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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生81巻9号

2017年09月発行

文献概要

特集 アルコール健康障害対策の推進

医療機関におけるアルコール・薬物依存症の治療プログラム

著者: 松本俊彦1

所属機関: 1国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部

ページ範囲:P.730 - P.736

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はじめに
 筆者は2006年に薬物依存症の治療プログラムとして「せりがや覚せい剤再発防止プログラム」(Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program:以下,SMARPP)の開発に着手し,以後,今日まで普及に努めてきた.その甲斐あって,このプログラムは,2016年度の診療報酬改定において「依存症集団療法」として診療報酬の新規加算項目に追加された.これは画期的なことであった.というのも,薬物依存症に特化した医療技術が診療報酬加算の対象となったことは,わが国の保健医療史上,初めてのことだったからである.要するに,これまで医療における薬物依存症の位置付けは,病気や健康問題ではなく“犯罪”であったのである.
 そもそも,筆者がSMARPPの開発を始めた理由は,わが国における薬物依存症に対する医療的資源があまりに乏しかったからである.専門医療機関にしても,専門医にしても,それらの数は両手の指でも余るほどの数しかなく,一般の精神科医療機関にとって薬物依存症患者は,いわば“招かれざる客”であった.こうした事態を打開するには,専門医でなくとも,また,薬物依存症に対する援助経験が乏しくとも,“これがあれば患者と薬物について話し合うことができる”という,一種のコミュニケーション・ツールが必要である,と考えたのであった.しかし,いざ普及を始めてみると,いつの間にか多くの医療機関でアルコール依存症の治療にもこのSMARPPが使われるようになっており,これには正直,驚いている.
 本稿では,SMARPPの概要と理念,ならびに治療効果について解説し,最後にアルコール依存症治療ツールとしての可能性に触れる.

参考文献

1)Obert, JL, et al.:The Matrix Model of outpatient stimulant abuse treatment:History and description. J. Psychoactive Drugs, 32:157-164, 2000
2)今村扶美,他:心神喪失者等医療観察法における物質使用障害治療プログラムの開発と効果.精神医学54:921-930, 2012
3)松本俊彦,他:薬物・アルコール依存症からの回復支援ワークブック.金剛出版,2011
4)松本俊彦,他:SMARPP-24物質使用障害治療プログラム.金剛出版,2015
5)松本俊彦:薬物依存症に対する認知行動療法プログラムの開発と効果に関する研究.総括報告書.平成23年度厚生労働科学研究費補助金障害者対策総合研究事業(精神障害分野)「薬物依存症に対する認知行動療法プログラムの開発と効果に関する研究(研究代表者:松本俊彦)」総括・分担研究報告書.pp1-10,厚生労働省,2013
6)小林桜児,他:覚せい剤依存者に対する外来再発予防プログラムの開発 Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program(SMARPP).日アルコール・薬物医会誌42:507-521, 2007
7)谷渕由布子,他:薬物依存症患者に対するSMARPPの効果 終了1年後の転帰に影響する要因の検討.日アルコール・薬物医会誌51:38-54, 2016

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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