公衆衛生81巻4号

2017年04月発行

特集 原子力災害と公衆衛生—避難指示解除後の地域復興に向けて

原発事故避難生活者を受け入れたいわき市の地域保健体制への影響と課題

著者： 新家利一¹

所属機関： ¹いわき市保健所

ページ範囲：P.300 - P.306

はじめに
　東日本大震災・福島第一原子力発電所の事故(原発事故)から6年が経過した．未曽有の複合災害の発生からこれまでの間，全国からさまざまな支援を受け，いわき市では市を挙げた復興への取り組みが進められてきた．本市は被災地でありながら，周辺の原発立地地域より多数の避難者の受け入れを行ってきた．さらに本市には現在，廃炉，除染そして市内の復興などのために市外から多数の労働者も来ており，さまざまな背景を持つ人が住んでいる．
　市内では災害公営住宅(地震・津波被災者等向け)1,513戸が既に完成し，入居が始まっている．また原発事故避難者向け(他自治体向け)の復興公営住宅1,768戸の建設が予定されており，494戸〔2016(平成28)年11月30日現在〕が完成しこちらも既に入居が始まっている．
　本稿では震災・原発事故からの6年間を振り返り，東日本大震災・原発事故が本市の地域保健(医療)体制へ及ぼした影響と現在の課題等についてまとめてみたい．

参考文献

1)新家利一：東日本大震災から1年(第5回)地域で何が起きたか，何が起きているのか．公衆衛生情報42:14-17, 2012

2)新家利一：東日本大震災(その後3)いわき市の地域医療・保健の現状と課題．公衆衛生情報43:22-23, 2013

3)新家利一：いわき市保健所の対応．安村誠司(編)：原子力災害の公衆衛生—福島からの発信．南山堂，pp56-66, 2014

4)新家利一：災害復興と母子保健．乳児健診・ワクチンを中心に—いわき市の経験から．小児科診療77:113-118, 2014

5)県民健康管理調査 http://fukushima-mimamori.jp/outline/

6)ふくしま心のケアセンターいわき方部センターホームページ　http://kokoro-fukushima.org/iwaki/iwaki_report/

7)久保慶祐：東日本大震災の公衆衛生上の課題への対応(応急仮設住宅長期居住者の健康調査)．平成27年度 地域保健総合推進事業 全国保健所長会協力事業報告書．

8)いわき市：モニタリング結果・除染関連．http://www.city.iwaki.lg.jp/www/sp/genre/1000500000477/index.html

9)新家利一：東日本大震災被災者支援の地域保健医療の在り方に関する保健所の役割．平成26年度 地域保健総合推進事業 全国保健所長会協力事業報告書．

10)佐藤由美，他：いわき市における結核対策．保健師・看護師の結核展望106：49-54, 2015