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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生79巻9号

2015年09月発行

文献概要

特集 医療情報の利活用

東京都における健康危機に備えた感染症関連情報の活用

著者: 渡瀬博俊12

所属機関: 1東京都福祉保健局 健康安全部 感染症対策課 2現・東京都福祉保健局 保健政策部 疾病対策課

ページ範囲:P.609 - P.613

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 昨今,人やものの往来がますます活発になるとともに,国境を越えて短期間に感染症が広がるリスクも高まっている.2014年8月には,およそ70年ぶりとなるデング熱の国内感染事例が都内の公園において確認された.また西アフリカで流行が拡大していたエボラ出血熱やMERS,H7N9鳥インフルエンザなど,わが国がこれまで経験したことのない感染症の日本国内への侵入が懸念されており,住民の健康と安全に対する脅威に備えた対策が求められている.
 感染症は,いつ,どこで発生するのかを予測することは困難であり,健康危機管理の強化を進めるうえでは,保健所,医療機関をはじめ関係機関において,日頃から感染症に対する情報の把握が必要と考えられる.現在,国においては感染症サーベイランスシステム(NESID)により,地方自治体とのネットワークが作られており,「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に基づいて届出等が行われたデータの集計,公開が行われている.都においても同様に,都内の感染症の報告数や病原体情報,感染症トピックス等について,ホームページ上で公開し,感染症の流行状況や予防策等について周知を図っている1).都内には31カ所の保健所があり,各々の保健所では,集団感染や原因不明の感染症の発生等を含め,様々な感染症発生の連絡や報告を受けており,適宜適切な初動対応に努めている.各保健所が管内において感染症の対応を進める際,当該事例が地域で限局して発生しているものか,広域にわたる事例の一部であるか等,調査の中で総合的な判断が必要になる際には,公開されている感染症情報に基づいた流行状況の確認に加えて,都内の感染症の発生状況をモニタリングしている都庁感染症対策課,東京都健康安全研究センター(地方衛生研究所)疫学情報室等,感染症に係る関係機関の間で,地域の感染症情報を素早く共有し,感染症拡大防止に必要な迅速な対応や連携を図ることが重要である.

参考文献

1)東京都感染症情報センターホームページ http://idsc.tokyo-eiken.go.jp/
2)前田秀雄:公衆衛生活動と科学する心.公衆衛生73(2):104-106.2009
3)甲斐明美,他:東京都健康安全研究センターにおける新型インフルエンザ対応(2009年).東京健安研セ年報61:15-38, 2010
4)神谷信行,他:ワールドカップサッカー開催期間中の症候群別サーベイランス.東京衛研年報53:287-292, 2002
5)林志直,他:新型インフルエンザ出現の迅速探知に関する研究.東京健安研セ年報63:29-40, 2012
6)保坂三継,他:新興再興感染症起因病原体の診断及び解析法に関する研究.東京健安研セ年報61:39-48, 2010
7)西塚至,他:渋谷区における結核対策の取り組みについて—治療中に音信途絶した結核患者の早期保護をめざして.複十字335:18-19, 2010
8)杉下由行:東京都における結核サーベイランスへの取り組みと情報システムの展開.結核89(3):258, 2014
9)関なおみ,他:東京都におけるデング熱国内感染事例の発生について.日本公衛誌62(5):238-249, 2015
10)東京都福祉保健局:東京都蚊媒介感染症対策会議報告書について.東京都報道発表資料.2014年12月24日 http://www.metro.tokyo.jp/INET/KONDAN/2014/12/40oco100.htm
11)佐藤元,他:健康リスクと疾病の監視・登録システム:米国の現状,展望と課題.保健医療科学59(3):218-235, 2010
12)東京都健康安全研究センター:感染症(デング熱等)媒介蚊サーベイランス http://www.tokyo-eiken.go.jp/kj_kankyo/mosquito/

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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