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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生82巻11号

2018年11月発行

文献概要

視点

地域医療に根ざした公衆衛生(社会医学)人材の育成を目指す

著者: 石竹達也1

所属機関: 1久留米大学医学部環境医学講座

ページ範囲:P.800 - P.801

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 2018年に創立90周年を迎えた久留米大学の歴史は,1928年4月に創立された九州医学専門学校に始まる.福岡県内,特に農村部の医師不足が社会問題となり,地域医療格差解消のため医学専門学校の必要性が叫ばれ,福岡県医師会が中心となって九州医学専門学校創立委員会が発足した.設置を希望した福岡県内の複数の都市の中から最終的に久留米市に決定した経緯がある.その後,久留米医科大学,久留米大学(以下,本学)医学部と名称を変えながらも,一貫して地域医療へ貢献する医師を養成してきた.本学医学部の基本理念は,九州医学専門学校の校歌の一節である「国手の理想は常に仁なり」で,北原白秋によるものである.国手とは優れた医師のことである.この基本理念を踏まえ,「時代や社会の多様なニーズに対応できる実践的でヒューマニズムに富む医師を育成するとともに,高水準の医療や最先端の研究を推進する人材を育成する」ことを使命としている.2018年3月末までに約10,000人の卒業生を輩出している.
 上記のような設立経緯を持つ本学医学部の卒業生の多くは開業医として地域医療の最前線で活躍している.地域の医師会に所属し,当該地域の行政と連携して母子保健,学校保健,産業保健などの公衆衛生に関連した地域保健活動に寄与している.郡市医師会レベルでは,日常診療を通じて,かかりつけ医として地域住民の疾病予防を行い,治療と健康増進のために適切な医療を提供している.また,①市町村行政と協調しての予防接種や住民向け各種啓発活動,②学校医を通しての学校保健活動,③乳幼児健診,④自院での個別健診,⑤産業医活動など,極めて多彩な地域保健事業に関わっている.都道府県医師会レベルでは,広域的な公衆衛生の向上のための地域保健に関する公衆衛生活動を確保するために,都道府県における各種の事業計画,保健医療計画,健康増進計画,がん対策推進計画などの立案段階から専門家として積極的に関与している.日本医師会レベルでは,国の保健事業に対して,専門家として各種審議会などへ参加することによって,その立案検討段階から積極的に関わっており,厚生労働省・政府施策の決定プロセスへ直接関与している.実際,本学の卒業生の医師会活動は盛んである.現在の日本医師会会長は本学卒業生の横倉義武先生であり,昨年10月からは世界医師会会長も務められている.それ以外にも,西日本を中心に複数の県医師会会長や,多くの郡市医師会会長,理事などの役職を担っている.上記のように多くの卒業生が医師会活動を通じて市町村レベル,都道府県レベル,国レベルにおける公衆衛生の向上に大きく寄与している.

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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