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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生81巻2号

2017年02月発行

文献概要

特集 人に死を招く動物—人・昆虫・寄生虫

クマによる人身被害

著者: 大井徹12

所属機関: 1石川県立大学生物資源環境学部環境科学科 2日本クマネットワーク

ページ範囲:P.154 - P.160

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 2016年の5月下旬から6月上旬にかけ,秋田県鹿角(かづの)市十和田でクマによる死亡事故が連続して4件発生した.いずれの事故でも遺体が食害されており,クマが人間を捕食するために襲撃したことが強く疑われた1).普段は森の中でひそやかに暮らし,おとなしいはずのクマがなぜこのような悲惨な事故を引き起こしたのか,加害グマは1頭だったのか複数であったのか,テレビ,新聞,雑誌などに盛んに取り上げられ,大きな社会的関心を呼んだ.
 このようなクマによる人身被害者数は,2000年以降,年平均78人に及んでいる.クマに襲われた場合,鋭い爪や牙による攻撃を強い力で受けるので,死亡事故に至らずとも傷口が複雑になるとともに,骨折を伴うことが多く,重症となる場合が多い.当然ながらこのような事故は可能な限り避けたいものである.

参考文献

1)日本クマネットワーク:鹿角市におけるツキノワグマによる人身事故調査報告書.日本クマネットワーク,2016
2)阿部永(監修):日本の哺乳類.東海大学出版会,1994
3)大井徹:ツキノワグマ—クマと森の生物学.東海大学出版会,2009
4)Kozakai C, et al:Effect of mast production on home range use of Japanese black bears. The Journal of Wildlife Management 75(4):867-875, 2011
5)自然環境研究センター(編):第6回自然環境保全基礎調査 種の多様性調査 哺乳類分布調査報告書.環境省自然環境局 生物多様性センター,2004
6)日本クマネットワーク:「ツキノワグマおよびヒグマの分布域拡縮の現況把握と軋轢抑止および危機個体群回復のための支援事業」報告書.日本クマネットワーク,2014
7)釣賀一二三,他:人身事故情報のとりまとめに関する報告書.日本クマネットワーク,2011,pp1-25
8)藤田裕貴:ツキノワグマによる人身事故の解析.日本大学生物資源科学部森林資源科学科卒業論文,2010
9)S. ヘレロ(著),嶋田みどり,大山卓悠(訳):ベア・アタックス—クマはなぜ人を襲うかⅠ,Ⅱ.北海道大学図書刊行会,2000
10)江草真治,他:戸河内町でのツキノワグマによる人身事故.森林野生動物研究会誌18:48-49, 1991
11)成田祥夫,河原淳:鹿角市でのツキノワグマによる人身事故.森林野生動物研究会誌20:8-12, 1994
12)玉置盛浩,他:ツキノワグマによる広範な顔面裂創の2例.日本口腔外科学会雑誌53(12):732-735, 2007
13)加藤雅康,他:クマ外傷の4例.日本救急医会誌22(5):229-235, 2011
14)田中宏和,他:ツキノワグマに襲撃され広範囲な顔面裂創と下顎骨粉砕骨折をきたした2例.日本口腔外科学会雑誌60(10):581-586, 2014
15)柏澄子:クマ襲撃による外傷.山と溪谷2010年12月号:176-181, 2010
16)つり人社書籍編集部(編):熊!に出会った襲われた.つり人社,2016
17)門崎允昭:2001年度に北海道で発生したヒグマによる人身事件4例.森林野生動物研究会誌28:19-25,2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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