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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生82巻2号

2018年02月発行

文献概要

特集 「早期発見」をめぐる課題

自治体における任意型がん検診の現状と課題—PSA検診はスクリーニングになっていないうえに,過剰治療となっている

著者: 岩室紳也1

所属機関: 1ヘルスプロモーション推進センター(オフィスいわむろ)

ページ範囲:P.105 - P.111

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「がん」という診断名が議論の妨げに
 筆者は2009年に,「公衆衛生」誌の73巻12号に「前立腺がん検診の有効性に関する議論と今後の展望」1)を執筆した.全国の主だった病院の泌尿器科医に送り,議論が盛り上がることを期待した.しかし,泌尿器科医から返ってきた反応は,「『がん』と診断された患者さんを放置できますか?」というものであった.
 反省を込めて正直に告白すると,上記の原稿には“da Vinci®サージカルシステムは手術時間を短縮しリスクを減らせる”ことや“致死的前立腺がんに対して敏感度も特異度も高いスクリーニング方法が早く開発されることを期待したい”と記述していたが,前立腺がん検診〔以下,PSA(prostate specific antigen)検診〕の問題点をぼかしていた.言い訳になるが,2003年1月に今上天皇が前立腺がんの手術を受けられており,「PSA検診はスクリーニングになっていない」と書けなかったのである.

参考文献

1)岩室紳也:がんの2次予防に関するトピック①前立腺がん検診の有効性に関する議論と今後の展望.公衆衛生73:912-916, 2009
2)岩室紳也,原田昌興,他:前立腺癌の免疫組織化学的検討 組織分類,5α-Reductase活性との関連性.日泌会誌81:2160, 1990
3)岩室紳也:前立腺癌検診の再構築を.医事新報4396:77-80, 2008
4)国立がん研究センター社会と健康研究センター検診研究部検診評価研究室:科学的根拠に基づくがん検診推進のページ 有効性に基づく前立腺がん検診ガイドライン.http://canscreen.ncc.go.jp/guideline/zenritsusengan.html
5)前立腺研究財団:前立腺がん検診市町村別実施状況(MAP図)—2015年6月調査.前立腺研究財団,2016 http://www.jfpr.or.jp/publish/pub21.html
6)日本泌尿器科学会:PSAが高いと言われた.https://www.urol.or.jp/public/symptom/08.html
7)国立がん研究センターがん情報サービス:前立腺がん.http://ganjoho.jp/public/cancer/prostate/print.html
8)Thompson IM, et al:Operating characteristics of prostate-specific antigen in men with an initial PSA level of 3.0ng/ml or lower. JAMA 294:66-70, 2005
9)和田鉄郎:最近の日本人の前立腺潜伏癌(ラテント癌)の臨床病理学的検討.日泌尿会誌78:2065-2070, 1987
10)Kimura T, et al:Time Trends in Histological Features of Latent Prostate Cancer in Japan. J Urol. 195:1415-1420, 2016
11)総務省統計局:人口推計(平成28年10月1日現在)—全国:年齢(各歳),男女別人口・都道府県:年齢(5歳階級),男女別人口.http://www.stat.go.jp/data/jinsui/2016np/index.htm
12)国立がん研究センターがん情報サービス:がんに関する統計データのダウンロード.http://ganjoho.jp/reg_stat/statistics/dl/index.html
13)全国がん(成人病)センター協議会:全がん協加盟施設の生存率共同調査.https://kapweb.chiba-cancer-registry.org/
14)Tsodikov A, et al:Reconciling the Effects of Screening on Prostate Cancer Mortality in the ERSPC and PLCO Trials. Ann Intern Med 167:449-455, 2017 http://annals.org/aim/article/2652567/reconciling-effects-screening-prostate-cancer-mortality-erspc-plco-trials
15)日本泌尿器科学会(編):前立腺癌診療ガイドライン 2016年版.メディカルレビュー社,2016
16)Wilt TJ, et al:Follow-up of Prostatectomy versus Observation for Early Prostate Cancer. N Engl J Med 377:132-142, 2017

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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