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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生80巻12号

2016年12月発行

文献概要

予防と臨床のはざまで

病気の相談に思うこと

著者: 福田洋1

所属機関: 1順天堂大学医学部総合診療科

ページ範囲:P.957 - P.957

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 筆者は,公衆衛生や産業保健,健康教育に関わるような予防寄りの業務と,病院での外来を中心とした臨床寄りの両方の業務を行っています.健診や人間ドックの業務はその中間的な仕事と言えるかも知れません.このエフォートは,時によって異なりますが,ざっくり言うとほぼ半々です.しかし,最近,病気のケースに関する相談が,立て続けにありました.業務として行っている,例えば嘱託産業医先の人事の方からの相談であれば単なる仕事なのですが,知人,友人など,知り合いからのいわゆる無償の相談が,たまたま続いたというより,明らかにコンスタントに増えている印象があります.本人だけでなく,その方のご家族,友人,抱えているケースの相談もあり,がんなどの深刻な疾病や不明熱など診断に苦慮するもの,急性疾患を疑う急ぎのケースもあります.メールなどで相談にのって終わりのことがほとんどですが,結局それではわからないことも多く,外来で診療したり,より専門性の高い外来へ誘導する場合もあります.
 相談いただくことはとても有り難いことではありますが,日々多くの業務に追われていると,十分に対応できなかったり,あまりに気軽に相談されたりすると迷惑に感じることもあります.特に最近は,メールやフェイスブック,LINEなどのSNSツールで,人に簡単にコンタクトを取れるようになっています.以前は,たまたま会った時でないと相談できなかったようなことが,今は24時間気軽にできてしまいます.そんな時,善意で答える立場としては,単なる知り合いの医師レベルで返信すべきか,ドクターG的な総合診療医の意見を期待されたのか,義理がある人であれば誠心誠意対応すべきか…と悩むわけです.臨床では普通のことですが,目の前に困っている,苦しんでいる人がいるとほっておけない,という行動原理が働きます.極端な話ですが,沢山の聴衆がいる講演が控えていても,かかりつけの患者さんから1本電話が来れば対応せざるを得ないというのが臨床だと思います.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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