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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生81巻9号

2017年09月発行

文献概要

特集 アルコール健康障害対策の推進

複雑化するアルコール関連問題と多様化する支援の現状—アルコール依存症治療構造改革のすすめ

著者: 成瀬暢也1

所属機関: 1埼玉県立精神医療センター

ページ範囲:P.718 - P.723

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はじめに
 不適切な飲酒はアルコール健康障害の原因となる.本人の健康問題だけなく,飲酒運転,暴力,虐待,自殺などの様々な問題にも密接に関係している.2013年12月にアルコール健康障害対策基本法が成立し,2016年5月にはアルコール健康障害対策推進基本計画が策定された.アルコール関連問題に関して,国を挙げての具体的な取り組みが始まろうとしている.
 一方で,アルコール関連問題を巡ってはさまざまな変化も起きている.例えば,①中年男性から女性・高齢者への広がり,②健康・就労・暴力問題から飲酒運転・自殺・虐待などへの広がり,③発達障害などの併存症の多様化,④「アルコール使用障害」(DSM-5)1)診断の登場,⑤“断酒至上主義”から“飲酒量低減”への広がり,⑥“一律の治療”から“個別の治療”への移行,⑦“自助グループ至上主義”から“認知行動療法”などへの広がり,⑧“重症群・入院治療”から“軽症群・外来治療”への移行,⑨“対決・直面化”から“受容・動機づけ”への移行,⑩“抗酒薬”から“抗渇望薬”導入への広がり,などが挙げられる.
 アルコール関連問題は複雑化しており,支援は多様化している.本稿では,上記のような現状において,アルコール依存症患者に対して,どのように治療を提供すればよいのかを検討する.

参考文献

1)American Psychiatric Association(原著),日本精神神経学会(日本語版用語監修),高橋三郎,他(監訳):DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル.医学書院,2014
2)融道男,他(監訳):ICD-10精神および行動の障害 臨床記述と診断ガイドライン(新訂版).医学書院,2005
3)成瀬暢也:臨床家が知っておきたい依存症治療の基本とコツ.和田 清(編):精神科臨床エキスパート 依存と嗜癖 どう理解し,どう対処するか:pp18-48,医学書院2013
4)成瀬暢也:誰にでもできる依存症治療 わが国の薬物依存症治療の普及のために.精神誌2012特別S-357,2012
5)成瀬暢也:薬物患者をアルコール病棟で治療するために必要なこと.日アルコール・薬物医会誌44:63-77, 2009
6)原田隆之:エビデンスに基づいた依存症治療に向けて Matrixモデルとその実践.第31回日本アルコール関連問題学会教育講演資料,2009
7)エドワード・J・カンツィアン,他(著),松本俊彦(訳):人はなぜ依存症になるのか 自己治療としてのアディクション.星和書店,2013
8)成瀬暢也:物質使用障害治療の最前線(第1回)物質使用障害とどう向き合ったらよいのか 治療総論.精神療法42:95-106, 2016
9)成瀬暢也:薬物依存症の回復支援ハンドブック 援助者,家族,当事者への手引き.pp161-168,金剛出版,2016
10)成瀬暢也:誰にでもできる薬物依存症の外来治療.精神誌119:260-269, 2017
11)尾崎米厚:わが国の成人の飲酒行動に関する全国調査2013年 2003年,2008年全国調査との比較.厚生労働科学研究費補助金(循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業)WHO世界戦略を踏まえたアルコールの有害使用対策に関する総合的研究.平成25年度分担研究報告書,pp19-28, 2013
12)澤山透:心理社会的治療.カレントテラピー28:18-24,2010

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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