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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生8巻2号

1950年08月発行

雑誌目次

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個人衞生と公衆衞生

著者: 田宮猛雄

ページ範囲:P.57 - P.57

 各大學は相次で公衆衞生學教室を新設しつゝある。從來の衞生學教室の外に,新たに公衆衞生學の研究と授業を行ふのであるから,自ら衞生學との擔當分野につき再吟味の起つて來るのは已むを得ない次第である。
 今までに公衆衞生學或は豫防衞生學等の名に於いて示された授業内容を見ると,殆んど皆從來の衞生學の授業内容と極めて多くの部面に於て重複がある。新設講座のことであり,内容の完備に努める結果として無理からぬことではあるが,それ丈けに公衆衞生學,衞生學が焦點を結ばしめるに餘りにも範圍の茫漠たるものあるを思わせる。それでは從來の衞生學は何處へ行くか,寧ろ公衆衞生を衞生學第二講座或は第三講座として,廣汎な取扱い範圍の分擔をした方が實状の解決によりよいのではないかとさえ思われる。しかし一面公衆衞生と衞生との兩教室を並立せしめてよい理由も見逃せない。

世界の人口問題と壽命

著者: 舘稔

ページ範囲:P.58 - P.61

 1.最近の地球の人口分布1949年末,國際連合は1947年の地球の推計人口を發表した。1)第1表のように,1947年の地球の人口は28憶に上つた。アジアの人口は,ソ連のアジアの部を除いて12億餘で地球の人口の半分を超えている。ヨーロッパの人口は地球の人口の4分の1,アメリカには地球の人口の13%が住んでいる。アフリカの人口は地球の8%,オセアニアはわずかに0.5%である。
 日本の4つの島の面積は地球の陸地のわずかに0.3%に足りないが,そこに住む人口は地球の人口の3.4%に上つている。

新しい飮料水檢査法—厚生省制定

著者: 川畑愛義

ページ範囲:P.62 - P.65

 われわれの生活にとつて水の重要性は今さらいうまでもないが,その意義は文化の進歩と共に益々深められ廣められてゆくものである。しかし乍ら何といつても水の最も重要な價値は飮料水としての用途にあり,これが衞生學上の檢討はいずれの場合に於ても必要である。
 從來わが國に於ては,水の試驗法には種々樣々のものがあつた。衞生學的方面に於て公認されたものだけでも,三種るいがある。

世界における社會醫學公衆衞生教育の動向(2)

著者: R. サンド

ページ範囲:P.66 - P.67

 しかし社會醫學が將來の醫師の訓練にたちいる戸口がもう1つある。それは臨床醫學である。病院の病室では,患者は外界から隔絶され,凡ての設備がとゝのいベツトも布團も同居者全部が同じなので,それらの男女に家族があり,家庭・商賣・蓄財・負債など要するに凡ゆる種々の世俗的なことゝ彼等についた生活があることを忘れやすい。1878年という昔は,アメリカ醫學界の傑物の1人J. S. Billingsは,學生は自らの環境にある患者を訪ねるべきことを強調した。19世紀の終りに,ゼノアのMaraglianoとDevoto,ボルテイモアのOslerはその學生達を結核患者の家庭訪問にやつた。ニューヨークのA. Meyerは精神病例に同様のことを行つた。ボルテイモアでC. P. Emersonは學生と一處に訪問した後で討論をした。
 イギリスの病院にAlmohers(慈善院)が加えられたとき(Sir C. Loch,1895)さらにアメリカの病院に社會事業が附屬したとき(R. C. Cabot,1905),醫學的社會的因子の研究が組織的に結びついた。そうしてローマでBaccelliが,パリーでLandouzyがその數年前はじめた社會醫學的臨床講義は種々のアメリカの大學に1913年から内科,外科,産科,小児科や精神科の教授達によりしばしば豫防醫學教授と病院社會事業部長の共同作業で組織されるようになつた。

高熱作業と勞働基準法

著者: 石館文雄

ページ範囲:P.68 - P.69

 むし暑い夏に高熱作業の話しなどは,一層汗のわく思いであるし,それに固苦しい法規の解説まで加わるのでは,疲勞感の恕限度をはるかにオーバーして全くやりきれない感じである。
 然し心頭滅却すれば火も亦涼しという境地もあり得るし,暑熱を克服するに高熱作業對策の熱意を以てする論法で書き進めたいと思うのである。

夏季における食品衞生の諸問題

著者: 遠山祐三

ページ範囲:P.70 - P.72

 我が國ほど養物の境類に惠まれた國民は少く,日本ほど味覺の國中を超越した國は世界中でも稀である。佛蘭西料理でも中華料理でも或は世界何れの國の料理でも悉く自國固有の料理と變らない樣自分のものにしている。敗戰で住む家にも着る衣服にも不自由をしている現在の日本人が養食を好むことは贅濟の樣にも考へらるけれども,一方榮養を十分に攝取して立派な體躯を作り世界雄飛の基礎を作ることは誠に結構な事柄と思ふ。之れには食物は總べて新鮮で榮養があり且かも衞生的見地から見て安全な食物を攝ららばならぬ事は云ふまでもない。味覺の發達を一國の文化とは必しも一致しないかも知れないが.食物の自然の味と上手に利用する技術を有し料理と藝術と心得富豪でも貴族でも一般市民でも殆區別無く,似たり寄つたりの美味しい料理を賞味している佛蘭西人,百年一日の樣に鹽味と一種類のソースの味しか知らない英國人,凡べての食物をカロリーやヴイタミン及び衞生の科學一本槍で行く米國人等それぞれの國民の持つ特徴は誠に意味深いものがあるが夫れ等の長所をとつて血となし肉とする心掛けは現在の日本人にとつては特に必要であろふ。今年は消化器系の傳染病特に赤痢か非常に多く己に5000人位が罹病し内1000人近とが死亡し明治32年以來50年振りの大流行であると報ぜられている。之の流行には種々の原因があろうけれども國民一般の食品衞生に對する氣持に緩みが生じている爲ではなかろうか。

集團食物中毒

著者: 八田貞義

ページ範囲:P.73 - P.76

 食物中毒(Food Poisoning)という言葉は外國語でもそうであるが,すべての食物を有害とみるようで決して愉快な適當な表現語であるとは思われない。殊にこれを字義通りに解釋すると食物攝取による健康障碍,生理作用變化のすべてを含める廣義の觀方となり,非常に廣い表現語となるわけであるが,今日定義されている食物中毒は細菌感染の飮食物を原因とする急性胃腸炎を指す狹義の解釋がなされており,食物による健康障碍一般(Food Injury)とは明らかに區別されているのである。
 從つて食物中毒に代る食物感染(Food Infection)なる言葉がこの間の實態を物語る適當なる表現語となるわけであるが,さりとて茲に從來の慣用語である食物中毒を殊更に不都合呼ばわりして排除する考えはない。唯それだけ知つてもらへばよいのである。

體内寄生蟲の季節的消長

著者: 松林久吉

ページ範囲:P.77 - P.80

 人體内部寄生蟲の季節的消長に就いては二つの面から考える必要があると思う。その第1は感染の消長であり,第2は發症の消長である。寄生蟲が感染しても,人はそれによつて必しも發症するものではないし,發症するにしても屡々長い經過の後に症状が現われてくる。この點は,細菌やヴイールスによる急性傳染病の樣に,感染者の多くが比較的短い潜伏期の後に發症するのと大いに趣が異つている。
 感染の消長に關しては,その感染が中間宿主を介して行われるものであれば當然中間宿主の活動の季節,或はそれが主として捕獲され食用に供される季節と關係のあることが想像される。マラリアやフイラリアの樣に蚊の媒介によるものは,蚊の活動する季節にのみ感染のおこることは云うまでもない。

衞生害蟲の季節的消長

著者: 加納六郞 ,   佐藤孝慈 ,   佐々學

ページ範囲:P.81 - P.83

1.蚊の季節的消長
 農業害虫の季節的消長が古くから盛んに觀察考究され,進んで發生豫察,それに基づく防除對策を行うに到つているのに比べると,衞生害虫に於ける此の方面の研究は確かに遲れている。之は單に季節的消長ばかりでなく衞生昆虫學そのものが最近まで殆ど顧られなかつたことに原因している。しかしこれらの研究が全く無い譯ではなく,小泉,山田,細井,野村等によつて蚊の季節的消長が報告され,又最近は岡山で佐々,京都でラカース,山口,東京で佐々,加納,林ら及び北岡,三浦らが之等の問題を取り上げている。或る地方で1つの昆虫の季節的消長を知る爲には,種々の觀察方法が考えられるが,どの手段も1長1短で眞の消長を知ることは仲々困難である。蚊についてみるならば,動物嗜引法によると蚊の動物嗜好性が問題となり,電燈誘引法では走光性に左右され,厩舎,家屋内或いは野外で捕虫網や吸虫管を用いて捕る法は採集者の技能や作業時間により著しい違いが現れる。又幼虫を調査する方法もあるが,之も發生場所の發見,幼虫の捕獲は調査者の知識,技能により異る。此の樣に眞の消長を知ることは仲々困難であり,之等を綜合して考察しなければならない。しかし衞生昆虫學の立場から言うならば,蚊の季節的消長が疫學的に如何なる意味をもつかということが重大である。

第2回日本衞生學會總會印象記

著者: 長田泰公 ,   山本理平 ,   川村正夫 ,   輿重治

ページ範囲:P.87 - P.88

 一般報告140題特別報告3題の演題が三日間に亘つて行われ盛會であつたばかりでなく,討論も前回に比べると遙かに活溌で活氣のある總會であつた。以下簡單にその印象をのべてみよう。
 塵埃に關する報告は7題ほどで前回に比べると演題の數が減つて居り,殊に現場報告が少なかつた。現場調査報告は塵埃以外のものについても言えるが,その對策面に手薄の感が強いようである勞研三浦氏らの"發塵係數"は外氣の塵埃と室内の塵埃との關係に注目して(作業場粉塵數)-(外氣粉塵數)÷(外氣粉塵數)=(作業場粉塵數)÷(外氣粉塵數)=1=±xを發塵係數とし,塵埃數を測定する際,同時にこの係數をも檢討するよう提唱されたものであつて着眼に獨創性があり,今後現場に於ける實際的意義や物理的意義ずけについて一層の研究が望まれる。

一酸化炭素中毒の研究—第2回日本衞生學會(新潟大學醫學部に於て)特別講演要旨

著者: 猿田南海雄

ページ範囲:P.89 - P.91

1.一酸化炭素中毒
(1)急性中毒
 空氣中CO濃度と中毒程度とは吸入時間の長短によつて異なるが第1表の如く研究者によつて色々の値を示す之れを血中HbCO濃度から見ると第2表の如く考へられて居る。
 之等は何れも外國の文献であつて本邦にはCO吸入による中毒實驗例はないので,著者は自ら之れが中毒實驗を試み,之等文献の妥當性を追試して第3表の如き成績を得た。

鐵筋コンクリート造集團住宅の住まい方研究

著者: 相澤龍

ページ範囲:P.91 - P.93

緒言
 都市住宅が集團化共同化の方向に進まねばならぬ事は基本的なもので,大阪市に於ても昭和24年に建設省案鐵筋コンクリート造四階建7棟を建設した。併しかゝる住樣式に對する經驗は極めて乏しく,住みよい健康的な集團住宅を建設するには,住まい方實態調査に基づいてかゝる住宅の長所短所を明らかにする必要がある。この意味で著者は先づ大阪市營小宮集團住宅に就て冬季の住まい方調査を行つたので,その概要を報告する。

高熱環境と自律神經機能

著者: 三浦豊彦

ページ範囲:P.94 - P.95

 我が國の産業では低温作業といわれるものは比較的局部に限られているが,高熱作業は極めて廣いしかも重要な分野として存在し,從つて高熱環鏡下に於ける勞働について衞生學的乃至は生理學的研究は極めて多數の研究者によつて行われて來た。
 しかも高熱の影響をとらえるのに或る人は物質代謝の面から或る人は循環機能の上から又或る人は生體のヒートバランスの上からこれを觀察して來ている,そしてこれ等の事項に關しては夫々數多い業績が發表せられて,高熱環境下の勞働が人間に及ぼす影響について次第に解明されてきつつある。しかしこれ等個々の機能に對する影響をばらばらにではなくて綜合して考察しようとする考えのもとでの研究の展開されたのは比較的最近のことであつて,高熱環境下に於ける内分泌機能或いは自律神經機能に注目した研究はこれに屬する。内分泌に關連しては甲状腺に注目した梶原Mansfeld等の研究,副腎皮質,腦下垂體前葉に注目した齋藤等の研究がある。自律神經機能に關する研究は熱地居住の適性に關連して戰時中はじめられたものであつて,戰後は氣候順應の問題としてこれがとりあげられてきつつある。しかし高熱環境下の勞働に關して自律神經機能をとりあげたものは殆んどない。

社會事業に關する術語解説二・三

著者: 早崎八洲

ページ範囲:P.96 - P.97

 1.社會事業の分野に普通でいう意味での術語が多く現われたのは,1915年以後,特に1920年以後である。その頃から社會事業が專門的形態と内容とをもつてきだしたからである。その大きな理由はケイス・ワークが發達して,ケイス・ワーカーが輩出し,協會を結成して教養水準を高めることに努めたからである。
 元來社會事業は人々の勝手な施與から始まつたので,普通の言葉で表現されたものが多く,現在でも他の科學やその應用の技術分野に比べて特別な社會事業分野固有の術語は少い。古い時代の醫學や司法等と似た所が多い。

疫學總論(1)

著者: 野邊地慶三

ページ範囲:P.98 - P.100

第1講 序説
1.疫學の定義と意義
 (イ)疫學の定義。疫學Epidemiologyは第一に傳染病流行の起伏消長を司配する要約,第二に諸種の傳染病の流行についての共通な一般律,第三に個々の傳染病の流行上の特性を探求して,傳染病の合理的な豫防策をたてるのに指針を供することを目的とする公衆衞生の分科である。
 普通には傳染病の季節的發生とか年齡分布の觀察などが疫學的研究と呼ばれて居るが,これは疫學的研究の一部に過ぎないのであつて,疫學の使命は上に掲げた定義に示されてあるように,傳染病流行の原則の探求にあるのである。それ故に疫學は曾つて大内が提唱した如く,これを疫理學と呼ぶのが合理的であつたのである。

傳染病食中毒統計を扱つて

著者: 石丸隆治

ページ範囲:P.100 - P.101

 編集者から筆者にあたえられた題は,「統計の批判」であるが,私は統計を專門にやつたこともなく,また今迄取扱つた統計も限られた狹い範圍内のものであり到底あたえられた題目について滿足な考えをまとめ得ないので,筆者が今まで傳染病及び食中毒統計を取扱つているうちに感じたことを思いつくまゝにのべることにする。
 由來,わが國では社會一般,ときには學會に於てすら統計の意義を解せず無用な存在とみなしていた傾向があつた。醫學會に於ても疾病統計について表面に表われた數字のみで百分率を論じ,致死率を計算するにとどまり,それ以上の論議とか,得られた統計數値の批判に無關心であることが多かつた。

厚生省便り

ページ範囲:P.102 - P.104

精神衞生法の施行
 健全な社會の發展には,身體の衞生と並んで精神衞生が不可缺であるが,立おくれたわが國の精神衞生行政を一刻も早く前進させて,心身ともにバランスのとれた國民社會を實現しようと,去る第7回において議決された精神衞生法は5月1日公布,即日施行され,長い間顧みられなかつた精神衞生對策も,これではじめて日の目を見ることになつた。
 この法律の骨子は,醫療,保護及び社會公安上の理由から,精神病者,精神薄弱者,精神病弱者を問わずすべての精神障害者を對象とし,これを職務上精神障害者を取扱うことの多い警察官,檢察官,矯正保護施設の長を含めた國民全般の通報,申請を通じて都道府縣知事が把握し,必要により精神病院に入院させてこれに醫療,保護を加え,なお精神衞生の指導,調査,廣告等のため都道府縣に精神衞生相談所を設け,更に精神病院の設置を都道府縣の義務制として,精神障害者の收容,醫療,保護の万全を期そうとするものである。

文部省だより

ページ範囲:P.104 - P.105

 夏休みは從來教育關係者の福音であつたが,今年からは全く反對であつて,教員は夏休みの全部を通して認定講習を受けなくてばならない。各教育委員會も,この認定講習會のため,例年の夏期行事が充分に出來ない。今後毎年教員相手の講習,講演を行いたい人は,相手の教員にクレジットを與へることが出來なければ,幾等内容ある講習會講演會でも集りが惡いだらう。それほど,教員は新制度による資格獲得に多忙になつた。このクレディットを與へることが出來るものは,大學であり,大學の先生である。今年の夏も,各地の醫科大學や醫學部の先生は養護教員の認定講習に動員されている。大學の先生と小學校,中學校,高等學校の先生,即ち學校教員は全部,今後の夏休みについて,從來のような休養が考えられない。
 夏休みの學校保健行事としては,從來,夏期學校,海濱學校,林間學校等があつて,なかなか多忙であつたが,この方面も今年は,多少,下火である。但し,食料事情,交通事情等のために抑制されていたので,23年前とは比較にならないほど,盛んである。

勞働省だより

ページ範囲:P.105 - P.105

珪肺巡回檢診
 勞働省では昭和23年以來金屬鑛山の勞働者に對して珪肺巡回檢診を行い珪肺患者の早期發見に努め珪肺豫防の万全を期している。
 珪肺檢診はX線檢査が主であり粉塵作業に從事する勞働者に對してX線間接撮影を,又粉塵作業勤續10年以上の者に對してはX線直接撮影を行うがその他一般内科檢診,肺活量測定,機能檢査必要と認める者に對してはツ反應,赤沈,喀痰等の諸檢査を行つた。

隨感隨想

盛夏衞生隨想

著者: 小島三郞

ページ範囲:P.84 - P.85

◇赤痢を語る
 赤痢が今年は格段に増加しつゝある。私は昨年すでにスルファミン劑に耐性を有する赤痢菌の出現を聴かされ,臨牀家もこの種の赤痢患者,以前ならば容易に恢復したに相違ないものが,案外化學療法に抵抗する事實,その分離赤痢菌が試驗管内實驗で強度の耐性を獲得しあるの事實を知らされて,至大の關心を持つていた。昭和22年1月21日の日本醫事新報に「細菌性赤痢の醫學療法」なる題で,學術研究會議の特別委員會傳染性腸疾患科會の共同發表があり,その續報として同誌に翌昭和23年2月11日にも綜合報告が出た。又委員各位の單獨發表は別に各自の名を以て物せられある。要するに赤痢の化學療法としてのスルフアミン劑を高く評價した。茲に綜合報告の筆頭署名者として私の強調したい事は,その量に就いての記載を回顧せられたい點にある。例えばスルフアチアノールに於て,1回1.5瓦(但し第1回だけは2.0瓦),1日6回,4時間間隔,3日間連續投與,全量27.5瓦と記し,フタリール化合物に至つてば,全量37瓦に及ぶべきを述べ,又小児使用量はヤングの計算式による量の倍量を大人と同じ使用法で投與せられん事を訴えた。

抗菌性物質研究雜感

著者: 細谷省吾

ページ範囲:P.85 - P.86

 アメリカに於けるペニシリン,ストレプトマイシン,クロロマイセチン,オーレオマイシンの發見とその工業生産の成功,臨床應用の普及とは微生物性疾患の治療上文字通り劃期的の革命を成就した。しかもネオマイシン,テラマイシンなど有望を傳えられる後詰の陣が續々と名乘りをあげる盛觀には三嘆を禁じ得ない。
 一方吾國に於ては國歩艱難な現状にあつても政府はたとえアメリカとは桁違いとは云え,尨大な研究費を抗菌物質の實際的生産のために支給して目的達成を促してゐる。即ち昨年度はストレプトマイシンの製造及臨床實驗のために六百二十萬圓本年度六百萬圓,クロロマイセチンの同じ目的のために百七十萬圓が交附された。國産ペニシリンは質的には米國品と比肩するようになり,量的にも一應は國内の需要を滿たすに足り,生産價格も低下の一途を辿り現在では包装費の方が中味のペニシリン自身よりも高いと云われる程度になつた。ストレプトマイシンも學界業界の協同研究の成果はよく優秀菌株の發見,培義法特に精製法の重大な進歩をもたらし,國家の規準に合格する製劑一瓦百萬單位の生産費が三百圓位になりそうだと云うから,國産品がもつと廉く現在のペニシリンのように充分患者にゆき渡る日も迫つた。

統計の頁

赤痢

著者: 福島一郞

ページ範囲:P.106 - P.108

 今夏は赤痢の脅威が大きくとり上げられている。四月半ばには國立新潟療養所の一炊事員の不注意から同所の患者,職員に133名の罹患者を出し,五月半ばには東京都荒川區の一柏餅製造屋の幼兒の下痢を見過したためにその柏餅を食べた者から215名の患者と5名の死者を出した。六月には伊東温泉に集團發生した患者が既に103名に達しているとのことだ(6月13日現在)。終戰後腸チフスやジフテリアと並んで赤痢も異常な減少をみ,殊に昭和23年には年間届出患者數14,665,死亡數5,157で昭和15年頃に較べると患者にして約1/6,死者は約1/4にへり,スルフアミン劑の普及その他公衆衞生諸施策の改善に負うものとしてやや意を強うしていた矢先,早くも昨年の夏から又々増助し始め,昨年中の患者は約2萬4千(一昨年の約2倍,死亡者約7千8百(一昨年の約1.5倍)となつたが,本年に入り益々増助傾向が強まり5月27日現在迄21週間の累計届出患者數は3,674名(昨年の約3倍),死亡數は672名(昨年の約2倍)に上つており,この分で行けば戰時中の高い罹患者,死亡率に逆行の懸念が濃い。この憂うべき状況下にある赤痢對策の重點を求める意味で統計的觀察を通じてみられる赤痢流行の姿を若干紹介しておく。

海外文獻

健康なる兒童を有する國民,他

著者:

ページ範囲:P.109 - P.109

 無料牛乳,低費學校給食及常時醫學的世話等は今日英國で遂行しつつある手段の若干である

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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