明らかとなり,喫煙の場合も同じ曝露レベルであっても感受性の高い集団がいることが示唆されていることから受動喫煙対策を急ぐ必要がある.

予防と臨床のはざまで

第31回国際産業衛生学会参加ダイジェスト(1)—重要性増す職域ヘルスプロモーション

著者: 福田洋

ページ範囲:P.644 - P.644

 5月31日〜6月5日まで,韓国にて,第31回国際産業衛生学会(ICOH)が開催されました(http://www.icoh2015.org/).アジア開催は日本(1969年)に次いで2度目,折しもMERS騒動の最中でしたが参加は3200人を超え,産業医学発祥の地で開催されたミラノ大会(2006年)を上回る参加人数となりました.テーマは“Global Harmony for Occupational Health:Bridge the World”.グローバル化が進む中,産業保健分野では健康格差の拡大,労働者の高齢化,社会心理ストレスの増大など,国際的に共通する多くの課題があります.本学会では,国際的な議論と良好実践の共有から,これらに橋を架けすべての働く人に産業保健サービスを届けたいという思いが込められているのでしょう.初日のオープニングセレモニーでは,理事長の小木和孝先生のopening remarkからはじまり,WHO(世界保健機構),ILO(国際労働機関),IEA(人間工学国際連盟),IOHA(国際衛生管理者連盟),ISSA(国際社会保障協会)などの関係機関から次々にお祝いの言葉や謝辞が述べられました.会期中のプログラムは,午前に基調講演と,コーヒーブレイクを挟んでさらに複数の準基調講演が続きました.午後はミニシンポジウム,口演,科学分科会ミーティングなどが目白押しで,夕方のSocial Programも充実していました.
 今回印象的だったのは,以前までと比べて明らかにヘルスプロモーション系のセッションが多かったことです.9年前の2006年のミラノ大会(100周年記念)では,ヘルスプロモーションに関する基調講演は1つでしたが,今回は少なくとも3つの基調講演と5つの準基調講演が直接・間接的に職域ヘルスプロモーションをテーマにしたものでした.Dr.Ivan Ivanov(WHO)は初日のオープニングセレモニーで,オーストラリアの労働者の96%が何らかのNCD(生活習慣病)を持ち,フィリピンの労働者では高血圧が2番目の医学的課題であると述べ,働く人の健康を守る場としての職域の重要性を強調しました.2日目,Dr.Shyam Pingle(IBM,インド)は,“Achieving Occupational Health through Workplace Wellness”の中で,産業保健のターゲットは,職業病から人の疾病と健康へ影響する職業そのものへと変わりつつあるとし,経済的には中国やインドの成長含め,アジアのプレゼンスが増していることを示しました.「20歳代はお金がない,40歳代は時間がない,60歳代は健康がない」と世代別の支援の必要性についても触れ,健康と生産性の両立は可能であると述べました.日本のTHPもそうですが,健康増進の取り組みは一部の恵まれた企業にのみ可能であることも珍しくありません.途上国の参加者からは,予算が限られている場合の方策についての質問もありました.

映画の時間

—収容所から生還した妻と,変貌した妻に気づかない夫.再会が2人の心の痛手を炙り出す.—あの日のように抱きしめて

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.645 - P.645

 第二次世界大戦の終結から70年を迎え,わが国でも「日本のいちばん長い日」(原田眞人監督)など,戦争をテーマにした映画が公開されていますが,同じ敗戦国ドイツで製作された興味深い作品「あの日のように抱きしめて」をご紹介します.
 1945年5月,日本の敗戦に先立ってドイツは連合国に降伏します.その直後のことでしょう,ユダヤ人強制収容所から開放された主人公ネリーと,彼女を保護したユダヤ機関の弁護士レネが,車でドイツへ帰国するところから映画は始まります.連合国による検問.拷問のせいか,顔面を著しく損傷された主人公を確認しようとする連合国兵士.戦争が終結したとはいえ,まだ混乱のなかにある状況を瞬時に理解させる,巧みな演出です.

「公衆衛生」書評

—NPO法人西東京臨床糖尿病研究会,植木彬夫 監修 髙村宏,飯塚理恵,髙井尚美,土屋倫子,中野貴世 編—管理栄養士らによる糖尿病レシピ・資料の集大成 『糖尿病 作って食べて学べるレシピ—療養指導にすぐに使える糖尿病食レシピ集&資料集』 フリーアクセス

著者: 平尾紘一

ページ範囲:P.592 - P.592

 このたび,NPO法人西東京臨床糖尿病研究会に所属する管理栄養士さんが『糖尿病 作って食べて学べるレシピ』という本を出版しました.この管理栄養士さんたちは59施設の医療機関に出向いて,9,916件の栄養指導を行い,その活動の一環として,「糖尿病では美味しいものが食べられない」「食事療法はつらい」という考えを払拭しようと,2004年に「糖尿病食を作って食べて学ぶ会」(調理実習)を開始しました.そのメニューの中からいくつかを選び,集大成したものです.
 本を開くと,まずは春夏秋冬のメニューがそれぞれ6つ程度載せられていて,普通血糖が上昇して敬遠しがちなカレーライス,チャーハン,豚カツ,ドリアなどがたくさん載っています.それにチヂミなどの韓国料理,中華料理,西洋料理や正月料理がレシピの中にちりばめられています.デザートも豊富で(別項を設けてまとめて記載もしている),また野菜の不足しがちなうどんや魚料理にうまく野菜をマッチさせているなど感心します.また別項の中には副菜レシピがまとめられ,ほうれん草の和え物,キャベツの和え物など,極めて豊富なレシピが収載されています.しかも,だれでも簡単に真似できるように工夫されているのにも感心します.また,レシピに続く資料のページがとても大切で,糖尿病の食事の基本から,バランスのよい食事の考え方,血糖を上げる栄養素の違い,食べ方の工夫,肉や魚料理の工夫,見えない油脂,食物繊維のこと,塩分のこと,外食・中食のこと,お弁当の工夫,あると便利な食材,電子レンジの使い方など,資料のページだけでも圧巻な内容です.ぜひぜひ御一読を勧めます.

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次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.647 - P.647

あとがき/投稿申し込み書/著作財産権譲渡同意書 フリーアクセス

著者: 高鳥毛敏雄

ページ範囲:P.648 - P.648

 大学を卒業して2年余りがん登録の部署でがん登録情報を使った疫学研究をしていたことがあります.データ処理は大型計算機でないと無理な状況でした.現在はパソコンで何でもできる時代となり,隔世の思いがしています.
 今では病院の外来医師は,パソコンに向かって,検査をオーダーし,検査結果をパソコン画面で確認して診療するのが一般的な光景となっています.病棟では患者にバーコードが振られ,点滴薬や血液検査の検体にもバーコードをつけられ,情報機器で照合しながら作業するのが普通になっています.入院患者の病室における体温や血圧などのバイタル情報も病室にパソコンが持ち込まれ入力されています.穿った見方かもしれませんが,看護師の中にはパソコン入力に必要な情報収集に力を注いでいますが,他方で患者のアナログ的な情報収集する余裕がなくなっている人も増えているようにみえます.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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