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特集 感染症に関するサーベイランス
日本における感染症サーベイランスの黎明
著者: 谷口清州12
所属機関: 1独立行政法人国立病院機構三重病院臨床研究部 2独立行政法人国立病院機構三重病院小児科
ページ範囲:P.14 - P.20
文献購入ページに移動今回,わが国における感染症サーベイランスの黎明という執筆テーマをいただいた.「広辞苑」(第五版:岩波書店,1998年)によれば,「黎明」とは,明け方,夜明けで,比喩的に「新しい時代・文化・芸術など物事の始まり」と記載されており,これから考えれば,サーベイランスという,ものの考え方の始まりということであろう.このような視点から日本のサーベイランスをみれば,明治初期から「Information for Action」の考え方は培われていたと考える.
しかしながら,経済の発達とともに衛生状態が改善して以来,世界的に広がっていた「感染症は終わった」という考え方もあって,保健所では感染症対策機能が縮小され,サーベイランスは機能不全に陥っていた.いったん登った太陽は途中で再び沈んでしまったようであり,新興・再興感染症の多発により世界が考えを改め始めた以降も,サーベイランスは,わが国ではなかなか日の目をみなかったのである.1999年の感染症法改正によって現在,わが国のサーベイランスは徐々に体制が整いつつあるが,現在は,既存の感染症のみならず新たな感染症の時代となっており,これに合わせてさらに考え方を変えていく必要がある.
本稿では,わが国のサーベイランスの歴史を振り返り,温故知新という点から,わが国のサーベイランスの現状と課題を考える.
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