icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生82巻1号

2018年01月発行

文献概要

特集 感染症に関するサーベイランス

病原体サーベイランスの現状と今後の方向性

著者: 高橋琢理1

所属機関: 1国立感染症研究所感染症疫学センター第二室

ページ範囲:P.22 - P.27

文献購入ページに移動
病原体サーベイランスの重要性
 近年,病原体サーベイランスの重要性が高まってきている.海外においては鳥インフルエンザや中東呼吸器症候群(middle east respiratory syndrome:MERS)などの新興・再興感染症が発生している.これらの感染症の動向を把握し,リスク評価と対策を行うためには,しっかりとした病原体サーベイランスが重要である.さらに,ある感染症がより拡がりやすくなる,あるいは,感染症にかかった患者がより重症になるなどの特性変化を把握するには,細菌・ウイルスに対する解析と評価が欠かせない.病原体サーベイランスで収集された情報はリスク評価などで活用され,感染拡大防止などの対策立案に用いられる.さらには,感染症の治療方法やワクチンなどの開発などにおいても,病原体サーベイランスによって収集される情報は重要な役割を担っている.
 近年,感染症対策においては薬剤耐性が課題となっている.耐性を持った病原体による感染症は,抗菌薬などが十分に機能せず,治療が困難となる可能性がある.そのため,耐性菌の出現を把握し,拡散させないことが重要である.薬剤耐性を持った病原体による感染症の発生について把握する方法として,病原体サーベイランスによって各医療機関院内の患者の保菌状況や,院内の流し,トイレなどの環境中の病原体検出状況を監視することが挙げられる.その結果から,病原体の広がりを把握し,伝播の原因を見つけ出し,対策に結び付ける.

参考文献

1)感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号).http://elaws.e-gov.go.jp/search/elawsSearch/elaws_search/lsg0500/detail?lawId=410AC0000000114&openerCode=1
2)国立感染症研究所感染症疫学センター・病原微生物検出情報(ISAR)事務局:病原体検出情報システム運用に関する手引き—改正感染症法施行に伴うポイントを中心に—(2016年7月19日現在).
3)厚生労働省健康局結核感染症課(監修):詳解 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律,四訂版.中央法規,2016
4)厚生労働省:平成26年の感染症法改正に伴う感染症の情報収集体制の強化について. http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000115688.html
5)国立感染症研究所,他:麻疹2015年3月現在.IASR 36:52-53, 2015 http://www.niid.go.jp/niid/ja/iasr-vol36/5564-iasr-422.html

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら