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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生80巻12号

2016年12月発行

文献概要

特集 行政保健師の質の保証—卒後教育・CPD

日本の行政保健師の役割と課題

著者: 曽根智史1

所属機関: 1国立保健医療科学院

ページ範囲:P.878 - P.882

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成り立ちからみた保健師の役割
 最初に,保健師の成り立ちを振り返ってみたい.大国1)の『保健婦の歴史』によれば,大正から昭和初期の保健婦事業は社会需要の観点から,(1)家庭看護事業,(2)保健指導事業,(3)社会的,経済的問題から出発した救貧・防貧事業,(4)上記が混在している総合的な事業(農村など)の4つの類型に分類される.これらは当初は,地域を限局した非営利の民間社会事業的な範疇で行われていたが,当時の日本は貧しかったため,民間の営利事業には発展しなかった.社会的なニーズの増大もあり,また戦時下の社会的状況もあって,行政の事業に組み入れられて大規模に実施されることになり,同時に保健婦が公的な資格として確立されることとなった.
 「保健婦」という名称は,1937(昭和12)年7月公布の「保健所法施行規則」によって,初めて法に明文化された(第3条).また保健所には最低3名の保健婦が必要とされた1).大国によれば,この頃の保健婦の任務については,大きく(1)国策に沿った保健指導,衛生教育,(2)住民ことに農村や都市貧困階層の保健医療の需要に密着した活動,(3)精神的,社会的な生活改善,の3つがあると言われていた1).これらは,それぞれ各地で実施されていた保健婦活動の現実に基づく意見であろうと思われる.

参考文献

1)大国美智子:保健婦の歴史.医学書院,1973
2)名原壽子:保健師60年のあゆみ.保健師助産師看護師法60年史編纂委員会(編):保健師助産師看護師法60年史.2009,pp154-170
3)湯沢布矢子:保健婦活動の課題.公衆衛生研究43(2):141-146,1994
4)井伊久美子:保健師活動とは.井伊久美子,他(編):新版保健師業務要覧第3版.日本看護協会出版会,2013,pp2-7
5)平野かよ子:これからの公衆衛生看護のあり方.公衆衛生研究49(2):116-124,2000
6)久常節子:保健師リーダーが今,取り組まなければならないこと.奥山則子,他(編):ふみしめて七十年.日本公衆衛生協会,2013,pp39-50
7)田上豊資:保健師は,パーソナルヘルスではなく,パブリックヘルスの担い手であり続けてほしい! 奥山則子,他(編):ふみしめて七十年.日本公衆衛生協会,2013,pp29-32
8)厚生労働省健康局:平成27年度保健師活動領域調査.(領域調査),2015
9)日本看護協会:平成26年度保健師の活動基盤に関する基礎調査報告書.2015
10)森岡幸子,他:行政保健師の現状と課題.井伊久美子,他(編):新版保健師業務要覧第3版.日本看護協会出版会,2013,pp8-18
11)曽根智史:わが国における公衆衛生のアイデンティティ.公衆衛生79(1):6-9,2015
12)厚生労働省健康局:保健師に係る研修のあり方等に関する検討会最終とりまとめ.2016
13)地域における保健師の保健活動に関する検討会:地域における保健師の保健活動に関する検討会報告書.2013
14)厚生労働省健康局:地域における保健師の保健活動に関する指針.2013
15)野村陽子:専門職として貪欲に学び資質の向上を図ることを大切に.奥山則子,他(編):ふみしめて七十年.日本公衆衛生協会,2013,pp238-242

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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