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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生81巻10号

2017年10月発行

文献概要

特集 薬剤耐性(AMR)対策

食用動物由来薬剤耐性菌の現状と対策

著者: 田村豊1

所属機関: 1酪農学園大学動物薬教育研究センター

ページ範囲:P.810 - P.815

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はじめに
 抗菌薬は医学のみならず獣医学分野でも盛んに利用されており,特に,安価で安全な畜産物の安定的な供給に大きく貢献してきた.しかし,抗菌薬が汎用されることに伴って,薬剤耐性菌が選択・増加したことも事実である.1969年に食用動物由来耐性菌の人の健康への影響を最初に指摘した「畜産および獣医療における抗生物質使用に関する共同委員会」の報告書,いわゆる“Swann Report”が公表されて以来1),食用動物における抗菌薬の使用に関連する耐性菌の出現は,国際的な問題として取り上げられるようになった.その動きは1990年代に入って本格化し,世界保健機関(World Health Organization:WHO),国連食糧農業機関(Food and Agriculture Organization:FAO),国際獣疫事務局(World Organization for Animal Halth:OIE)などの国際機関が食用動物由来耐性菌対策に関する会議をたびたび開催している.
 従来,医療および獣医療における耐性菌対策は基本的に,それぞれ独立した対応が図られてきた.ところが,2015年5月にWHO総会において採択されたGlobal action plan on antimicrobial resistance(グローバル行動計画)2)は耐性菌対策の基本的な考えを“One Health approach”とした.その後に開催されたG7サミットでもこれが支持されたことから,ヒト・動物・環境を包含した耐性菌対策は世界的な活動へと進展している.上記の動きに連動して,2016年4月に内閣府から「薬剤耐性(Antimicrobial Resistance;AMR)対策アクションプラン(2016-2020)」3)(以下,AMR行動計画)が発出され,今後5年間の活動内容が決定した.これにおいてもOne Health approachに基づく戦略的目標が掲げられており,地球規模でのAMR対策の大きなうねりの中で,動物分野も積極的に対応をすることが求められている.
 本稿は,わが国の食用動物由来耐性菌に対する対策とともに,食用動物由来耐性菌の現状を紹介する.One Healthの一角を占める動物分野の現状を読者の皆さまに広く認識していただきたいと願っている.

参考文献

1)動物用抗菌剤研究会:英国における家畜用抗生物質の使用とその問題点Suwann Report(1969).動物用抗菌剤研究会報35:39-92, 2013
2)WHO:Global action plan on antimicrobial resistance. http://www.who.int/antimicrobial-resistance/global-action-plan/en/
3)内閣府:薬剤耐性(AMR)対策アクションプラン2016-2020.http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/0000120769.pdf
4)WHO:Use of quinolones in food animals and potential impact on human health, Report and proceedings of a WHO meeting, Geneva, 2-5 June 1998
5)動物医薬品検査所:薬剤耐性菌対策.http://www.maff.go.jp/nval/tyosa_kenkyu/taiseiki/index.html
6)大倉尚子:薬剤耐性菌の食品健康影響評価.日獣会誌70:84-88, 2017
7)動物医薬品検査所:動物用抗菌性物質製剤のリスク管理措置指針.http://www.maff.go.jp/nval/risk/title.html
8)OIE:OIE International Standards on Antimicrobial Resistance. pp17-27, 2003
9)農林水産省:畜産物生産における動物用抗菌性物質製剤の慎重使用に関する基本的な考え方.http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/yakuzi/pdf/prudent_use.pdf
10)Hosoi Y, et al:Use of veterinary antimicrobial Agents from 2005 to 2010 in Japan. Int J Antimicrob Agents 41:489-490, 2013
11)Hiki M, et al:Decreased Resistance to Broad-Spectrum Cephalosporin in Escherichia coli from Healthy Broilers at Farms in Japan After Voluntary Withdrawal of Ceftiofur. Foodborne Pathog Dis 12:639-643, 2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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