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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生81巻3号

2017年03月発行

文献概要

特集 がん対策の加速化

個別化がん予防のためのゲノムコホート研究の意義と課題

著者: 内藤真理子1

所属機関: 1名古屋大学大学院医学系研究科予防医学分野

ページ範囲:P.206 - P.212

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従来のコホート研究とゲノムコホート研究
 一般に,予防は三段階に分けることができる.第一次予防は,集団に生じる疾患の新規発症の頻度を減少させようとするものである.健康を維持するために,発病前に予防することを目的とする.第二次予防は,健康の回復と増進のために疾患を初期段階で診断し,治療することを目的とする.第三次予防は,疾患や合併症後の機能改善を目的とし,可能な範囲で身体機能と生活の質の改善を図るものである.
 生活歴を疾患発生前に調査するコホート研究は環境要因をより正しく評価しやすく,遺伝子型により環境要因の影響が異なることを示す遺伝子環境交互作用の検討に適した,研究デザインである.従来のコホート研究は,非遺伝的なリスク因子と疾患発症を対象とした検討を中心としてきた.多因子疾患での遺伝情報を含めた解析は技術的にも困難であり,ほとんど検討がなされていなかった.しかし,2003年のヒトゲノム計画完了後,次世代シークエンサーの登場により,技術面でゲノム研究基盤が整備され,遺伝子環境交互作用を検討するゲノムコホート研究に注目が集まるようになった.時代の要請を受けて,2000年以降,国内で大規模ゲノムコホート研究が次々と立ち上げられている.

参考文献

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2)Hirayama T:Non-smoking wives of heavy smokers have a higher risk of lung cancer:a study from Japan. Br Med J(Clin Res Ed).282:183-185, 1981
3)祖父江友孝:大規模コホート研究と地域がん登録.5.三府県コホート.JACR Monograph 10:36-38, 2004
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7)科学的根拠に基づく発がん性・がん予防効果の評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究.http://epi.ncc.go.jp/can_prev/index.html
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13)次世代多目的コホート研究.http://epi.ncc.go.jp/jphcnext/
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15)東北メディカル・メガバンク機構.http://www.megabank.tohoku.ac.jp/
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24)岩崎基:日本のがん疫学研究(最新情報).癌と化学療法.43:1-7,2016
25)田宮元:ゲノムコホートのビッグデータ解析.医学のあゆみ.259:745-748,2016
26)科学技術振興機構研究開発戦略センター臨床医学ユニット:戦略イニシアティブ—超高齢化社会における先制医療の推進.2011 http://www.jst.go.jp/crds/pdf/2010/SP/CRDS-FY2010-SP-09.pdf
27)The Precision Medicine Initiative. https://www.whitehouse.gov/precision-medicine

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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