公衆衛生81巻3号

2017年03月発行

特集 がん対策の加速化

がん死亡率低減に資するためのがん検診の課題と対策—特に精度管理について

著者： 斎藤博¹ 町井涼子¹ 雑賀公美子¹

所属機関： ¹国立がん研究センター社会と健康研究センター検診研究部

ページ範囲：P.221 - P.227

はじめに
　2007年に策定されたがん対策推進基本計画(以下，基本計画)では，その後の10年間に年齢調整死亡率の20%減少を達成することが全体目標に掲げられた．20%の内訳は死亡率の自然減(10%)と，各種のがん対策による上乗せ(10%)である．この死亡率減少の大きさは，2015年時点の推計で当初の計画を下回っていたため，改めて対策を強化すべく，がん対策加速化プランが策定された(2015年12月)．今後は2017年6月以降に第3期基本計画が策定される予定である．
　基本計画では全体目標達成のための主要な対策として，喫煙対策，医療の均てん化，そしてがん検診が設定された．がん検診については死亡率減少効果の大きさを正確に推定するためのデータはごく限られているが，死亡率を下げるプロセスは比較的明確であり，第1，2期の計画ではそれを踏まえて個別目標が設定された．それら個別目標の達成度と死亡率減少を実現するための国際標準の要件を踏まえながら，特に精度管理について今後の「加速化」に向けた課題と対策を考える．

参考文献

1)Segnan N, et al:European guidelines for quality assurance in colorectal cancer screening and diagnosis, 1st ed. Publications Office of the EU, Luxemburg, 2010

2)斎藤博，他：乳がんの疫学と予防—検診による死亡率低下の可能性．臨床婦人科産科69:498-503, 2015

3)Logan RF, et al:Outcomes of the Bowel Cancer Screening Programme(BCSP)in England after the first 1 million tests. Gut 61:1439-1446, 2012

4)厚生労働省：がん対策推進基本計画．http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/gan_keikaku.html

5)厚生労働省：第1回がん検診のあり方に関する検討会資料．http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002bifz.html

6)国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」：都道府県別がん検診プロセス指標データ．http://ganjoho.jp/reg_stat/index.html

7)国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」：都道府県別がん検診受診率データ(国民生活基礎調査データ)．http://ganjoho.jp/reg_stat/index.html

8)Higashi T, et al:Evaluation and revision of checklists for screening facilities and municipal governmental programs for gastric cancer and colorectal cancer screening in Japan. Jpn J Clin Oncol 40:1021-1030, 2010

9)がん検診事業評価に関する委員会：今後の我が国におけるがん検診事業評価の在り方について(平成20年3月)．http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/03/s0301-4.html

10)生活習慣病検診等管理指導協議会の活性化　がん検診management科学的根拠に基づくがん検診推進．各都道府県の協議会の活動状況について．http://canscreen.ncc.go.jp/management/taisaku/syukanbyo.html#katsudo

11)国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」．自治体担当者のためのがん検診精度管理マニュアル．http://ganjoho.jp/med_pro/pre_scr/index.html

12)奥山絢子，他：がんの早期発見分野におけるがん対策進捗管理指標と進捗状況．癌の臨床61:155-161, 2015