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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生80巻10号

2016年10月発行

文献概要

特集 包括的な糖尿病対策

2型糖尿病の発症抑制・早期治療介入へ

著者: 河盛隆造12

所属機関: 1順天堂大学 2順天堂大学大学院医学研究科(文科省事業)スポートロジーセンター

ページ範囲:P.755 - P.760

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 インスリン発見の地,トロント大学は「インスリン発見100周年シンポジウム」を2021年に開催すべく,早くも準備を開始した.「2021年には糖尿病はどうなっているか?」との討論が始まった.筆者は,「1型糖尿病は再生医療の進歩で,治癒する病気になっている」と述べた.iPS細胞,ES細胞の活用,さらには膵外分泌組織からの内分泌細胞への分化促進技術などの活用により,患者の膵β細胞を再構築することができよう.移植後の拒絶反応も,biomembrane(生体膜)などの進展とその応用により克服できるであろう.準備委員会の他のメンバーも,“promising, probable”と同意してくれた.それまでの間,1型糖尿病患者の血糖コントロールをより良好に保ち,決して血管障害を発症させないことが明確な治療目標になろう.
 一方,世界で激増し続ける2型糖尿病はどうなっているであろうか.筆者は「2型糖尿病と診断されるとすぐに治療して,“もとの糖尿病でなかった状況に戻る”のが当たり前,という時代になっている」と強調したが,他の委員全員から,“You are too optimistic!”と言われた.そこで,「日本ではカナダや米国と異なり,全ての人が定期健診などにより早期に糖尿病と診断されている.1年前には正常だったのに,この1年生活にどのような変化があって糖尿病が発症したのか,詳しく聴取し,その原因を除去するように指導することにより,正常血糖応答に復している例が絶えず見られる.5年もあれば実現可能だ」と言った.皆からは“Good luck!”と冷たく言われた.少なくとも日本ではそうなっているように,最前線の若手医師には今こそ全力を尽くしてもらいたい.現実に,2型糖尿病の治療に長い間専念している患者さんの現状を理解すれば,そのことの重要性が理解できるはずである.

参考文献

1)Kawamori R, et al:Voglibose for prevention of type 2 diabetes mellitus:a randomised, double-blind trial in Japanese individuals with impaired glucose tolerance. Lancet 373(9675):1607-1614, 2009
2)Scheen AJ:Voglibose for prevention of type 2 diabetes mellitus. Lancet 373(9675):1579-1580, 2009
3)Diabetes Prevention Program Research Group:Reduction in the incidence of type 2 diabetes with lifestyle intervention or metformin. N Engl J Med 346(6):393-403, 2002
4)Diabetes Prevention Program Research Group:Long-term effects of lifestyle intervention or metformin on diabetes development and microvascular complications over 15-year follow-up:the Diabetes Prevention Program Outcomes Study. Lancet Diab Endoc 3(11):866-875, 2015
5)Chiasson JL, et al:Acarbose for prevention of type 2 diabetes mellitus:the STOP-NIDDM randomized trial. Lancet 359(9323):2072-2077, 2002
6)Chiasson JL, et al:Acarbose treatment and the risk of cardiovascular disease and hypertension in patients with impaired glucose tolerance:the STOP-NIDDM trial. JAMA 290(4):486-494, 2003
7)DeFronzo RA, et al:Pioglitazone for diabetes prevention in impaired glucose tolerance. N Engl J Med 364(12):1104-1115, 2011
8)DeFronzo RA, et al:Prevention of diabetes with pioglitazone in ACT NOW:physiologic correlates. Diabetes 62(11):3920-3926, 2013
9)Tripathy D, et al:Baseline adiponectin levels do not influence the response to pioglitazone in ACT NOW. Diabetes Care 37(6):1706-1711, 2014
10)河盛隆造:糖のながれにおける肝・糖取り込み率制御因子の解明.糖尿病49(10):771-773, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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