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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生8巻4号

1950年11月発行

雑誌目次

主張

—昭和26年度豫算編成からみた—衞生行政の動向

ページ範囲:P.174 - P.174

 26年度豫算は,既に事務的な編成を終つて關係方面の諒解を得て,國會に提出されることとなつている。從つて,まだ最後的に決定したわけではないが,少くともこの豫算編成によつて,厚生省としては,26年度に,衞生行政を如何に推進して行くかという基本的な方針については,充分に理解されることが出來るであろう。以下衞生行政の來年度豫算に現われた主な問題を拾つてみたいと思う。
 先づ,來年度においては,と云つても大きな問題は結核對策である。日本としては,結核の重要性は早くから認識されている。既に度々,大きな計畫も立案された。しかし,何時も豫算の面で行きづまつていたものが,今回,始めてまことに畫期的膨大豫算が成立する氣運となつたのである。事業計畫としては,健康診斷,B.C.Gの豫防接種に約2億,療養施設13.000床の新設に9億,患者醫療費の補助として約9億,職員の研修その他に1億,保健所の結核學任職員,講習會,保健婦旅費,委員會の經費等に約1億,ストレプトマイシン買上費に約9億,國立療養所の増設に1萬7千萬圓,健保療養所の増設に3億7千萬圓,國立及び公立療養所の經常費に51億等,總計國費の負擔83億3千萬圓が見込まれている。我が國衞生行政史上まことに畫期的な數字であり,現在の國の財政からみれば,先づ萬全の對策といえよう。

グラビヤ

ロンドン,ペツク・ハムのパイオニラ・ヘルスセンター

ページ範囲:P.175 - P.176

 1935年生物學者スコツト,ウイリムスソン博士の設計に從い建設された,世界における公衆衞生研究のための最初の研究所であるこゝは地方の人々にとのためのレクリエーション,セーターであり,クラブである人々は,個人としてではなく,家族としてこれに加入し,その目的は村洛における豫防衞生である。
 「ほら,こぼれてゐますよ!」さじを使うということはこの子供くらいの年齡では非常にやつかいな仕事である。これらの子供は育兒室で,黄苺の汁や蜂蜜のついたパンに樂しんでいる。

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寄生虫の驅除劑批判

著者: 石井信太郞

ページ範囲:P.177 - P.181

1.驅除劑としての條件
 寄生虫(Parasite)というと極めて廣範圍のものであるが,通常は寄生蠕虫(IIelminth)を指すものであるから本稿では蠕虫類の躯除劑という意味で述べることとする。從つて寄生原虫(Proto-zoa)に屬するアメーバやマラリア等は除外することになる。
 蠕虫類に屬するものに線虫類,吸虫類,條虫類,があるが,之の全部に就て批判することも紙數がゆるさないので,現下の日本に於て關心を佛う必要のあるものに就て記述することにしたい。

野谷村の全村驅蟲

著者: 伊達富久

ページ範囲:P.182 - P.184

 寄生蟲卵の檢査成績は檢査の方法や技術で差異を生ずるので在來の成績から寄生蟲蔓延の實體を正確に掴むのに困難を感ずる。殊に鈎蟲卵の檢出率は檢便の取扱ひ方で著しい差がある樣である。恩師故鈴木稔教授が生前一人の檢便に10分間はかけてやるように云われでいたが丁寧にやるのとそうでない場合は蟲卵の檢出率が甚だしく異るものである。集團の檢査の際は往々にして檢査が粗雜なため鈎蟲卵の檢出率が低い場合が多い,吾々はなるべく精細な檢査で寄生蟲蔓延の實體を掴み正確な集團驅蟲並びに其の後の經過を見たいと考えていたのであるが,岡山保健所管内の野谷村で昨年其の機會にめぐまれたので其の模様を報告する。

泉熱(所謂異型猩紅熱)の疫學

著者: 兒玉威

ページ範囲:P.185 - P.187

 1927年5月金澤市に臨床上猩紅熱と類似する一發疹性熱性疾患の勃發があり,泉仙助教授がこれを詳細に記載して以來,現在までに同種疾患の集團發生報告例は40數件に達している。昭和14年春,京都某中學生間にたける同病の發生に際し,伊澤博士が異型猩紅熱なる病名を提唱して以來,この病名が好んで用いられてきたが,最近本症研究委員會(委員長内田三千太郞博士)に於て本症を泉熱と假稱することに内定した。次に本症について疫學を中心とした概説を試みたい。

いわれなきペシミズムといわれあるペシミズム

著者: 石垣純二

ページ範囲:P.187 - P.187

 『宮城縣のN村での話,前の日の働きづかれで行商人が,ある朝ゆつくり寢こんでいたら,病氣じやないかと氣をまわした宿の主人が村役場に注進して,衞生監視員が追取刀でかけつけた。もちろん,これはいゝ氣持のところを起された行商人が目をパチクリさせたゞけですんでしまつた。こんな有樣だから,まわりの町村からは傳染病が幾人も出たが,N村からは一人も出なかつた。いやそれどころではない。この村の牛小屋,馬小屋には一匹のハイもカもいない。だから牛馬がよく太り,よく仔を産むようになつたと村民は喜んでいる。この村が三年前までは,台所で鍋の蓋をとると,ブーンとハイが唸るほどだつたのだ。
 山梨縣のM村での話,井戸端で一人の母親と近所の娘が立話をしている。「うちの子はネ先だつての檢査で標準體重より下つたでなあ,一ぺん保健婦さんに相談したいんだよ」「そうかね。じゃ今日わたしから報告して,來てもらおうか」「えゝお願いするわ」その娘は愛育班員といつて受持區域の四五十軒の子どもたちの健康は手にとるように知つている。この村で一番おくれているのはオヤジたちというわけで,目下父親教室が行われている。

日本腦炎のその後

著者: 北岡正見

ページ範囲:P.188 - P.191

 1933年日本學術振興會内に故稻田先生を委員長とする第三小委員會が設置され,日本腦炎に關する研究が始められてより,各委員の不斷の努力と,委員會に屬していない各學者の不休の研究は互に切磋琢磨し,數年を出ずして腦炎の各分野に亘り長足の進歩を遂げ,その結果當時,腦炎の研究に關する限り世界の最高峰にあると自負しても恥ぢない程であつた。而し論爭の儘に取殘されたり,或は尚解決すべき諸問題が殘された儘,不幸な第二次世界大戰が起つた。
 1947年に至り,1940年以來數年間姿を現さなかつた腦炎が,先づ馬に,1948年には人と馬の兩者の間に全國的の大流行となつて現われた。そして1949年にも人と馬の間に腦炎が起つた。之等の腦炎發生を機會として,敗戰,占領下決して充分とは云えない條件の下で上述の諸問題を解決すべく再び我國の學者は立ち上つた。即ち1947年には馬腦炎に就て,家畜衞生試驗場小林(芳)場長を委員長とする研究委員會が組織せられ,また1948年には醫學界,獸醫學界の各方面の研究者を網羅した研究機關が組織され,夫々研究班が作られ豫防衞生研究所小林(六)所長が委員長となつた。

海外文献

ページ範囲:P.192 - P.194

抗ヒスタミン劑と風邪
 抗ヒスタミン劑が風邪の經過を短縮する最初の報告が1947年Brewsterによりだされ,Gordon,MurrayさらにArminio and Sweetが報告し,ある藥品製造業者がこれを受納れ,大衆は"驚異的新發見は數時間で風邪を退治する"というような廣告につられて熱狂的な支持をし,ついに合衆國醫學會の薬理化學委員會は,科學的に認められる研究が成就されるまで風邪にたいする抗ヒスタミン劑の効用は留保すると結論した。
 その後Cowan and Diehlは,ビタミンCなど諸種の僞薬でも抗ヒスタミン劑と同じ効果をあげることを證明したが,イギリスの醫學會ではこの間題を愼重にとりあげ,風邪研究班を特別に組織した。その報告1)によると,篤志家の鼻粘膜に風邪のビールスを注射し,無作意に半數づゝ抗ヒスタミン劑と僞藥とをあたえた。結果は明かで,抗ヒスタミン劑の大量は,風邪を豫防することも,その性質をかえることもなかつた。多少影響があるとすれば,第1日の終りに微少な差があるが,アレルギ一性鼻炎を伴つた者にきゝめがみとめられる程度で,殆ど實際的重要性をもたない。Lorriman and Martion2)の獨立しておこなわれた臨床的研究も,風邪研究班の結果を裏付け,全治療日を通じなんらの効果ある差異をみとめなかつた。

群馬縣邑樂地方の肝吸蟲

著者: 小宮義孝 ,   高野均 ,   小倉由紀子

ページ範囲:P.198 - P.199

 群馬縣邑樂地方における肝吸虫の蔓延状況に關しては大正3年縣衞生課が邑樂教育誌上に發表したものが,初めての報告であつて,これによれば,赤羽村58.54%伊奈良村51.52%梅島村21.8%,という高度の肝吸虫保有者率を示している。
 私たちは,改めて同地方の肝吸虫の蔓延状況に關し,最近調査を行つたので,その結果を報告する。

百日咳の疫學的觀察

著者: 平山雄 ,   阿部怜子

ページ範囲:P.200 - P.202

 百日咳の疫學は,わが國に於ても,小山(1)その他多くの研究があるが,なおかなり問題を殘しているとゝもに,ジフテリア,猩紅熱の減少傾向をよそに,年々流行を繰返す麻疹及び百日咳は今後の防疫の焦點でもある。麻疹は今もなおなんら封策が講ぜられていないが,百日咳に對しては,最近豫防注射問題が眞劍に取り上げられており,何病の場合でも,豫防注射の效果判定には極めて愼重な檢討を要すことはいうまでもない。百日咳の豫防注射の效果判定の示標として,小山(1)は「家庭内二次罹患率」を提唱しており,現在各研究者共その方向にむかつているようである。しかし,この示標についても,疫學的な立場からの基礎的研究が必要と思われるがこゝに,素質問題,潜伏免疫,家庭内における傳播樣式などを檢討しよう。

療養患者の蛔蟲感染頻度の季節的消長—國立療養所久里濱病院の場合

著者: 高田功

ページ範囲:P.202 - P.203

 蛔蟲は自然排泄が相當にあるものであり,而も人體内に宿つている期間は甚しく長いものではないらしく,Qttoは1年以内であろうと考えている。したがつて蛔蟲の感染率は,この自然排泄と新感染との間に平衡の上にとゞまつている筈で,高い感染率を保つているのは新感染もそれに應じて多いことを示している。どの程度に新感染が起るかは,ある一定人員を完全に駆蟲した後,こらの人々を頻繁に檢便し蟲卵陽性者の増加して行く割合を調査すればよい。
 私は特殊な例として國立療養所久里濱病院に療養中の患者について上記の調査を行つた。

疫學總論(3)

著者: 野邊地慶三

ページ範囲:P.210 - P.212

第3講 傳染經路(其1)
 I.傳染經路の防疫上の意義。
 傳染經路或は傳染樣式(Mode of infection),即ち病原體が傳染源から他に傳播される方法を明らかにすることは,傳染病の流行に際して適切な防疫對策をたてるに最も重要な事項である。そして各種の傳染經輕に關する豫備知識が豊であれば,流行に直面して經路探索が容易になる。この際たとえば水道の流行に際しては,水道の構造及び運用について,牛乳流行に於ては牛乳殺菌装置の原理と操作について,また昆虫媒介による流行に直面しては,その昆虫の生態についての知識を必要とするもので,公衆衞生全般の知識が充分であることが望ましい。

國内・海外ニュース

ページ範囲:P.214 - P.216

テイビオンについて
 最近結核治療藥としてテイビオンが問題となつているので,厚生省では9月2日新聞,放送,雜誌關係等に對し次のように發表した。
 テイビオン(パラ,アセチル,アミノベンツアルデヒド,チオ,セミカルパツオン)は,アメリカにおいても臨床試驗中で未だ一般に販賣されていない。テイビオンはパスに比し薬用量が僅少で非常に安價であるが毒性が強く,しかもそれがテイビオン自體にあるのか,又は不純物によるものか今の所全く不明であり,純度と毒性及び抗菌力が必ずしも比例しない。從つてこれらの關係を研究の上確定しなければ,醫藥品として製造を許可することは危險である。

質疑應答

ページ範囲:P.220 - P.221

 問 日本獨得の治療法としてのハリと灸が,效くべぎ理論の裏付けがなされていないのに,法律でこれを認め,一般に行われている理由は如何。
 答 病氣を治し,健康を進めようというのは人數有つて以來の希望の一つです。從つて昔は,智慧ある者,經驗あるものが,子弟の病を治すために努力をした。こうした經驗と智慧が積つてやがて科學的,合理的に疾病の治療を考えるようになつたわけです。

公衆衞生と社會

著者: 白木勝次

ページ範囲:P.222 - P.224

最近の新聞より
社會保障
 ◇社會保障制度審議會は10月16日の總會に至つてようやく成案を得,これにもとづいて社會保障制度の企劃,立法を行うよう,勸告書を政府に送つた。
 勸告書は,社會保障制度を全國民を對象とする統一的制度とすることに,その構想の出發點をおいている。すなわち,被用者に對する現行の社會保險制度が公私の被用者に對して取扱方を異にしている許りか,給付の内容も均衡を得ていないこと,あるいは事實運營の方法も多岐にわかれ,重複,競合するところが少くないことなど,被用者に對する制度としては公平を缺くものがあるので,原則としてまず全被用者保險の適用範園を擴大し,各種社會保險を統一すべきことを勸告している。

讀者の手紙

著者: 田村彰

ページ範囲:P.224 - P.224

 農村と結核 昭和10年以前は岩手縣の農村で結核患者をみる事は曉天の星の如しと云うてもよい程少なかつた。最近新聞紙上で農村に於ける結核患者の激増が傳えられているが,實際自分で體驗する迄は切實に響かなかつた。然し最近私は岩手縣中部の岩手縣としては比較的文化的な農村の二,三に往診してみて,結核患者の多い事を目の當りみて驚いた。その上結核に對する知識がないので家庭内感染を起し,子供1人丈殘してあとは全部死亡の果てた樣な家庭も1村に2,3のある事も知つた。農村に結核の蔓延したのは,軍隊又は徴用として都會に出て,榮養失調,過勞の不良條件で發病したものが,敗戰後帶患のまゝで村に歸り,これが感染源となつている事が最も大きな原因ではなかろうか。戰後民主々義が全國津々浦々まで滲誘した樣に見えるが,農村の封建的な影は未だまだ大きく殘つていて,患者の療養の妨げとなつているし,又今の處は戰中戰後のインフレの餘力のある家庭なら入院も可能であるが,次第にその餘力も少くなつている事も事實である。今度厚生省で結核對策本部を設け本格的に結核撲減運動を展開する事になつたが,2萬や3萬の増床では燒石に水の觀がないでもない。ある新聞の「聲」に赤い羽根の共同募金と同樣に結核共同募金とも稱する募金を行うべきであるとの意見があつたが,私はこの趣旨に大いに賛成している。

時評

醫藥分業と公衆衞生

著者: 酒井威

ページ範囲:P.196 - P.197

 與えられた課題は極めて重大且つ廣範な問題であつて,到底私の筆の如きが輕々しく賄える所ではない。謬見とも想われる所感を記して大方の御教示を仰ぎたい。
 嘗て私が大學病院の藥局に勤めて居た時に,或女藥劑師が,百倍に稀釋すべき硝酸ストリキニーネを十倍にしか稀めてない事があつて,幾人かの中毒症例を出した事がある。

統計の頁

腸管内寄生蟲

著者: 小宮義孝

ページ範囲:P.204 - P.207

 本年は寄生蟲豫防週間が,12月初旬となつたそうである。終戰前後から急に激増した本邦における寄生蟲保有率は,その後5年にいたる今日,依然としてそのままで,すこしも減少の傾向を見せていないようである。さいきんにおける寄生蟲性疾患にもとずく死亡數は,全國で1ケ年約8,000内外に達すると云われているが,これは死亡診斷書にはつきりとそう記されたものに基く數字で,實際にはおそらくその數倍ないし,數10倍に達するものではなかろうか。しかし,寄生蟲のうち,とりわけ戰後急激に蔓延しつつあるというのは,主として蛔蟲のそれである。以下ここでは,蛔蟲に關し,若干の統計的資料をかかげ,公衆衞生上の資料に供したい。

醫藥隨想

一つの禮儀

著者: 吉川春壽

ページ範囲:P.208 - P.208

 昨年だつたか一昨年だつたか,ある實驗装置について乙科の先生に意見をききに行つたことがあつた。その時は話をきいただけで,その装置をつくるまでに具體化しなかつたままに,その後の仕事の經過を報告もしなかつたところ,その後どうなつたか何の知らせもないのは不都合だとその先生が立腹して居られると人づてにきいて,それは大變惡いことをしたと,いまさら私達が禮儀にはづれたことをしたのに氣が付き,實驗擔當の若い人に報告とおわびを兼ねて,その先生のところへ行つてもらつた。
 工科の方では,機械の工夫とか製造工程の改良とかいふことについての指導を依頼されることが多いだらう。そこの先生方が學識にもとづいて懇切な教示をあたえた場合に,依頼者はたとひ教示にあずかつた通りのことを實行にうつさなかつたにせよ,それはやはり何といつても依頼した人にとつてはプラスになるのであるから,全然なげやりとあつては,禮儀にもとることであるにちがいない。つまり,工科の先生に,裝置のことや何かで教へを請うのは,醫科の臨牀の先生に病人を治療してもらうのと同じ筈なのである。私達が友達の臨牀家に自分自身とか自分の家族知人をみてもらつたあとで,その後の經過を話して感謝の意をあらはすのは一つの禮儀としてなすべきことだらう。かういふときには,何も物質的な謝禮は必要でなくても何かの形で心持を表明することはしなければならない。

醫師よもつと統計を重んぜよ

著者: 西川義方

ページ範囲:P.209 - P.210

 夙くから,私はいつも醫學統計を坐右にして醫學衞生進歩の跡を考へて,診療上の指針としてをります。何が斯樣な推移をさせ,させつつあるかということは,診療諸材並にその應用法の進歩でもあり,勿論また公衆衞生上の進歩でもあります。
 約30年前に,Y市に某醫の不倫問題が起り,業々しくも世上に喧傳されたことがあります。

公衆衞生學教室めぐり・2

—公衆衞生學と衞生學の連絡が密接な—慶應大學

著者: H. 生

ページ範囲:P.213 - P.213

 公衆衞生學と衞生學との領域の區分の論議よりも,この2つの學科が互に密に連絡していることが望ましいところから,本教室は衞生學・公衆衞生學教室と稱せられている。そして,醫學教育に於いて,豫防醫學として基礎醫學や臨床醫學と對應するものと考えられている。
 本教室は草間,原島兩教授,上田,菊野兩肋教授,渡邊,外山兩講師と數名の助手がスタフとなつて,教育と研究との運營をしている。

保健所便り・Ⅱ

東京都小石川保健所

著者: 岡西順二郞

ページ範囲:P.217 - P.217

 東京都小石川保健所は不幸にも,戰災を蒙つたが,東京都の保健所復興第一計畫で,昭和23年7月252坪の建物が落成した。その年10月に新制保健所として出發した。けれども,管内の情勢は決して花やかなものではない。面積は6,2平方人口は95,000。食品衞生,環環衞生,醫藥業行政の對象となるものは別表の通りである。しかし,盛場を管内にもたない關係から,あまりパツとしたものはない。プールが12もあるのは,いささか多いようであるが,皆官立,都立,私立の學校のプールである。興行場は6であるが,あまり大きくない映畫館が3,他の3は後樂園スタヂアム,後樂園競輪場及び後樂園バスケツトボール競技場である。
 小石川保健所管内の大きな特徴は學校の多いことである。教育大學,お茶の水大學,學藝大學,日本女子大學を始めとし,官公私立の學校が多數あつて,學校衞生研究にはもつて來いの場所ではあるが,殘念なことには,學校衞生は教育廳の責任であるとばかりに,中々手出しが許されない。レントゲン裝置を持つている學校さえ2校ある始末である。

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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