icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生81巻2号

2017年02月発行

文献概要

特集 人に死を招く動物—人・昆虫・寄生虫

介護殺人予防策の法制化が急務

著者: 結城康博1

所属機関: 1淑徳大学総合福祉学部社会福祉学科

ページ範囲:P.109 - P.113

文献購入ページに移動
 昨今,誰もが「介護殺人」という悲劇的な事件を,マスコミ報道を通して知ることとなった.毎日新聞が,介護している自分の家族を殺害した「介護殺人事件」44件を調査したところ,半数近い20件で加害者が昼夜を問わない過酷な介護生活を強いられていたそうだ1).加害者となった家族介護者は熱心に介護を続けてきたが,心身ともに疲れ果て「殺人」という行為に陥ってしまう.言うまでもないが,理由はともあれ「殺人」という行為は許されるべきではない.
 しかし,事件後の検証で,何らかの援助がなされていれば「防止」できたのではないかと評されることも多い.事前に介護サービスや被害者である高齢者が介護施設に入所していれば,「殺人」は防止できたかもしれない.いわば,一般的に「殺人」を予防することは難しいといわれる.しかし,早急な法制化によって「介護殺人予防」施策を保健制度として明確に位置づけ,「殺人」の一部である「介護殺人」を予防できるのではないだろうか.

参考文献

1)毎日新聞:介護殺人 疲れ果て 不眠,加害者の半数 毎日新聞調査(東京朝刊).2015年12月7日
2)湯原悦子:介護殺人の現状から見出せる介護者支援の課題.日本福祉大学社会福祉論集第125号,2011,p44
3)法務総合研究所:研究部報告50〜無差別殺傷事犯に関する研究〜.2013,p6
4)厚生労働省老健局:平成26年度 高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果.平成28年2月5日
5)内閣府自殺対策推進室 警察庁生活安全局生活安全企画課:平成27年中における自殺の状況.平成28年3月18日
6)厚生労働省雇用均等・児童家庭局:平成24年版 働く女性の実情.2013
7)厚生労働省老健局:平成26年度 高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律に基づく対応状況等に関する調査結果.平成28年2月5日
8)2015年9月の筆者の現場取材による.
9)平成22年度内閣府経済社会総合研究所委託事業:セルフネグレクト状態にある高齢者に関する調査—幸福度の視点から.平成23年3月
10)特集 精神障害者の地域移行からアウトリーチまで.保健師ジャーナル68(4):258-289, 2012
11)内閣府:平成28年版高齢社会白書.2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら