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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生81巻1号

2017年01月発行

文献概要

特集 歯科口腔保健の推進

「オーラルフレイル」の予防—医科・歯科連携の必要性

著者: 飯島勝矢1

所属機関: 1東京大学高齢社会総合研究機構

ページ範囲:P.27 - P.33

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高齢者の「食力」向上から健康長寿を再考する
 国民,特に高齢者の食事摂取に対する認識はどこにあるのか.どの高齢者に生活習慣病を厳格に管理するためにカロリー制限や塩分制限をやるのか,一方で,どの高齢者のどの時期から従来のメタボリック症候群(以下,メタボ)の概念(言い換えればカロリー制限の意味にもなる)からどう切り替えてもらうべきなのか.このスイッチング(考え方のギアチェンジ)は,今後フレイル対策を進める中で非常に重要な鍵になる.すなわち地域ごとの従来の介護予防事業を今まで以上に底上げし,さらに専門職の支援活動(栄養,口腔,服薬,等)に加え,国民目線での活動(自助・共助・互助)を軸とするまちづくりの中で,「しっかり噛んでしっかり食べる」という原点をいかに各国民が改めて自分事化し,大きな国民運動にまで発展させ,最終的には包括的な介護予防等の施策改善に資する流れにつなげたい.
 高齢者の食の安定性,すなわち「食力(しょくりき)」がどのような要素によって下支えされているのかを再考してみよう.図1に示すように1),残存歯数や咀嚼力,嚥下機能,咬合支持も含めた歯科口腔機能は一番重要であると同時に,複数の基礎疾患(多病)による多剤併用(polypharmacy)は知らないうちに食欲減退につながる危険性も高い.また,口腔を含む全身のサルコペニア(筋肉減弱症)の問題,さらには栄養(栄養摂取・バランスの偏り等の食事摂取状態だけではなく,食に対する誤認識も含まれる)などの要素も関与は大きい.そして,それら以上に重要な要素が「社会・人とのつながり,生活の広がりに代表されるような社会性・生活・ライフイベントやうつ等の精神心理面・認知機能,経済的問題」等の要素である.当然,その中には孤食か共食かなどの食環境の変化も含まれる.以上のように,高齢者の食を考え直してみると,高齢者が低栄養に傾いてしまう原因は多岐にわたる.

参考文献

1)平成24〜26年度 厚生労働科学研究費補助金(長寿科学総合研究事業)「虚弱・サルコペニアモデルを踏まえた高齢者食生活支援の枠組みと包括的介護予防プログラムの考案および検証を目的とした調査研究」報告書 未発表
2)Xue QL, Fried LP, et al:Initial manifestations of frailty criteria and the development of frailty phenotype in the Women's Health and Aging Study Ⅱ. J Gerontol A Biol Sci Med Sci 63(9):984-990, 2008
3)Kuroda A, Iijima K, et al:Eating Alone as Social Disengagement is Strongly Associated With Depressive Symptoms in Japanese Community-Dwelling Older Adults. J Am Med Dir Assoc 16(7):578-585, 2015
4)平成25年度 老人保健健康増進等事業「食(栄養)および口腔機能に着目した加齢症候群の概念の確立と介護予防(虚弱化予防)から要介護状態に至る口腔ケアの包括的対策の構築に関する研究」報告書 平成26年3月
5)平成27年度 老人保健健康増進等事業「口腔機能・栄養・運動・社会参加を総合化した複合型健康増進プログラムを用いての新たな健康づくり市民サポーター養成研修マニュアルの考察と検証(地域サロンを活用したモデル構築)を目的とした研究事業」報告書 平成28年3月

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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