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文献詳細

雑誌文献

公衆衛生82巻2号

2018年02月発行

文献概要

特集 「早期発見」をめぐる課題

新生児聴覚スクリーニング(NHS)の普及に伴う課題と支援・療育

著者: 庄司和史1

所属機関: 1信州大学学術研究院総合人間科学系

ページ範囲:P.126 - P.131

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はじめに
 新生児聴覚スクリーニング(newborns hearing screening:NHS)は,1990年代後半に,自動判定が可能な耳音響放射(otoacoustic emissions:OAE)や自動聴性脳幹反応(automated auditory brainstem response:AABR)の検査機器が開発されてから,米国などを中心に普及が始まった.わが国でも2000年に厚生省(当時)のモデル事業(2006年度まで)としてNHSが開始された.
 図1のように,わが国のNHSは二段階方式のスクリーニングシステムとなっており,生後6カ月以内に難聴の確定診断を行い,早期療育を開始することを目指している.早期療育は,聴覚障害を対象とした特別支援学校(以下,聾学校)や,難聴乳幼児を対象とする児童発達支援センターなどの施設(旧 難聴幼児通園施設)などで行われる.
 筆者は筑波大学附属聾学校(現 筑波大学附属聴覚特別支援学校)の教諭として20年余り勤務し,ちょうどモデル事業の開始前後の時期に当たる1999年から2006年まで乳幼児教育相談を担当した.その中で多くの乳幼児や保護者と出会い,彼ら・彼女らの生の声を多く聞いてきた.そうした経験から,これまで難聴乳幼児の早期支援に関するさまざまな提言を行ってきたが,本稿では,NHSの普及に伴って明確化した課題,検査後の療育,保護者支援の課題などについて述べる.

参考文献

1)松田秀雄:第77回日本産婦人科医会記者懇談会平成26年6月11日日本記者クラブ 新生児聴覚検査の実態調査報告.http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/01/77_140611.pdf
2)三科潤:新生児聴覚スクリーニングの効率的実施および早期支援とその評価に関する研究.三科潤(主任研究者):厚生労働科学研究費補助金子ども家庭総合研究事業,平成16年度〜18年度総合研究報告書.pp1-10, 2007
3)庄司和史,他:新生児聴覚スクリーニングの進展と聾学校における乳幼児支援体制の現状 乳幼児支援担当者に対する調査から.特殊教育学研究49:127-144, 2011
4)日本産婦人科医会母子保健部会:新生児聴覚スクリーニング検査に関するアンケート調査報告.http://www.jaog.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/09/2017hearing.pdf
5)伊藤壽一:すべての赤ちゃんにきこえのスクリーニング検査を—新生児聴覚スクリーニング検査の重要性.http://www.jibika.or.jp/members/news/kikoe_20150821.pdf
6)笠井紀夫:早期療育開始はどのような意義を持つか.テクノエイド協会:感覚器障害戦略研究 聴覚障害児の療育等により言語能力等の発達を確保する手法の研究 聴覚障害児の日本語言語発達のために〜ALADJINのすすめ.pp74-77,テクノエイド協会,2012
7)岩崎聡,他:人工内耳装用時期と言語発達の検討 全国多施設調査研究結果.Audiol Jpn 55:56-60, 2012
8)庄司和史:新生児聴覚スクリーニングとその後の早期教育について.聴覚障害59:16-24, 2004
9)中田洋二郎:親の障害の認識と受容に関する考察-受容の段階説と慢性的悲哀.早稲田大学心理学年報27:83-92, 1995
10)庄司和史,他:聴覚障害の早期発見に伴う0歳からの補聴器装用への教育的支援.特殊教育学研究44:127-136, 2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1170

印刷版ISSN:0368-5187

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