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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生80巻4号

2016年04月発行

予防と臨床のはざまで

第3回国際ヘルスリテラシー学会

著者: 福田洋1

所属機関: 1順天堂大学医学部総合診療科

ページ範囲:P.268 - P.268

文献概要

 2015年11月9日〜11日,第3回国際ヘルスリテラシー学会が台湾の台南市で開催されました.昨年に続いて2回目の参加です.Asian Health Literacy Association(AHLA http://www.ahla-asia.org)主催のアジア中心の国際学会ですが,アジアだけでなくヨーロッパやオーストラリアから,世界のヘルスリテラシー研究のキーパーソンが参加しているのが特徴です.オープニングでは,AHLA理事長,学会長,台湾厚生省の挨拶に加え,オーガナイザーのPeter Chang教授(台湾)からこの学会の歴史についてお話がありました.「我々は,最初はヘルスリテラシー研究の第一人者であるJurgen Pelikan教授(オーストリア)やKristine Sorensen教授(オランダ)を知らない状態から学び始めたが,今ではその先生方も一緒に集い,アジアでのヘルスリテラシー調査をするまでになった.ここに集まった仲間で山を動かし,世界を変えよう!」と高らかに学会の開始が宣言されました.オープニング後には集合写真の撮影プログラムもあり,それだけ人の繋がりを大事にしている感じがします.
 今年のテーマは,“Health Literacy and Healthcare Efficiency(ヘルスリテラシーとヘルスケアの効率)”.基本的な概念や尺度の話題が多かった前回と比べ,より多様なヘルスケアの場での活用に主眼が置かれている印象です.国際学会では自分の発表が終わるまで落ち着かないものですが,今回は初日最初のセッション“Health Policy and Health Literacy”で,一般演題ではトップバッターでの発表でした.まだ英語に耳も口も追いつかない状態でしたが,日本の職域でのヘルスリテラシーと生活習慣病の関連やヘルスプロモーションへの応用について発表いたしました.背景として日本の産業保健制度や,職域の生活習慣病対策についても説明しました.地域や医療機関に比べると職域からの報告は少なく,注目していただけたと思います.そして同じセッションでは,Peter Chang教授から今回の学会のトピックの1つであるアジア5カ国のヘルスリテラシーAsia Health Literacy Study(AHLS)の速報がありました.先行しているヨーロッパでの調査(HLS-EU)をお手本に,アジアで初めてヘルスリテラシーの国際比較を行った調査で,インドネシア,ミャンマー,カザフスタン,台湾,ベトナムの15歳以上の9562人の市民を対象とした断面調査による報告です.興味深かったのは,発表内で日本の中山和弘教授(聖路加国際大学)のデータも引用され,日本は今回の5カ国のどの国よりもヘルスリテラシーが低い結果だったことです.調査方法や対象が同一ではなく単純な比較はできませんが,文化や文脈も違う中での国際比較の難しさも感じます.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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