文献詳細
文献概要
連載 ポジデビを探せ!・14
—カンボジアの子育てと父親の役割—ポジデビ研究の可能性
著者: 柴沼晃1
所属機関: 1東京大学大学院医学系研究科国際地域保健学教室
ページ範囲:P.172 - P.177
文献購入ページに移動乳幼児の健康は,途上国では依然として重要な保健課題である.世界中で約560万人の5歳未満乳幼児が毎年死亡している1).国連のミレニアム開発目標では2015年までに乳幼児死亡率を1990年の水準から3分の1に減らすという目標を掲げていたが,乳幼児死亡率の削減は53%にとどまり,目標は達成できなかった.出生前後の死亡を除くと,途上国では下痢症と肺炎が幼児死亡の主要原因となっている1)2).いずれも適切な衛生環境や栄養,保健サービスへのアクセスで防ぐことができるはずのものである.
一方,乳幼児を取り巻く家庭環境や社会環境は途上国でも大きく変化している.特に,アジアでは最貧国を脱して経済成長を続ける国が次々と現れている.そのような国では,製造業への雇用が急増しており,女性が工場へ働きに出るようになっている.繊維業や縫製業,製靴業などのアパレル産業では,工場労働者の多くが女性であることは珍しくない.これらの工場に行くと,朝に大勢の女性が出勤し,昼になると工場内や近辺で昼食を食べ,夕方から夜にかけて退勤していく様子をみることができる.その結果,従来であれば家庭で乳幼児の子育てを担っていた母親が平日に不在の家庭も増えている.母親不在の中,乳幼児の発達に必要な衛生環境,栄養,保健サービスへのアクセスに影響はないだろうか.
参考文献
掲載誌情報