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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生81巻1号

2017年01月発行

投稿・原著

地理情報システムを用いた周産期医療に係る1km2メッシュ単位の需給指標の開発

著者: 石川雅俊1

所属機関: 1国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野

ページ範囲:P.67 - P.73

文献概要

要旨
 従来の二次医療圏単位の需給分析では,ある医療圏で供給が不足し,周辺の二次医療圏がそれを十分にカバーしている場合,広域でどのように評価してよいかという課題があった.
 そこで,地理情報システムを用いて,妊婦の住所地から分娩医療機関への受診アクセスを考慮した,周産期医療の需給状況を評価する新指標「周産期医療密度指数」を開発した.
 周産期医療密度指数は,出生住所地の1km2メッシュ単位の需要(出生数)と,時間距離を踏まえた供給(分娩数)が同じ値であった場合に,需給バランスが取れていると解釈される1km2メッシュ単位の需給指標である.
 周産期医療密度指数の二次医療圏単位の平均値(±標準偏差)は0.94(±0.23),中央値0.97,最大値は気仙(岩手県)の1.48,最小値は南檜山(北海道)の0.05であった.分娩件数がゼロの二次医療圏であっても,受診アクセスのよい周辺二次医療圏の影響を受けて周産期医療密度指数は一定水準に達していた.
 本研究では分娩医療機関からの運転時間について,60分圏内の出生数について短い順に15分単位で重み付けを行ったが,時間距離と医療機関選択の関係の検証は今後の課題である.
 周産期医療密度指数は,居住地の近くで安心・安全なお産を受けたいという妊婦の需要と,それに対する周産期医療の供給状況をより正確に反映した指標であると考えられる.また,本手法は,周産期医療にとどまらず各種疾病や医療資源の需給分析への応用も可能と考えられる.

参考文献

1)厚生労働省:周産期医療体制整備指針.2010
2)河原和夫:現行医療計画の問題点について.医療計画の見直し等に関する検討会,2011
3)石川雅俊,他:日本の医療提供の地域偏在の見える化.社会保険旬報2582:12-20, 2014
4)石川雅俊,他:二次医療圏からみた周産期医療提供体制の現状と今後の方向性について〜アクセスや将来需要の視点を踏まえて〜.持続可能な周産期医療体制の構築のための研究(厚生労働科学特別研究事業),2015
5)井伊雅子,別所俊一郎:医療の基礎的実証分析と政策:サーベイ.フィナンシャル・レビュー80:117-156, 2006
6)野口晴子:医療資源の偏在が受診行動範囲,診療日数,医療費に与える影響について—国民健康保険レセプトデータに基づく実証的検証—.季刊社会保障研究46(3):217-234, 2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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