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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生80巻8号

2016年08月発行

文献概要

特集 地域包括ケアの進化

地域包括ケアシステムの進化の経緯と将来像

著者: 田中滋1

所属機関: 1慶應義塾大学

ページ範囲:P.550 - P.556

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はじめに:人類が初めて直面した要介護者増大
 20世紀後半の経済的先進諸国では,高齢期への到達が,一部の富裕かつ体力に恵まれた人だけに起きる珍しい事象ではなくなった.多くの住民にとっても65歳超えが当たり前となった事態は,人類史上初の現象である.経済的先進国において長寿が一般化した理由は,(国により時期の違いはあるが)19世紀後半から20世紀後半に起きた下記①〜④の条件の重なりで説明できる.
①特権層や富裕層のみならず,大部分の住民の平均的な栄養水準が著しく向上した.
②上下水道や予防注射に代表される公衆衛生体制が整備された.
③近代医学の開花と,それを用いる医療提供体制が発達・普及した.
④③がもたらした「治す」医療を,医療保険制度など社会保障制度の適用拡大によって,多くの人が利用可能になった.
 日本の数値を見てみよう.平均寿命の長寿化だけでなく,高齢者の死亡率も1950年と比べて著しく低下した.2014年には,95歳未満のすべての高齢者年齢区分で死亡率は半世紀前の半分以下となっている(図1).その結果,同じく1950年を比較の基準年にとると,2015年には,65歳以上人口は8.3倍,75歳以上は15.5倍,80歳以上は実に27.4倍と,驚くべき増加を示してきた(図2).
 長寿は昔から人類の夢だったはずである.ところが,長寿を実現した国々は共通の課題に直面した.それは,元気高齢者だけではなく,虚弱高齢者数も増加し続けるという問題に他ならない.つまり,健康寿命の伸びが寿命の伸びに追いついていないのである.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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