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雑誌目次

雑誌文献

公衆衛生80巻3号

2016年03月発行

雑誌目次

特集 心疾患最前線

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ページ範囲:P.157 - P.157

 心疾患は,悪性新生物に次いで,死因順位第2位の多数の死亡者を出している疾患です.2013年の心疾患による死亡者数は約20万人であり,死亡者全体の約16%を占めています.心疾患による死亡者の中では急性心筋梗塞が約4万人,その他の虚血性疾患が約3万5千人となっていて,両者で心疾患死亡の38%を占めています.虚血性心疾患はがんや脳卒中,糖尿病などとともに生活習慣病のひとつに数えられ,予防が重要であり,対策が必要な疾患です.死亡診断書の記載についての指示の注意書きが追記された影響で心疾患死亡数が1994年に急減していますが,その年を除けば心疾患死亡数はほぼ一貫して増加を続けており,この点でも心疾患対策の必要性を示しています.
 以上の点を考慮して,今回,あらためて,心疾患,特に心筋梗塞をはじめとする虚血性心疾患に焦点を当てて,新たな知見を中心に特集を企画しました.

日本における心疾患死亡の現状と動向

著者: 綿引信義

ページ範囲:P.158 - P.164

はじめに—人口構造と死因構造の変化
 総務省「人口推計」(2014年10月1日現在)によると,わが国の総人口は1億2,708万人(男6,180万人,女6,528万人)となっており,2011年から4年連続で減少するとともに,人口構造ならびに人口の地理的分布も変化してきている.
 65歳以上の高齢者人口は,2012年に3,000万人を超え,2014年には過去最高の3,300万人となり,総人口に占める割合(高齢化率)も26.0%となっている.その内訳をみると,前期高齢者(65-74歳)人口は1,708万人,後期高齢者人口(75歳以上人口)は1,592万人となり,高齢者数が増加するとともに高齢化率も上昇し,わが国の総人口減少・長寿高齢社会が進行していることがわかる.また,都道府県別の人口増減率をみると,前年に比べ増加している都県は東京都,沖縄県,埼玉県を含め7都県であった.一方,40道府県の人口が減少しており,その中で秋田県,青森県,次いで高知県の減少率が大きくなっていた.
 このような社会において,わが国の死因構造も大きく変わってきている.1985年以降2013年までの主要死因は悪性新生物,心疾患,脳血管疾患および肺炎である.2013年の人口動態統計の死因簡単分類をみると,循環器疾患である心疾患と脳血管疾患の死因順位は第2位と第4位を占め,全死亡数(126万8,436人)に対する心疾患による死亡数(19万6,723人)割合は15.5%,脳血管疾患による死亡数(11万8,347人)割合は9.3%であった.両疾患をあわせると24.8%(31万5,070人)となり全死因の4分の1を占めている.加えて,心疾患は,健康日本21(第2次)においても生活習慣病といわれる心疾患死亡の約4割を占める虚血性心疾患と脳血管疾患の年齢調整死亡率(人口10万対)の減少が目標値に設定されているように,健康寿命の延伸と都道府県格差の縮小を実現するためにその予防対策,治療およびQOLの向上が重要な疾患と言える.
 心疾患は1985年以降第2位の死因となり増加の一途をたどっていたが,1995年に心疾患と脳血管疾患の死亡数・死亡率に大きな変化がみられた.それは,ICD10(国際疾病分類第10回改正)の適用と,「心疾患」は1995年1月施行の新しい死亡診断書において,「死亡の原因欄には,疾患の終末期の状態としての心不全,呼吸不全等は書かないでください」という注意書きの事前周知の影響により1994年と1995年に低下したが,それ以降は上昇傾向が続いている.
 そこで,本稿では,1985年以降2013年までの当該年の人口動態統計,10月1日現在推計人口および国勢調査結果を用い,心疾患全体と虚血性心疾患の死亡数・死亡率の年次推移をはじめ,性・都道府県別年齢調整心疾患死亡率の推移,そして,虚血性心疾患の発症率もみながら,わが国の心疾患の死亡数・死亡率の現状と動向について記述する.

心筋梗塞の発症登録からみた地域の現状と課題

著者: 和根崎真大 ,   渡邉哲 ,   西山悟史 ,   平山敦士 ,   川崎良 ,   深尾彰 ,   久保田功

ページ範囲:P.165 - P.171

 「山形県急性心筋梗塞発症登録評価研究事業(以下,Yamagata AMI Registry)」は1993年4月に発足し,山形県内の全医療機関の協力のもと,急性心筋梗塞(acute myocardial infarction;AMI)患者の登録を行っている.1993年4月から2013年12月までの21年間で急性心筋梗塞登録総数は10,595例に達した.
 本稿では,Yamagata AMI Registryから見えてくる山形県のAMIの現況について,登録者数,平均年齢,冠血行再建術施行率と急性期死亡率などの年次推移を示し考察する.

日本人の虚血性心疾患の危険因子と発症予防

著者: 今野弘規 ,   磯博康

ページ範囲:P.172 - P.178

 日本人は,欧米人と比較して脳卒中の発症・死亡は多いが,心筋梗塞などの虚血性心疾患は少ないという特徴がある.病理学的には,日本人の動脈硬化は,冠動脈など太い動脈に起こる粥状硬化よりも,高血圧による穿通枝動脈など細い動脈に起こる細動脈硬化が多い1).さらに,同じ心筋梗塞でも,日本の都市部では心筋層は塊状壊死型で冠動脈は脂質に富むプラークを伴うタイプが多く,農村部では心筋層は散在壊死型で冠動脈の起始部から末梢部にかけて石灰化を伴うタイプが多い2).われわれが長年継続している地域疫学研究(CIRCS)(※)の結果によると,心筋梗塞発症率は,都市近郊の中年男性で増加傾向にある一方,農村部ではその傾向は認められていない3)(※以下,本稿中に出てくる略語の一覧を表1にまとめる).
 日本人の虚血性心疾患の発症率について,CIRCSを例にすると,1975〜1987年をベースラインにした秋田・大阪・茨城・高知の4地域における40〜69歳住民を2003年まで追跡したコホート研究4)において,虚血性心疾患の年間千人当たり発症率は男性1.5人,女性0.5人程度で,致死的虚血性心疾患(発症後28日以内の死亡)は,全発症者の4人に1人程度であった.したがって,コホート研究で十分な検出力を得るためには,相当の追跡年数あるいは対象者数が必要とされることから,近年は従来の単独のコホート研究(久山町研究,CIRCS,吹田研究など)のみならず,10万人規模の共同研究(JACC,JPHC,茨城健康研究など)や既存のコホート研究のメタアナリシスや統合研究(JALS-ECC,EPOCH-JAPANなど)も行われるようになり,それらの成果が海外の学術雑誌に相次いで報告されるようになった.本稿では,そうした最近の国内のコホート研究の知見を中心に,日本人の虚血性心疾患の危険因子について概説する.

主要な心臓病と内科治療の最新情報

著者: 本田泰之 ,   永井利幸 ,   安田聡

ページ範囲:P.179 - P.186

 急速な高齢化と食生活の欧米化に伴い,本邦における循環器疾患は増加の一途をたどっている.この数十年の間には抗血小板剤,ACE阻害薬,β遮断薬,抗アルドステロン薬などに代表される薬物治療の進歩に加えて,1990年頃より虚血性心疾患に対する冠動脈ステントが普及し,不整脈に対するペースメーカー,植込み型除細動,高周波カテーテルアブレーション,弁膜症に対するカテーテル治療,重症心不全に対する心臓再同期療法や補助人工心臓など,循環器関連のデバイス治療も確実に進歩を続けている.治療の選択肢は広がってきている一方で,Evidence Based Medicine全盛時代の今日においては,エビデンスに基づいた,これら治療法の選択を適切に行ってゆく必要がある.
 本稿では,虚血性心疾患を中心とした主要な心臓病について疾患別に病態,最新治療に関する知見,そして循環器関連デバイスの普及率について,最新のエビデンスをふまえて概説する.

心臓病の外科治療の最新情報

著者: 藤田知之 ,   小林順二郎

ページ範囲:P.187 - P.191

 心臓外科領域では次々と新しい治療法が開発され,患者さんにとっては治療法の選択肢が広がりつつある.特に弁膜症の治療においては近年大きく変化してきた.最近はリウマチ性心疾患による弁膜症が減少傾向にあり,僧帽弁閉鎖不全症と大動脈弁狭窄症が増加している.今までは弁置換が第一選択であったこれらの病気に対して,弁形成術,さらには小さな切開創で手術を行うMICS(ミックス)手術や,ロボット手術,カテーテルで弁置換を行うTAVI(タビ)などが行われるようになった.また,冠動脈疾患に対する外科治療である冠動脈バイパス術も低侵襲を目指して変遷している.

心臓リハビリテーション

著者: 安達仁

ページ範囲:P.193 - P.197

 心臓リハビリテーションは,健康保険上「脳血管疾患」「運動器」「呼吸器」と同じ範疇に収載されており,また名称に「リハビリテーション」とつくため,理学療法を中心とした機能回復訓練と考える人が多い.しかし,「心臓リハビリテーション」の根幹は理学療法的な手技ではなく,運動療法と患者教育を用いた心臓病の治療である.本稿では,心臓リハビリテーションの理論と実践について示す.

過重労働と脳・心臓疾患

著者: 藤田雅史 ,   上松正朗

ページ範囲:P.198 - P.202

 急性心筋梗塞や狭心症といった心疾患や脳梗塞,くも膜下出血などの脳疾患はわが国の死因第2位,第3位であり,循環器疾患としてみると死亡原因の28.3%を占め,悪性新生物死亡(30.1%)に匹敵する(2005年).しかも,勤労者の中・高齢者において発症頻度が高い疾患であり,発症してしまうと突然働き盛りを襲うことから死亡(過労死を含む)もしくは後遺症による社会的経済的損失は大きく,その発症予防対策の確立は急務である.従来,高血圧や糖尿病といった生活習慣病が脳および心疾患の危険因子とされている中で,過労や精神的ストレスとの関連が大きいと推測されており,逆に労働をストレスの少ないものに改善することによりある程度の予防も可能と考えられる.よって勤労者特有の危険因子がないかを認識することは必要なことと考え,今回われわれ医療現場で勤務している職員を対象にいかにまたどのような因子が脳・心臓疾患の発症に寄与しているかを検討した1)

心疾患予防のための食生活

著者: 須賀ひとみ

ページ範囲:P.203 - P.207

 虚血性心疾患のリスクファクターには,肥満,高血圧,糖尿病,脂質異常症,メタボリックシンドローム1)などがある.これらのリスクファクターおよび虚血性心疾患の予防には適切なエネルギーおよび栄養素の摂取が不可欠である.
 日本人成人を対象としたエネルギー,栄養素の適切な摂取量の目安としては「日本人の食事摂取基準」がある.最新版の「日本人の食事摂取基準(2015年版)」(以下,食事摂取基準2015年版とする)は,これまでの策定目的であった生活習慣病発症の予防に加え,保健指導レベルの生活習慣病を有する者の重症化予防も視野に入れて策定されている2).以下,健康人および保健指導レベルの生活習慣病を有する者における虚血性心疾患の一次予防のための食生活について,食事摂取基準2015年版に沿って述べる.要治療レベルの生活習慣病を有する者に関しては,食事摂取基準2015年版とあわせてその疾患の治療ガイドライン等を参照いただきたい.

視点

なかなかいいぞ公衆衛生

著者: 田原なるみ

ページ範囲:P.154 - P.155

 「あまり堅苦しく考えずに,自分たちの生活全般が公衆衛生と考えればいいんだ」
 国立公衆衛生院(現,保健医療科学院)で指導していただいたN先生のお言葉も支えとなり,気がつけば衛生行政で仕事をして30年以上がたった.

連載 衛生行政キーワード・105

循環器疾患対策

著者: 髙山啓

ページ範囲:P.208 - P.211

成人病から生活習慣病へ
 かつて心臓病,脳卒中,がんなどの40〜60歳位の働き盛りに多い疾患は成人病と呼ばれ,年齢の上昇に従ってその頻度が増えるため,人口の高齢化に伴い有病者が増加すると考えられた.一方で喫煙,食生活や運動などの生活習慣とこれらの疾患の関係が明らかとなり,生活習慣の改善によりある程度予防が可能であることが解明されてきたため,1996(平成8)年,当時の公衆衛生審議会の意見具申「生活習慣に着目した疾病対策の基本的方向性について」において,がん,循環器疾患,糖尿病などには,生活習慣に着目した生活習慣病という名称が新たに導入され,「食習慣,運動習慣,休養,喫煙,飲酒等の生活習慣が,その発症・進行に関与する疾患群」と定義された.
 虚血性心疾患は,高血圧症,脂質異常症,糖尿病,喫煙などの危険因子が共通することから,脳血管疾患と合わせて循環器疾患と総称される.循環器疾患を含む生活習慣病は効果的な発症予防が期待できることから,厚生労働省では,一次予防から三次予防までの総合的な対策を実施してきた.生活習慣病予防においては,早期発見・早期治療を重視する二次予防中心の従来のハイリスク・アプローチに加えて,生活習慣を見直し,環境改善などにより病気の発生そのものを予防する一次予防によるポピュレーション・アプローチの重要性が認識されるようになり,生活習慣病の認識を国民に啓発し,行動に結びつけることが重要と考えられるようになった.

いま,世界では!? 公衆衛生の新しい流れ

これからのグローバルなNCD予防を考える

著者: 長谷川みゆき ,   磯博康

ページ範囲:P.212 - P.216

 多くの途上国が近年急激に経済的成長を遂げるに伴い,世界の疾患構造が転換期を迎えている.感染症ではなく心血管疾患(cardiovascular disease;CVD)が障害調整生命年(disability-adjusted life year;DALY)リストのトップとなり,国際保健の理念や優先順位,手法は変わりつつある.世界の平均寿命は70歳に近づき,5歳以下の人口を60歳以上の人口が上回る「少子高齢化」現象がみえるようになった1).こうした背景から,中高年期に多い生活習慣病(NCDs:非感染性疾患)は世界の成人死亡要因の上位を独占するようになった2).一方で,多くのCVDは,世界保健機関(WHO)の推奨するNCDリスク対策,すなわち禁煙,健康的な食事の摂取,身体活動量の増加,アルコール摂取量の抑制で予防できることがわかっている.さらに,CVD患者ならびに高血圧や糖尿病といったハイリスク者は,より早期からリスクに対する適切な治療を受ける必要がある3)
 本稿では,世界の心疾患の疫学的な特徴と動向ならびにWHOが重点を置き始めたNCD予防の取り組みについて述べる.

リレー連載・列島ランナー・84

死に逝く人の「孤独」について

著者: 高山義浩

ページ範囲:P.217 - P.219

伯父の「孤独死」
 マンションの一室で,伯父が独り亡くなっているのが見つかりました.近年,誰にも看取られずに死亡する人は,全国で毎年3万人と言われますが,これだけ身近でもあると,しみじみ…「そういう時代なんだなぁ」と感じてしまいます.
 全国紙の外信部でアジア中心に活躍し,定年後は国際系の大学教授を務めましたが,お世辞にも人づきあいが上手いとは言えない人でした.私にとっては,最初に文章の書き方を教えてくれた人です.中学3年生のとき,ある歴史についての考察を一本の論文に仕上げるまで丁寧に指導してくれたのが,いまの私に引き継がれています.書き続けることの大切さも教えてくれました.

[講座]子どもを取り巻く環境と健康・13

環境化学物質曝露による内分泌系への影響—(2) 性ホルモン

著者: 荒木敦子 ,   伊藤佐智子 ,   岸玲子

ページ範囲:P.221 - P.227

 内分泌ホルモンは,生体内の特定の器官で合成・分泌されて,血液を介して運ばれ,別の器官で効果を発揮する.環境中に存在する化学物質のうち,内分泌系に影響を及ぼすことにより,生体に障害や有害な影響を引き起こす外因性の物質が内分泌かく乱化学物質(いわゆる環境ホルモン)である.本稿では連載第12回(甲状腺機能)に引き続き,環境化学物質への曝露による内分泌への影響の代表例として,母の胎内での曝露による児の性ホルモンへの影響について最近の知見を紹介する.

予防と臨床のはざまで

文天シンポジウム—重症化予防

著者: 福田洋

ページ範囲:P.228 - P.228

 健康診断に携わるスタッフの勉強会として,医療法人社団同友会内で始まった「文天ゼミ」ですが,今では医療スタッフのみならず,健康保険組合や企業の産業保健スタッフも参加し,健康診断に関わる最新医療情報や,予防医学のエッセンス,健診データの統計やプレゼン手法などを学ぶ場となっています.そんな文天ゼミも66回を数え,今回(2015年10月27日,文京シビックセンター)は朝まで生テレビ風の大激論をしよう!ということに.題して「文天シンポジウム〜激論! どうする? 重症化対策」.現場での方策になかなか結論が出にくい重症化対策をテーマに選び,立場の違うシンポジストをコの字型に並べた机に配置し,2時間たっぷり議論するという趣旨で行いました.実は企画を立てた時点で,田原総一郎さんご本人に体裁を真似する許可をいただきました.オープニングは音楽を流しながら一人ずつ拍手で入場.議論を活性化させるため,発言は1人1分以内,できれば30秒以内,本音の会話のキャッチボールで進行するというルールで進めました.
 議論の前に私から,特定健診・保健指導からデータヘルスまでの最近の生活習慣病対策のトレンドを示し,重症化対策について「糖尿病や高血圧などの生活習慣病のハイリスク者に対して,医療機関と連携して生活習慣病の進行や合併症の発病を抑える取組み」との定義を説明しました.同じ生活習慣病対策でも,特定保健指導のメインターゲットである生活習慣の見直しで改善が期待される対象と違い,早急に医療機関受診の必要があるリスクの高い対象であることを強調し,そんな放っておけない働き盛りの人に何をすべきかを議論しました.

映画の時間

—わたしは,この熱い大地から生まれた.—火の山のマリア

著者: 桜山豊夫

ページ範囲:P.229 - P.229

 乳児死亡率の減少とともに,「すべての子を望まれる子に“every child;a wanted child”」も,重要な母子保健の目標のひとつです.これを実現するためには,「望まない妊娠」を防ぐことが必要です.近年,その増加が問題となっている「児童虐待」においても,「望まない妊娠」が児童の虐待につながる恐れが高いと考えられており,「望まない妊娠」を防止することが虐待予防のうえでも重要です.今月ご紹介する『火の山のマリア』は,「望まない妊娠」が,重要な要素となっている映画です.
 舞台はグアテマラのコーヒー農園です.マリアは両親と3人暮らし.マヤ人である彼らはグアテマラの公用語であるスペイン語を話せず,貧困のなかにあります.両親は土地を借りてコーヒー農園の仕事をしている小作人のような立場です.しかし天候不順や,農園へ毒蛇が侵入するなどで,コーヒー栽培が不可能な状況が続きます.そんなとき,土地の持ち主で農園経営の責任者とマリアとの結婚話が持ち上がります.彼は妻に先立たれた子連れの再婚ですが,マリアが結婚すれば両親の生活は安定します.しかしこの結婚に,マリアは必ずしも乗り気ではありません.

「公衆衛生」書評

—松田 晋哉 著—地域の事情に応じた医療提供体制を創造するために『地域医療構想をどう策定するか』 フリーアクセス

著者: 伊関友伸

ページ範囲:P.220 - P.220

 本書の著者は,厚生労働省の「地域医療構想策定ガイドライン」の基盤となるデータ整備で中心的な役割を果たしている産業医科大学教授の松田晋哉氏である.
 松田氏は,地域医療構想の目的は病床削減ではなく,地域の実情に応じた医療提供体制を関係者間の合意に基づいて作ることであると指摘する.低成長下の少子超高齢社会における医療制度の改革は,国民を含む関係者全員に何らかの痛みをもたらすものにならざるを得ない.そもそも,現状維持では,なぜうまくいかないのか.地域の医療をめぐる課題をデータで客観的に把握し,それをどのような理念に基づいて解決するかについて合意形成を図ることが,改革を進めていくための前提条件になる.

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次号予告 フリーアクセス

ページ範囲:P.231 - P.231

あとがき/投稿申し込み書/著作財産権譲渡同意書 フリーアクセス

ページ範囲:P.232 - P.232

 本号は心疾患について特集しました.綿引信義氏には日本における心疾患全体ならびに生活習慣病とされる虚血性心疾患の死亡の動向と現状,対策を解説いただきました.和根崎真大氏らには,山形県の急性心筋梗塞発症登録評価事業から見えてくる発症率や危険因子,地域差,男女差,年齢差,季節性や時間帯,予後などを報告いただきました.今野弘規氏らには,最近の国内の疫学研究の知見を中心に,日本人に特徴的な虚血性心疾患の危険因子などを解説いただきました.
 本田泰之氏らには心臓病の内科治療の最新情報を,藤田知之氏らには外科治療の最新情報を解説いただきました.治療法が次々と開発されるなかで,個々の患者にあった治療法を追求し適切に選択することの重要性が述べられています.また安達仁氏には運動療法・食事療法・生活習慣の改善を3本の柱として実施する心臓リハビリテーションの概要,効果,治療の実際について解説いただきました.

基本情報

公衆衛生

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1170

印刷版ISSN 0368-5187

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