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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生82巻1号

2018年01月発行

文献概要

特集 感染症に関するサーベイランス

結核菌サーベイランスシステムの構築

著者: 御手洗聡12

所属機関: 1公益財団法人結核予防会結核研究所抗酸菌部 2長崎大学大学院医歯薬学総合研究科基礎抗酸菌症学

ページ範囲:P.28 - P.33

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はじめに
 結核は結核菌(Mycobacterium tuberculosis)がエアロゾル感染する疾病であり,感染者は一般に潜在感染状態(latent tuberculosis infection:LTBI)を経て一定の確率で発病する.現在のわが国の結核患者の主体は,過去の結核高まん延期にLTBIとなった高齢者であるが,青壮年層にもアクティブな感染伝搬が存在しており,新規感染・発病と思われる症例が発生する.結核発病者(排菌患者)は“一定の条件”下で他者への結核感染を惹起し,新たなLTBIや活動性結核患者を再生産する.
 “一定の条件”は,過去においては家庭・職場などでの感染であったが,現在ではコミュニティー内での無作為接触であり,さまざまな伝搬経路が考えられるため,実地疫学調査だけでは感染ルートを特定できない場合も多い.また,耐性結核高まん延地域からの輸入感染症として耐性結核も増加しており,その浸淫ルートの解明が必要である.
 本稿では,上記の点と,時間横断的あるいは縦断的な利用を考慮した結核菌サーベイランスの構築に当たっての課題,また,その構想について述べる.

参考文献

1)厚生労働省健康局:結核に関する特定感染症予防指針の一部改正について.健発1125第2号.2016 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/thuuchi.pdf
2)加藤誠也,他:結核菌病原体サーベイランスの実践(総説),第一版 2017年7月.http://www.jata.or.jp/dl/pdf/law/2017/07_1.pdf
3)Namkoong H, et al:Epidemiology of Pulmonary Nontuberculous Mycobacterial Disease, Japan(1). Emerg Infect Dis 22:1116-1117, 2016
4)抗酸菌分離培養.日本結核病学会 抗酸菌検査法検討委員会:抗酸菌検査ガイド2016.pp39-45,南江堂,2016
5)御手洗聡:結核菌型別分析における精度保証.宮崎義継(主任研究者):国内の病原体サーベイランスに資する機能的なラボネットワークの強化に関する研究:平成26年度総括・分担研究報告書:厚生労働科学研究費補助金新型インフルエンザ等新興・再興感染症研究事業新興・再興感染症及び予防接種政策推進研究事業.pp93-96, 2015
6)厚生労働省健康局結核感染症課:三種病原体等である多剤耐性結核菌の取扱いについて.健感発0407第9号.2015 http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10900000-Kenkoukyoku/150407tu.pdf
7)文部科学省,厚生労働省:人を対象とする医学系研究に関する倫理指針 平成26年12月22日(平成29年2月28日一部改正).http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10600000-Daijinkanboukouseikagakuka/0000153339.pdf
8)御手洗聡:菌バンク機能の活用及び病原体サーベイランスの構築.石川信克(研究代表者):平成21年度厚生労働科学研究費補助金新興・再興感染症研究事業「罹患構造の変化に対応した結核対策の構築に関する研究」総括・分担研究報告書.pp42-55, 2010
9)加藤誠也,他:結核分子疫学調査の手引き,第一版 2017年7月.http://www.jata.or.jp/dl/pdf/law/2017/07_2.pdf

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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