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特集 アルコール健康障害対策の推進
複雑化するアルコール関連問題と多様化する支援の現状—アルコール依存症治療構造改革のすすめ
著者: 成瀬暢也1
所属機関: 1埼玉県立精神医療センター
ページ範囲:P.718 - P.723
文献購入ページに移動不適切な飲酒はアルコール健康障害の原因となる.本人の健康問題だけなく,飲酒運転,暴力,虐待,自殺などの様々な問題にも密接に関係している.2013年12月にアルコール健康障害対策基本法が成立し,2016年5月にはアルコール健康障害対策推進基本計画が策定された.アルコール関連問題に関して,国を挙げての具体的な取り組みが始まろうとしている.
一方で,アルコール関連問題を巡ってはさまざまな変化も起きている.例えば,①中年男性から女性・高齢者への広がり,②健康・就労・暴力問題から飲酒運転・自殺・虐待などへの広がり,③発達障害などの併存症の多様化,④「アルコール使用障害」(DSM-5)1)診断の登場,⑤“断酒至上主義”から“飲酒量低減”への広がり,⑥“一律の治療”から“個別の治療”への移行,⑦“自助グループ至上主義”から“認知行動療法”などへの広がり,⑧“重症群・入院治療”から“軽症群・外来治療”への移行,⑨“対決・直面化”から“受容・動機づけ”への移行,⑩“抗酒薬”から“抗渇望薬”導入への広がり,などが挙げられる.
アルコール関連問題は複雑化しており,支援は多様化している.本稿では,上記のような現状において,アルコール依存症患者に対して,どのように治療を提供すればよいのかを検討する.
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