icon fsr

文献詳細

雑誌文献

公衆衛生82巻1号

2018年01月発行

文献概要

特集 感染症に関するサーベイランス

感染症サーベイランス分野における新しいツールの導入と応用

著者: 加納和彦1

所属機関: 1国立感染症研究所感染症疫学センター

ページ範囲:P.58 - P.63

文献購入ページに移動
はじめに
 わが国の感染症サーベイランスはNational Epidemiological Surveillance of Infectious Disease(NESID)と呼ばれる電子システムを介して行われている.「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」(感染症法)に基づいて,感染症を診断した医療機関は所定の届出様式1)にしたがって保健所へ感染症の発生報告を行う.保健所は届出データをNESIDシステムに登録し,中央および地方の感染症情報センターは登録データの確認と集計,および情報の還元を行っている.1999年以降,感染症法に基づいて報告された全数把握対象疾患の症例報告数は,2016年までで51万件以上に達している(図1)2)
 症例報告の個票データにはさまざまな項目があり,年齢・性別などの患者に関する情報や,診断した医療機関,診断日,推定感染地域のように全疾患に共通した項目の他,後天性免疫不全症候群の届出におけるAIDS診断の指標疾患や,麻しん・風しんにおける予防接種歴の情報など疾患固有の項目が含まれる.また,データ形式には選択肢から選ぶものや,推定感染源欄や備考欄のように自由にテキストを入力するものがある.これらの膨大で多様なデータが一元的にデータベースに登録されていることと,さらに近年はコンピューターによるデータ処理技術が向上していることから,収集されたデータを機械的に分析し,公衆衛生の向上に役立つ情報へと変換する手法・ツールの開発の必要性が増してきている.
 本稿では,①届出の自由記述テキストデータを活用した解析の試み,②現在,開発中の感染症サーベイランスのための新しいツール,さらに③海外の進んだサーベイランスシステムや関連ツールについて述べる.

参考文献

1)厚生労働省:感染症法に基づく医師の届出のお願い.http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kekkaku-kansenshou11/01.html
2)厚生労働省健康局結核感染症課,国立感染症研究所感染症疫学センター:感染症発生動向調査事業年報.https://www.niid.go.jp/niid/ja/allarticles/surveillance/2270-idwr/nenpou/
3)髙原 理,他:牛生肉・牛生レバー規制強化後の牛生肉および牛生レバーを原因とする腸管出血性大腸菌O157発生状況.IASR 37:161-162, 2016 https://www.niid.go.jp/niid/ja/ehec/1009-idsc/iasr-in/6688-438d03.html
4)総務省:統計ダッシュボード.http://data.e-stat.go.jp/dashboard/
5)Hutwagner L, et al:The bioterrorism preparedness and response Early Aberration Reporting System(EARS). J Urban Health 80(2 Suppl 1):ⅰ89-96, 2003
6)inFact software:HPZone A secure web-based health protection decision support system. http://hpzoneinfo.in-fact.com/
7)砂川富正(研究代表者):平成24年度厚生労働科学研究「食中毒調査の精度向上のための手法等に関する調査研究」.http://mhlw-grants.niph.go.jp/niph/search/NIDD00.do?resrchNum=201234022A
8)大曲貴夫(研究代表者):平成27年度厚生労働科学研究「中東呼吸器症候群(MERS)等の新興再興呼吸器感染症への臨床対応法開発のための研究」.
9)米国CDC:Flu portal dashboard(FLUVIEW). https://gis.cdc.gov/grasp/fluview/fluportaldashboard.html
10)GitHub:Shiny Dashboard for CDC Zika data. https://github.com/chendaniely/zika_dashboard_cdc

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら