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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生82巻12号

2018年12月発行

文献概要

特集 公衆衛生活動と疫学

これからの環境疫学—エコチル調査の現状と未来

著者: 山崎新12

所属機関: 1国立研究開発法人国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター 2国立研究開発法人国立環境研究所 環境リスク・健康研究センター 環境疫学研究室

ページ範囲:P.896 - P.901

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はじめに
 本稿では,環境疫学研究の位置付けと,現在,世界的に最大規模で実施されている環境疫学研究である「子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)」の概要を示し,環境疫学研究の特質について考察します.
 疫学研究には,「臨床疫学」(clinical epidemiology)や「薬剤疫学」(pharmacoepidemiology)などの領域がありますが,近年,「環境疫学」(environmental epidemiology)という領域が認知されるようになってきました.「疫学辞典」1)で定義された環境疫学(表1)を簡潔にまとめると,「外部環境に存在する物理的,化学的および生物学的因子がヒトの健康に及ぼす影響を研究する疫学の一分野あるいは下位専門分野」となります.つまり,環境疫学とは,体の外の環境における要因は全て研究の対象としているということになります.「食物摂取に関わる研究は環境疫学に含まれるのか」と問われたとして,環境汚染によって食物の中に蓄積された化学物質の摂取量と健康影響との関連性を分析するということであれば,このテーマの研究を「環境疫学」であるとしても違和感はないものと思われます.一方で,食品の摂取と健康との関連性を分析するということであれば,公衆衛生に携わっておられる方にとっては,このテーマの研究については「環境疫学」というより「栄養疫学」といったほうがしっくりくるのではないでしょうか.
 疫学の領域には,研究者の関心の持ち方によっていろいろな名前が付けられており,領域間で重複している研究テーマもあるのではないかと思われます.本稿では,疫学辞典で定義された環境疫学の領域からさらに焦点を絞り,環境汚染による化学物質への曝露を因子とした疫学研究と定義して話を進めます.なお,外部環境を個々人が自身で制御できる場合と,自身では制御できない場合に分類し,後者を扱う疫学研究を「環境疫学」と定義することもあります2)

参考文献

1)Miquel Porta(編),日本疫学会(訳):疫学辞典 第5版.日本公衆衛生協会,2010
2)山崎新:環境疫学入門.岩波書店,2009
3)環境省:環境基準の設定に当たっての指針値に関する検討.http://www.env.go.jp/council/toshin/t07-h2102/01-3.pdf
4)環境省:子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査).http://www.env.go.jp/chemi/ceh/
5)塚本直也:“エコチル調査”に至るまで A long and winding road. 医のあゆみ235:1087-1092, 2010
6)川本俊弘,他:“エコチル調査”の概要とコアセンターの役割.医のあゆみ.235:1093-1098, 2010
7)Hulley SB, et al:Designing clinical research, 3rd ed. Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, 2007

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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