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特集 アルコール健康障害対策の推進
医療機関におけるアルコール・薬物依存症の治療プログラム
著者: 松本俊彦1
所属機関: 1国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 薬物依存研究部
ページ範囲:P.730 - P.736
文献購入ページに移動筆者は2006年に薬物依存症の治療プログラムとして「せりがや覚せい剤再発防止プログラム」(Serigaya Methamphetamine Relapse Prevention Program:以下,SMARPP)の開発に着手し,以後,今日まで普及に努めてきた.その甲斐あって,このプログラムは,2016年度の診療報酬改定において「依存症集団療法」として診療報酬の新規加算項目に追加された.これは画期的なことであった.というのも,薬物依存症に特化した医療技術が診療報酬加算の対象となったことは,わが国の保健医療史上,初めてのことだったからである.要するに,これまで医療における薬物依存症の位置付けは,病気や健康問題ではなく“犯罪”であったのである.
そもそも,筆者がSMARPPの開発を始めた理由は,わが国における薬物依存症に対する医療的資源があまりに乏しかったからである.専門医療機関にしても,専門医にしても,それらの数は両手の指でも余るほどの数しかなく,一般の精神科医療機関にとって薬物依存症患者は,いわば“招かれざる客”であった.こうした事態を打開するには,専門医でなくとも,また,薬物依存症に対する援助経験が乏しくとも,“これがあれば患者と薬物について話し合うことができる”という,一種のコミュニケーション・ツールが必要である,と考えたのであった.しかし,いざ普及を始めてみると,いつの間にか多くの医療機関でアルコール依存症の治療にもこのSMARPPが使われるようになっており,これには正直,驚いている.
本稿では,SMARPPの概要と理念,ならびに治療効果について解説し,最後にアルコール依存症治療ツールとしての可能性に触れる.
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