文献詳細
文献概要
醫藥隨想
一つの禮儀
著者: 吉川春壽
所属機関:
ページ範囲:P.208 - P.208
文献購入ページに移動工科の方では,機械の工夫とか製造工程の改良とかいふことについての指導を依頼されることが多いだらう。そこの先生方が學識にもとづいて懇切な教示をあたえた場合に,依頼者はたとひ教示にあずかつた通りのことを實行にうつさなかつたにせよ,それはやはり何といつても依頼した人にとつてはプラスになるのであるから,全然なげやりとあつては,禮儀にもとることであるにちがいない。つまり,工科の先生に,裝置のことや何かで教へを請うのは,醫科の臨牀の先生に病人を治療してもらうのと同じ筈なのである。私達が友達の臨牀家に自分自身とか自分の家族知人をみてもらつたあとで,その後の經過を話して感謝の意をあらはすのは一つの禮儀としてなすべきことだらう。かういふときには,何も物質的な謝禮は必要でなくても何かの形で心持を表明することはしなければならない。
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