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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生81巻12号

2017年12月発行

文献概要

特集 地球温暖化対策—2020年以降の新たな国際枠組み

気候変動対策に対する日米の取り組み

著者: 山岸尚之1

所属機関: 1WWFジャパン(公益財団法人世界自然保護基金ジャパン)気候変動・エネルギーグループ

ページ範囲:P.1002 - P.1007

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はじめに
 2015年のパリ協定は今世紀後半に世界を事実上,“脱炭素化”していく方向を打ち出した.その大きな目標に向かって各国は国別目標(nationally determined contributions:NDC)と呼ばれる目標をそれぞれの国情に合わせて作り,実施することが義務になっている.2017年8月の時点で,152カ国が国別目標を国連の登録簿に登録している.
 わが国と米国はともにこの152カ国の中に含まれるが,提出後の対応は分かれている.表11)に,わが国,米国それぞれのNDCに含まれる温室効果ガス排出量削減目標を示す.わが国はNDCを提出した後の2016年5月に「地球温暖化対策実行計画」を閣議決定し,少なくとも目標達成の意思を示した.一方,米国のトランプ政権は2017年6月にパリ協定を離脱することを宣言した.後述するように,それに先立って発表された大統領令では,オバマ政権時に整備された政策を覆そうという意思が明確に表れている.トランプ政権の大統領令が完遂されれば,米国がオバマ政権時に掲げたNDCはおそらく達成されない.
 ただし,米国がオバマ政権時に導入した政策の中には,わが国が学ぶべきものも含まれている.また,米国では,カリフォルニア州の取り組みに代表されるように,連邦政府レベルでの動向のみが全てではない.
 本稿では,わが国,米国の取り組みをそれぞれ概観し,わが国の政策強化に向けての展望を示す.

参考文献

1)UNFCCC:NDC Registry. http://www4.unfccc.int/ndcregistry/Pages/Home.aspx
2)World Resources Institute:CAIT Climate Data Explorer. http://cait.wri.org/historical
3)The White House:Presidential Executive Order on Promoting Energy Independence and Economic Growth. March 28, 2017 https://www.whitehouse.gov/the-press-office/2017/03/28/presidential-executive-order-promoting-energy-independence-and-economi-1
4)栗山昭久,他:米国における火力発電所排出規制の概要と今後の動向—クリーン・パワー・プランおよび炭素汚染基準の解説,地球環境戦略研究機関(IGES),2015
5)US EPA:Carbon Pollution Emission Guidelines for Existing Stationary Sources:Electric Utility Generating Units. https://www.federalregister.gov/documents/2015/10/23/2015-22842/carbon-pollution-emission-guidelines-for-existing-stationary-sources-electric-utility-generating
6)環境省:地球温暖化対策計画.http://www.env.go.jp/press/102512.html
7)経済産業省資源エネルギー庁:平成27年度(2015年度)におけるエネルギー需給実績(確報).http://www.enecho.meti.go.jp/statistics/total_energy/
8)温室効果ガスインベントリオフィス:日本の温室効果ガス排出量データ(確報値:1990〜2015年度).http://www-gio.nies.go.jp/aboutghg/nir/nir-j.html
9)石炭.jp:石炭発電所ウォッチ.http://sekitan.jp/plant-map/
10)省エネルギーセンター:平成28年度 エネルギー使用合理化促進基盤整備事業(工場等及び荷主の判断基準遵守状況等分析並びに電子化推進に向けた調査事業)調査報告書.http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/H28FY/000132.pdf

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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