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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生81巻10号

2017年10月発行

文献概要

連載 ポジデビを探せ!・11 ケース9:ホームレスの結核対策

青空DOTS

著者: 平山恵1

所属機関: 1明治学院大学国際学部国際学科

ページ範囲:P.850 - P.856

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日本の結核は途上国並み!?
 世界の結核患者の95%以上は発展途上国で発生している.ということは,約5%が先進国で発生しているということでもある.日本では1999年に厚生省(当時)から「結核緊急事態宣言」が発令され,“再興感染症”として行政が再び取り組むことになった.2016年現在,人口10万対の新発症率(罹患率)は15.4である.同指数が10以下の欧米諸国に比べれば20年〜30年の遅れがある.
 結核は多くの場合治療可能な病気である.しかし,完治まで最低6カ月の服薬を中断してしまう患者がいる.それは自覚症状が早期に消えるためである.WHOは事態を改善すべく,1994年に「直接観察治療短期コース(Directly Observed Treatment Short-course;DOTS)」を推進し始めた.患者を医療従事者の監視下において確実に服薬することを直接確認する.それによって,治癒率は上がることから,現在,世界中でDOTSが進められている.米国では直接服薬指導(Directly Observed Treatment;DOT)を早くから採用し,1990年代の結核患者の増加を抑え込んだ.WHOは「各国政府の強力な関与等をもってDOTSを進める」ことを奨励している.

参考文献

1)青木正和:結核の歴史—日本社会との関わりその過去,現在,未来.講談社,2003
2)平山恵:肺結核患者への聞き取りから考える対策の課題—住所不定者に注目して.都市部における一般対策の及びにくい特定集団に対する効果的な感染症対策に関する研究(主任研究者 石川信克)自治体の結核対策をいかに成功させるか—都道府県による結核対策の予防計画策定への提言を中心に(厚生労働科学研究費補助金「新興・再興感染症研究事業」)報告書.2005
3)平山恵:路上生活者の結核問題と対策—住所不定者の対話から.季刊Shelter-less 24,2005
4)斉藤礼子,他:ホームレス“青空DOTS”の意義—治療困難事例への路上におけるDOTSの経験.結核 88:429-437,2013
5)高鳥毛敏雄,他:社会経済弱者における結核対策の強化に関する研究Ⅲ 平成14年度 厚生労働科学研究費補助金「新興・再興感染症研究事業」2003
6)平山恵:マイクロティーチング.Bon Partage 137,2007 http://share.or.jp/health/knowledge/micro_teaching.html
7)前田邦義:当事者の視点—結核になって良かった.結核 86:250,2011
1)日本社会福祉士会,他(編):躍進するソーシャルワーク活動—「震災」「虐待」「貧困・ホームレス」「地域包括ケア」をめぐって.中央法規出版,2013
2)うてつあきこ:つながりゆるりと—小さな居場所「サロン・ド・カフェ こもれび」の挑戦.自然食通信社,2009
3)加納眞士:ホームレスを救援する100の方法.コイノニア社,2003
4)林真人:ホームレスと都市空間—収奪と異化,社会運動,資本—国家.明石書店,2014
5)森川すいめい:漂流老人ホームレス社会.朝日新聞出版,2015

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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